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アメリカ:アメリカの教会はカトリックの伝統に立ち戻るのか

USA: Is the American Church returning to Catholic tradition?

今年7月17日から21日にかけてインディアナポリスで開催される全国聖体大会(National Eucharistic Congress)の準備に関連して、アメリカのメディアでは、教会と世間一般の両方において、「アメリカの教会がカトリックの伝統と正統性に回帰する」という主張がなされている。多くのアメリカの小教区、大学、修道院がこの方向に『転向』していることは、5月6日付のナショナル・カトリック・レポーター(NCR)の8ページにわたる記事のなかで、ティム・サリバン(Tim Sullivan)によって報告されている。

A woman and child kneel during Catholic Mass at Benedictine College, Oct. 29, 2023, in Atchison, Kan. (AP Photo/Charlie Riedel)

彼によれば、これには新しい世代の司祭や神学生が大きな役割を果たしているという。「1960年代から1970年代にかけて顕著だった、いわゆるリベラル神学を形成したり、それに固執したりした司祭たちは、今や教会の表舞台から去りつつある。このことは、とりわけ、2023年にアメリカのカトリック大学が3500人の司祭を対象に行った調査によって証明されている」と報告書には書かれている。

著者は、今年叙階された中西部出身の若い司祭(派遣先の小教区の混乱を避けるため匿名を希望し、そこにさまざまな変化を徐々に導入したいと考えている)の言葉を引用している。彼によれば、「最近のアメリカの神学校には『リベラル派』はほとんどおらず、そのような人たちには居心地が悪い」のだという。

より『正統派』になった共同体の一例が、ウィスコンシン州の州都マディソンにある聖マリア・ゴレッティ(St. Maria Goretti)教区である。この街は『リベラル』と考えられているが、日曜日のミサには、近隣の州立大学の教授や講師などが伝統的に参加している。この小教区は、過去半世紀の間に著しい変貌を遂げた。50~60年前、そこでは貧困との闘い、社会正義、LGBTの受容への開放が強調され、カトリックの教えのいくつかの要素、たとえば避妊については『忘れられた教義』と見なされていた。

変化は、2003年にマディソンに新しい司教、ロバート・C・モリーノ(Robert C. Morlino S.J 1946-2018)が到着したことから始まった。モリーノ司教は、当時歌われていた賛美歌『All are welcome/すべての人(つまり同性愛者も含めて)が歓迎されている』の批判者として教区の人々の記憶に刻まれた。後任(2019年4月25日現在)のドナルド・J・ハイング司教(Donald J. Hying)も同様に、『教会に必ず混乱をもたらすモダニズム』との闘いに挑んだ。2021年、スコット・エマーソン神父(Fr. Scott Emerson モルリーノ司教の側近)が聖マリア・ゴレッティの教区司祭に就任した。ミサでは再び香を使い始め、ラテン語の聖歌も復活し、説教では「無神論者のジャーナリストや政治家、カトリックを離れた人々からカトリックの価値観を守る」よう人々に呼びかけた。また、告解を頻繁に受けるよう促した。

この変化は、明らかにすべての人が好むものではなかった。信者の何人かは、よりリベラルな他の小教区に移っていった。しかし一方で、金曜日の6時半のミサに参加する若者はますます増えている。

そして、逆説的だが、教会の伝統への回帰を求めているのは彼らだ。一例は、カンザス州アッチソンにあるベネディクト大学(Benedictine College, Atchison, Kansas)である。「この大学は、一見したところ、変わったところは何もない。例えば、カフェテリアは普通以上に見える。しかし、もっと深く見てみよう。講義では、学生たちはとりわけ避妊、ポルノ、婚前交渉に関するカトリックの教えについて学ぶこともある。夜中の3時でも『徹夜の祈祷リスト』に多くの申し込みがあることに驚く者はいない。ここの学生たちの多くは保守的なカトリック家庭の出身で、人生において何が正しくて何が間違っているのかという、重要な事柄に関する明確な教会の教えを求めている。経済学と哲学を学ぶジョン・ウェルテは『神は真理、善、美のなかに見出される』と考えている。これは聖トマス・アクィナスの教えへの回帰だ」と著者は述べた。

一方、22歳の生物学学生マデリーン・ヘイズは、「婚前交渉から告解まで、教会の教えを真剣に受け止めている」と認めた。彼女は修道会への入会も考えている。「教会がこれは間違いのない教義であり、時代を超えて変わることはないと定めてきたものを変えてしまっては、教会そのものが成り立たなくなってしまう」と強調した。

この記事の著者によれば、このような信仰は、おそらく1993年8月のワールド・ユース・デーに際して聖ヨハネ・パウロ二世がデンバーを巡礼し、そこで行ったスピーチの賜物だという。その時、聖父はとりわけアメリカの若者たちに『信仰を失う危険性』を警告した。カンザス州にあるベネディクト会の教育機関では、過去20年間で学生数が10倍に増加している(現在、学生数は約2,200人)。


Students leave after attending a Catholic Mass at Benedictine College, Dec. 3, 2023, in Atchison, Kan. (AP Photo/Charlie Riedel)

「ベネディクト大学は、カトリック信者の大多数が、とりわけ避妊や中絶さえも支持し、正統性から離れて生きている教会の未来に開かれた、ある種の象徴的な窓なのだろうか。残念ながら、そのようなカトリック信者の大多数は、すでに教会の外で生活している。(中略)保守的なカトリックへの移行は、まだ全国的な傾向ではない。とはいえ、アメリカの教会が伝統と正統性に回帰していることは否定できない」とティム・サリバンは書いている。

Madison/ Fr. jj

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