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あなたのパソコンのOfficeは正規品?違法行為に加担しないよう今すぐチェック

今や事務用途で誰しもが使っているOfficeスイート。
その中で代表的なのがMicrosoft Office (以下Office)だが、実は巷では海賊版ライセンスの流通が横行しているのはご存じだろうか?
ひょっとすると、あなたのパソコンにインストールされているOfficeも海賊版ライセンスかもしれない。
海賊版ライセンスの使用は、違法行為に加担することになるだけでなく、セキュリティー面でもパソコンを危険にさらすリスクがあるため、正規品かどうかは一度チェックしておきたい。
本記事では、海賊版ライセンスが流通している経緯やその種類、正規品かどうか確認する方法について取り上げる。


通販サイトのOfficeは海賊版だらけ

のっけから、にわかには信じ難いことを言うが、実は通販サイトで販売されているMicrosoft Officeの製品 (ライセンス単体販売を含む)は、半分が海賊版ライセンスだ。
具体的には、ライセンス利用権を捏造したり、ライセンス自体は存在しているものの、Officeの開発元であるMicrosoftの規約に違反した使い方で提供されていたりする。
一般人からしたら驚きを隠せないかもしれないが、実は少なくとも僕がITを学びだした10年以上前から、すでに公然の秘密となってしまっていた。

大手通販サイトで「Microsoft Office」と検索して出てくる検索結果を見ると、最上位の7、8商品こそ正規品だが、それ以下の序列の検索結果は海賊版だらけなんてこともザラ。
しかも、詳細は後述するが、海賊版は正規品よりも安くて人気 (消費者側が違法性を認知しているかどうかは別)のため、通販サイト側のプログラムによってPR商品欄に自動的に挙がっていることまである。
こうなってくると、“もはや高いお金を出して正規のライセンスを買うことがバカらしい”と言う人たちのことも笑えなくなってしまう。

なぜ海賊版Officeがここまで広がってしまったのか?

海賊版Officeは正規品よりも安い

なぜ、違法であるはずの海賊版のOfficeライセンスがここまで巷に広がってしまったのか?
答えは単純明快、値段が安いから、ただそれだけだ。
特に日本は長らく不況にあえぎ、給料が上がらないでお馴染みの国、しかもその少ない可処分所得の中で、スマートフォンの普及によってパソコンに割くコストの優先度が相対的に下がったことも手伝って、パソコンに入れるアプリ類にはなるべくお金を掛けたくない心理が働きやすい。

そんな時、Officeを買おうとネット通販を探したらふと出てきた、正規品よりも安い海賊版を見たら、つい購入ボタンをポチっとしてしまうのは自然だろう。
興味深いことに、正規品との価格差はピンキリで、正規品の1/10以下の激安品もあれば、正規品と10,000円前後しか差がないものも存在している

パソコンとスマートフォンとお札

しかも、商品説明が意外なほど丁寧で、一般人が読むと怪しい部分を一切感じさせない巧妙さもやっかいだ。
むしろ、正規品の商品説明の方があっさりしていて、海賊版ほど丁寧でより“本物感”を感じさせるほど…
だから、購入する側も海賊版だとは全く気付かずに、“単に安いから買ってみたら、実は海賊版だった”というケースは非常に多い

正規品に比べてあまりにも価格が乖離 [かいり]している場合は、さすがに素人でも怪しいと考えて購入を躊躇 [ちゅうちょ]する人もいるだろうが、前述した通り、正規品との価格差が小さいものもあり、この程度なら「何らかの理由でお得に値引きされているのかな?」と捉えられてしまっても無理はない。
まあ、海賊版ライセンスは正規品よりも相当安く、あるいは、技術的な作業に対する手間賃を除いて無料で作り出せるものであるだけに、正規品とそこまで大きく変わらない価格で売れれば、その分儲け [もうけ]が増えて犯罪者はウハウハなんだろう(笑)
大手通販サイトで優良ショップとして認定されているショップでも、組織的に海賊版の販売を行って荒稼ぎしているほどだ。

Microsoftも一応対策はしているが, いたちごっこ

こうした現状に、Microsoftも決して指をくわえて静観しているわけではなく、一応対策は行っている。

Officeに限らず、こういった有料アプリは通常、インターネットを使った「デジタルライセンス認証」と呼ばれる仕組みを用いている
消費者がライセンスを購入すると、購入者の情報がベンダー (パソコンメーカーや通販サイトの運営会社など)を通じて、または購入後に購入者が自ら行うセットアップ操作によって、アプリメーカー (今回のOfficeの場合はMicrosoft)に自動的に送られ、購入者の証明としてデータベースに登録される。
ライセンスが消費者に渡る際には、その購入者だけに唯一無二の一意のライセンス情報が付与されるため、その固有のライセンス情報と、アプリメーカーのデータベースに登録されている購入者の情報と照らし合わせることで、その人がきちんとこのアプリの利用権を正当な形で入手して利用していることを証明する仕組みだ。
この仕組みを悪用したり、不正な情報を送信して欺瞞 [ぎまん]したりしているのが海賊版ライセンスの本質だ。

デジタルライセンス認証の仕組み
デジタルライセンス認証の仕組み

そこでMicrosoft側は、データベースに登録されている購入者情報の保存方法やデータ形態を定期的に変更することで、一時的なトリックで不正認証をしても、すぐに仕組みが変わることで失効してしまうよう工夫している。
しかしながら、海賊版ライセンスを提供する犯罪者側も巧みに対策しており、不正な認証処理を行うために専用設計したアプリをOfficeと組み合わせて連動させることで、Microsoft側が認証情報を変更しても、それを検知して瞬時に新しい認証プロセスに適応した不正情報を自動生成する機能を持たせているケースもあり、まさにいたちごっこの状態だ。

また、従来の西暦年の買い切りタイプのOffice製品 (例えばOffice 2019など)ではなく、Microsoft 365 (旧Office 365)のような、月・年単位で利用契約するサブスクリプションタイプのOffice製品の利用を近年ゴリ押ししているのも、この海賊版ライセンス対策の一環だ。
料金の請求をMicrosoftが一元的に実施でき、且つ定期的に料金請求する方法なら、不正認証は実施しづらくなる。
ただ、企業などにおいて、インターネットが使えない環境でOfficeを使いたいニーズがある以上、従来の買い切りタイプのOffice製品を完全になくすことはできないから、結局買い切りタイプが存在している以上、それを悪用されてしまっている。

さらにさらに、犯罪者はMicrosoftの一歩先を行き、なんとサブスクリプションタイプのOffice製品においても不正認証を行う方法を確立していることが近年明るみに出た
ITの世界は常に、悪人が善人に一歩先んじているのだ(笑)

海賊版Officeを使うとどんな問題があるのか?

この記事を読んでいる消費者側として最も気になるのは、“海賊版を使うとどのような問題が起き、どのような被害を受けるのか”についてだろう。
これについては、2つの問題がある。

海賊版Officeの問題1. 利用は違法行為で犯罪の加担になる

海賊版ライセンスの提供と利用とは、著作権法で明確に禁止されている違法行為で、2年以下の懲役、もしくは200万円以下の罰金が科される立派な犯罪だ。
海賊版Officeを使う行為自体も違法だし、海賊版Officeのニーズを生み出すことで、海賊版ライセンスを作り出す犯罪者を応援して違法行為に加担することになってしまう。
もちろん、Microsoftが定めるライセンス条項でも、海賊版ライセンスは当然禁止されており、民法が定める定型約款 [ていけいやっかん]に違反する行為と認められれば、刑事罰以外でも損害賠償を請求される可能性もある

もちろん、自分が買ったOfficeが海賊版ライセンスであることを知らずに使ってしまった末に摘発されれば、懲罰は免れられるが、知らなかったことを証明することは難しいケースもあり、可能な限りリスクは回避したい。
日本では、主に海賊版ライセンスの提供者側が懲罰を受けているケースが多い。
実際の逮捕例を以下に列挙することで、この違法行為の抑止効果を期待したい。

海賊版Officeの問題2. パソコンのセキュリティーリスクを高める

前述した、デジタルライセンス認証の仕組みの導入は、アプリメーカーが利用料を確実に徴収できるようにする目的もあるが、正規品であることを証明することで、パソコンに悪さをするコンピュータープログラム、いわゆる「マルウェア」を入り込めなくする目的もある
安さに惹かれて [ひかれて]安易に海賊版を買ってしまうような人は、犯罪者にとっては良いカモであり、個人情報を不正に取得したり、警告表示で金銭を要求したりするためのマルウェアを一緒に抱き合わせて仕込まれてしまうのはよくある話だ。
中には、Officeは商品の中に一切含まれておらず、単にマルウェアだけがインストールされてしまうケースもある。

また、前述した理由や違法行為の防止のため、優秀なセキュリティーソフトは、不正な認証プロセスを実行するプログラムやデータを、コンピューターウィルスやマルウェアとして検知して自動的に削除してしまうことが多い
こうなると、海賊版ライセンスが機能しなくなってしまうため、海賊版の販売者は、セキュリティーソフトの保護機能を無効化してから利用するよう呼び掛けていることがある
サイバー攻撃からパソコンを守る重要なゴールキーパーであるセキュリティーソフトの無効化が、いかにリスキーな行為なのかは言うまでもない。
詳細は後述するが、セキュリティーソフトの無効化を要求されたら、その時点で海賊版であることは100%確定だ。

情報セキュリティー

海賊版Officeにはどんな種類がある?

海賊版Officeは3つの種類に大別され、違法なライセンスを生成する手法が異なる。
自分はエンジニアなので、どのようにすれば不正な認証を行えるのかは熟知しているが、それをここで詳らか [つまびらか]にしてしまうと違法行為を助長しかねないため、用語をぼかすなどの処理を加えて、上辺をなぞるようにうす~く解説するように心掛ける(笑)

海賊版Officeの種類1. 団体向けライセンスを切り売りする手法

Office製品には、一般人がいち個人で購入するリテール向けのライセンスと、従業員を複数抱えている会社や、生徒を複数抱えている教育機関などといった団体向けのライセンスとが存在する
リテールライセンスは、Microsoftアカウントと呼ばれる、Microsoftが提供する各種サービスを利用するための利用者情報を登録しなければ使えない仕組みのため、これを欺瞞しようとすると、架空のMicrosoftアカウントを購入者分大量に作成し、且つ最低限の設定構築や管理の作業も必要になるため、海賊版ライセンスの生成には適さない。

一方、団体向けライセンスは、利用者が複数存在することが想定され、利用者の入れ替わりが頻繁に発生し得る利用環境であり、且つ一般人が使うようなプライベートな機能を使うことは想定されないため、Microsoftアカウントによる認証は行わない。
利用者が25人以上の団体では、「Key Management Service」(以下KMS)という仕組みを用いて、その団体が持つサーバー上で団体内の全パソコン上のOfficeの利用権を一元的に管理し、そのサーバーそのものとMicrosoft側のデータベースの登録情報とを照合して認証する方法が一般的だ。

ライセンスの割り当て

素人は、この辺りでもうすでに頭の中がハテナマークで埋め尽くされているかもしれないが、要は、「団体が代表して、複数人分の利用権をまとめて買ってね。それを各自にどのように割り当てるかは団体側で決めてね。Microsoftは、あくまでも団体と取引して団体として認証するだけね。」ということ。
つまり、団体側に個々のライセンス管理の権限の大部分が任されているのだ。
例えば企業において、“従業員が1人入社したら、その人1人分のライセンスを新たに生成して登録して認証し、従業員が1人退社したら、その人が使っていたライセンスをデータベースから削除する”といった作業を団体側 (のシステム管理者)が行える。

このKMS認証の仕組みを悪用すれば、“団体向けライセンスが1つあれば、ほぼ無尽蔵に新たな架空ライセンスを作り出して切り売りできる“という図式だ。
海賊版ライセンスを提供する犯罪者側が、1つでも団体向けライセンスを買っていればまだかわいいが、海外の怪しい掲示板では、誰が契約しているのか不明な団体向けライセンスの認証情報が、公共物かのごとく公然と公表されて共有されている。
こういったライセンスを利用して不正なKMS認証をしているなら、犯罪者側はまさに鐚一文 [びたいちもん]出していないことになり、悪辣 [あくらつ]極まりないというほかない。

海賊版Officeの種類2. OEM版を他のパソコンに移植する手法

Office製品の中には、そのパソコンを購入した購入者に対し、パソコンに最初からインストールされた状態で提供されるプリインストールタイプのものがある
これはOEM版ライセンスというもので、インストール対象となっているそのパソコン上でしかライセンス認証ができない
OEM版以外の普通のライセンスが、1つのライセンスを複数 (具体的な台数はタイプによって異なる)のパソコンで共用して認証でき、複数のパソコンにOfficeアプリをインストールして使うことができるのとは対照的だ。

その分、OEM版ライセンスは価格が安い。
パソコンを購入する際、自分でOffice製品を別途購入するよりも、販売店側でOffice製品を付帯した方が安く上がるのはこのためだ。
プリインストールする作業は通常、パソコンのメーカーか販売店が行うため、購入者がOffice製品をOEM版ライセンスで購入すると、メーカーや販売店によってMicrosoftに、パソコンの内部にあるチップに記録されている、そのパソコンだけの唯一無二の一意の識別情報が登録される。
これにより、そのパソコン上でOEM版ライセンスが有効化され、チップ内の固有の識別情報と、Microsoftのデータベースに登録されている対象パソコンの情報とを照らし合わせて認証している。

基盤 半導体チップ

ところが、このチップ内の固有の識別情報を、不正なプログラムを使って偽装する手法があり、これを使うとOEM版ライセンスで海賊版ライセンスを作り出せてしまう
要は、本来Microsoftのデータベース上に登録されている対象パソコンとは違うパソコンにインストールしている状態なのに、不正プログラムによって識別情報が改ざんされており、Microsoft側は、きちんと登録されている対象パソコンで認証していると誤認してしまうのだ。
いわば、特定のパソコン専用のOffice製品を、不正に他のパソコンに移植する行為と解釈できるだろう。

Microsoftのデータベース上では、あくまでもパソコン1台ごとに個別に識別情報が登録されているため、1つのOEM版ライセンスから生成できる海賊版ライセンスは1つのみとなる。
このため、犯罪者側は、中古パソコンや廃棄パソコンの市場からOEM版ライセンスを大量に入手しなければならず、前述の「海賊版Officeの種類1. 団体向けライセンスを切り売りする手法」の項目で解説した、KMS認証を悪用する手法よりも効率が悪い。
とはいえ、個人が気軽に出品できるフリーマーケットレベルでは、未だに [いまだに]この手法を用いた海賊版の販売が後を絶たず、捜査当局による海賊版Officeの摘発例の大多数を占めている。

しかも、購入者の側はパソコン上の画面を見るだけで、今使っているOfficeがOEM版ライセンスなのかどうかを見分ける術がないことも、やっかいなポイントだ。

海賊版Officeの種類3. 試用期間を偽装する手法

Office製品には、無料で1ヵ月間試用できる制度が用意されている
この仕組みを悪用し、不正なプログラムを使って、試用期間が常に残っている状態に欺瞞する、またはライセンスを購入した状態に欺瞞する海賊版ライセンスがある
自分が調べた限り、犯罪者が一般人相手に販売する海賊版Office界隈ではまだ一般的ではないようだが、個人レベルでは横行している手法だ。

販売用海賊版でこの手法が用いられづらい理由は、購入者側がある程度手間の掛かる作業を実行しなくてはならないためと思われる。
現在、試用制度が用意されているのは、サブスクリプションタイプであるMicrosoft 365のみであり、Microsoft 365の試用を開始するためには、クレジットカード番号の入力が必須。

もちろん、クレジットカード番号の入力は、Officeのアプリをインストールするために一時的に必要なだけであり、欺瞞が成功している限り請求は開始されない。
でも、「安く済む代わりに、1回だけクレジットカード番号を入力して欲しい」と購入者に案内したら、さすがに不満や不信感を抱くことは想像がつく。
特に、海賊版だと認知したうえで買うような愚か者は、クレジットカード番号の入力と言われただけで、請求が来そうに感じて購入をやめるか、返金を要求するだろう(笑)

クレジットカード

ただ、この手法を使えば、Microsoftが海賊版対策のために導入を推進しているはずのサブスクリプションタイプ、まさにそれが不正認証によって使えるようになってしまう
しかも、当のMicrosoftや、海賊版製品を取り締まる捜査当局も全貌がつかみきれていないのが実情だ。

サブスクリプションタイプは買い切りタイプとは異なり、最新の機能アップデートがいち早く利用できるし、Microsoftが提供するクラウドストレージサービス (データを長期的に保存するための装置である「ストレージ」内ではないオンライン上にファイルを保存できるサービス)であるOneDriveの有料大容量プランもセットで利用可能になるなど、特典が多い。
Officeの利用権を不正に行使されたあげく、こういった特典まで利用されてしまっては、まさに商売あがったりだろう。

まあ、さまざまな面でMicrosoftという会社の理不尽さを目の当たりにしている我々からすれば、こういうことでも起きないと苦しんでくれないから、内心“ざまあみろ”と思ってしまう悪い自分もいる。
だが、違法行為は違法行為だし、サイバー空間の秩序が乱れるのは容認できないので、犯罪者が一般人相手に販売する海賊版Office界隈でこの手法が蔓延しないことを願うばかりである。
ただ、Microsoftが海賊版対策の強化によって買い切りタイプを仮に廃止してしまうと、海賊版の提供側はこの手法を使わざるを得なくなり、対策したつもりが裏目に出て、ますますMicrosoft側が受ける損害が大きくなりかねないというジレンマを抱えている。

自分のOfficeが正規品かどうか確認する方法

ここまでの話を聞くと気になるのは、やはり自分のパソコンにインストールされているOfficeが正規品かどうかだろう。
なお、この時点で、海賊版と知りながら故意に海賊版Officeを購入してインストールした人がいるなら、素直に罪を認めて今すぐアンインストールをしていただきたい

ここまで海賊版Officeが蔓延し、手口が巧妙化してしまっている現状では、1つの要素だけで海賊版か否かを判断することは難しいケースもある。
ここでは、海賊版であると予想される確率ごとに、それぞれの判断要素とその確認方法とを紹介していく。
海賊版である確率が極めて高いと判断される要素が確認された場合、あるいは、海賊版である確率が比較的高いと判断される要素が複数確認された場合は、海賊版と断定して差し支えない。

Microsoft Office

海賊版Officeの確率: 0%【確実に正規品】

現時点で、Microsoftアカウントでサインインした状態でOfficeを利用しており、そのMicrosoftアカウントがライセンスに紐付いていれば、あなたが現在利用しているOfficeは、間違いなく確実に正規品だ。
前述した通り、Microsoftアカウントには、Officeを含む、Microsoftが提供するあらゆるサービスを利用するための利用者情報が登録される仕組みのため、正規品のOfficeを正規の手段で購入していれば必然的に、Officeのライセンスをそのアカウントで購入したことがMicrosoftアカウントにきちんと登録されているはずなのだ。

現時点で、Microsoftアカウントでサインインした状態でOfficeを利用しており、そのMicrosoftアカウントがOfficeのライセンスに紐付いていることを確認する方法は、まず、Officeアプリのいずれか (WordやExcelなど)を起動する。
次に、タイトルバーの右にアバターのアイコンがあるかどうか確認する。

Microsoft Excel
タイトルバーの右のアバターのアイコン

A. アバターのアイコンがあった場合

アバターのアイコンがあれば、表示されているMicrosoftアカウントでサインインした状態でOfficeを利用していることになるため、次の手順に進む。
アバターのアイコンがあった場合の操作手順の続きは、以下の通りだ。

  1. 「自分のMicrosoftアカウント」をクリックする。
    クリックする。
    そうすると、何らかのウェブブラウザー (Microsoft EdgeやGoogle Chromeなど)が起動して、Microsoftアカウントの情報を確認・変更するためのウェブページにジャンプするので、必要に応じてウェブブラウザー上で、表示されているMicrosoftアカウントのパスワードを入力するなどしてサインイン操作を実施する。

  2. 「サービスとサブスクリプション」をクリックする。
    そうすると、そのMicrosoftアカウントを使ってサインインして利用しているサービスや製品の一覧が表示される。

https://account.microsoft.com/
サービスとサブスクリプション

一覧内に、以下のいずれかの表示があれば、そのMicrosoftアカウントがOfficeのライセンスに紐付いており、Officeのライセンスをそのアカウントで購入した記録があることになる。

  • Office <エディション (使えるOffice製品のグレードを示す語句)> <バージョン (リリースされた年を示す4桁の西暦年)>
    ※ 例: Office Home & Business 2019

  • Office <エディション> Premium
    ※ 例: Office Home & Business Premium

  • Microsoft 365 <エディション>
    ※ 例: Microsoft 365 Personal


https://account.microsoft.com/
そのMicrosoftアカウントを使ってサインインして利用しているサービスや製品の一覧

このうち、「Microsoft 365 <エディション>」の表示については、紐付けの事実と購入記録とが存在しない場合でも、「これから使いはじめませんか?」という宣伝表示によって表示される場合があり、Microsoftアカウントの情報を確認・変更するためのウェブページの仕様が変更されると表示方法も変わるなど、非常にややこしい。
こういったケースでは、その表示されている項目内に、「無料で試してみて~」という趣旨のボタン (例えば「Microsoft 365を無料でお試しください」など)がなく、代わりに支払方法の変更や停止の手続きのためのボタン (例えば「管理」や、「定期請求を有効にする」など)があれば、紐付けの事実と購入記録とが存在していると判断できる。

そのMicrosoftアカウントを使ってサインインして利用しているサービスや製品の一覧

一覧内に以上のいずれかの表示がなければ、そのMicrosoftアカウントがOfficeのライセンスに紐付いておらず、Officeのライセンスをそのアカウントで購入した記録が存在しないことになり、海賊版を使っている可能性が高まる。
もちろん、ユーザーが何らかの理由で過去に、紐付けの事実と購入記録とが存在しているMicrosoftアカウントからサインアウトし、紐付けの事実と購入記録とが存在していない別のMicrosoftアカウントに切り替えてサインインしていれば、同様の未存在表示になるが、これはレアケースで、ユーザー側の明確な意思がない限り行わない操作だ。
そういった操作を行った記憶がなければ、団体向けライセンスを切り売りする手法の海賊版Officeを使っている、もしくは不適切に自動生成された、いわば“捨てアカ”のMicrosoftアカウントを使ってサインインすることで、見かけ上は正当な利用方法に欺瞞されている可能性が極めて高い。

B. アバターのアイコンがなかった場合

アバターのアイコンがなく、代わりに「サインイン」という表示になっていれば、Microsoftアカウントでサインインしていない状態でOfficeを利用していることになり、海賊版である疑念が多少生まれてくる。

Microsoft PowerPoint
Microsoftアカウントでサインインしていない状態

もちろん、ユーザーが何らかの理由で過去に意図的にサインアウトしていれば、同様の「サインイン」という表示になるが、これもレアケースだろう。
そういった操作を行った記憶がなければ、海賊版故に不正認証が発覚しないよう、Microsoftアカウントでのサインインを控えている可能性が浮上する。

海賊版Officeの確率: 3%未満【ほぼ正規品】

自分が購入した、または、自分のパソコンにインストールされているOffice製品が、サブスクリプションタイプであるMicrosoft 365 (旧Office 365)であれば、海賊版Officeである可能性はほぼゼロと言って良いだろう。
もちろん、前述したように、Microsoft 365に対応した不正認証プロセスも確率はされているが、犯罪者が一般人相手に販売する海賊版Office界隈では、記事制作時点では、少なくとも日本ではまだ採用例がほとんどないため、無視できるリスクと言える。

自分が購入した、または、自分のパソコンにインストールされているOffice製品が、サブスクリプションタイプであるMicrosoft 365であることを確認する方法は、以下の通りだ。

  1. Officeアプリのいずれか (WordやExcelなど)を起動する。

  2. 「アカウント」をクリックする。

「製品情報」という項目内に、「サブスクリプション製品」、及び「Microsoft 365 <エディション>」(例えばMicrosoft 365 Apps for Businessなど)の表示があるかどうか確認する。

Microsoft 365
「製品情報」という項目

A. 「製品情報」という項目内に必要な表示があった場合

表示があれば、そのパソコンにインストールされているOffice製品は、Microsoft 365である。

B. 「製品情報」という項目内に必要な表示がなかった場合

表示がなければ、そのパソコンにインストールされているOffice製品は、Microsoft 365以外のものである。
記事制作時点では、サブスクリプションタイプではない、従来の西暦年の買い切りタイプのOffice製品 (例えばOffice 2019など)もきちんと正規品として販売されている以上、表示がないだけで“海賊版の疑いあり”と評価するのは尚早。
とはいえ、前述したように、買い切りタイプは仕組み的に海賊版ライセンスを作り出しやすいだけに、可能性は完全に排除できない。

この場合、前述の「海賊版Officeの確率: 0%【確実に正規品】」の項目で解説した、Microsoftアカウントでのサインイン状態とライセンスへの紐付けの確認と組み合わせる形で確認すると確実だろう。
Microsoftアカウントの情報を確認・変更するためのウェブページ上において、紐付けの事実と購入記録とが存在しているOffice製品のバージョン・エディションと、バックステージビュー上の「製品情報」という項目内に表示されているOffice製品のバージョン・エディションとが一致していれば、買い切りタイプであっても確実に正規品であると判断して良い。

海賊版Officeの確率: 50%【海賊版の可能性が疑われる】

Office製品を購入した通販サイトの商品説明や、Office製品を購入した店舗の担当者の説明に、以下のような趣旨の内容が含まれていれば、海賊版の可能性が疑われる

  • トラブルが起こっても, このOffice製品を再インストールすることはできない

  • このOffice製品を再インストールするには, 販売者から渡されたメディア (光学ディスクやUSBメモリ)が必ず必要 (Office 2013以降のバージョンが該当)

  • Office製品をパソコンにインストールしたり初期設定を行ったりするための初回セットアップ作業を実行する際は, インターネットにつながずにオフライン環境で実行して欲しい

  • 「ライセンス認証されていない」という趣旨のエラーが表示された場合の対処法について

この4つは、いずれも正規品ではあり得ない仕様だ。

正規品のOffice製品なら、Officeアプリやパソコンにトラブルが起こり、Office製品を再インストールしなければいけない必要が生じた場合には、何度でも簡単に再インストールが可能だ。
しかも、Office 2013以降のバージョンの買い切りタイプのOffice製品は、前述したように、Officeのライセンスをそのアカウントで購入したことがMicrosoftアカウントに登録される仕組みのため、光学ディスクやUSBメモリを使わなくてもオンライン上から再インストールが可能だ。
「渡したインストールDVD以外使っちゃダメ」みたいなことを言われたら即クロ。
また、インターネットにつながずに初回セットアップ作業を実行することを要求するのも、デジタルライセンス認証の仕組みを悪用したり、不正な情報を送信して欺瞞 [ぎまん]したりするための不正プログラムの処理が阻害されるからにほかならない。

インターネットが切断される

「ライセンス認証されていない」という趣旨のエラーが表示された場合の対処法についての説明が詳細になされるケースは、一見すると親切丁寧な対応に見える。
しかしながら実際には、正規品を買えばこのエラー表示が出る可能性はほとんどゼロに近く、このエラー表示が出る可能性を想定した案内を行うこと自体が怪し過ぎる。
ここで紹介した内容を、販売者側にあえて質問形式で聞いてみることで、逆説的に正規品か否かを確認するのも手だ。

海賊版Officeの確率: 95%【ほぼ海賊版】

自分が購入した、または、自分のパソコンにインストールされているOffice製品が買い切りタイプで、エディションがProfessional Plus (Pro Plus)である、または、ライセンスがLTSC (Long Term Servicing Channel)ライセンスであれば、ほぼ間違いなく海賊版Officeと言って良い
Professional Plusは一般人向けには販売されず、特殊な事務作業やデータ管理やデザイニングを行う高度ユーザー向けにしか販売されない特殊なOffice製品であり、Microsoftアカウントを使わないKMS認証でライセンス認証ができるために、海賊版の作成にはうってつけ。
LTSCライセンスは、団体向けライセンスのひとつであり、たった一度のライセンス認証で認証できてしまうだけに、悪用すれば一時的な送信情報の欺瞞だけで不正認証できる代物。

こういったものを、一般の素人が巷で普通に買って使えるのは明らかにおかしい。
もちろん、会社や学校などのれっきとした団体が所有するパソコンや、こんな記事を読む必要性がそもそもないレベルの技術者なら、Professional PlusやLTSCライセンスを利用していることもうなずけるが、そうではない場合は、海賊版ライセンスであることは目に見えている。

自分が購入した、または、自分のパソコンにインストールされているOffice製品が買い切りタイプで、エディションがProfessional Plusである、または、ライセンスがLTSCライセンスであることを確認する方法は、以下の通りだ。

  1. Officeアプリのいずれか (WordやExcelなど)を起動する。

  2. 「アカウント」をクリックする。

Microsoft Office
「製品情報」という項目

「製品情報」という項目内に、「Professional Plus」や「LTSC」という文言が含まれた表示 (例えばMicrosoft Office Professional Plus 2019や、Microsoft Office LTSC Professional Plus 2021など)があるかどうか確認する。
表示があれば、そのパソコンにインストールされているOffice製品のエディションはProfessional Plusである、または、ライセンスはLTSCライセンスである。
表示がなければ、そのパソコンにインストールされているOffice製品のエディションはProfessional Plusではなく、ライセンスもLTSCライセンスではない。

海賊版Officeの確率: 100%【確実に海賊版】

インストールやライセンス認証を含む、初回セットアップ作業のやり方は、Microsoftによって明確に定められている
もし販売者が、その正規のやり方ではないやり方で初回セットアップ作業を行うよう指示している場合は、100%海賊版と考えよう。

初回セットアップ作業の全工程を紹介することはさすがにできないが、正規の工程には絶対に存在しないのに、海賊版Officeでは確実に実行しなければいけない作業が存在する。
それが、「セキュリティーソフトの保護機能を無効化する」というもの。
これは素人目でも怪しいのは明白で、記事の冒頭でも紹介した通り。
この指示を受けたら即アウトだ。

また、逆に、正規の工程には絶対に存在するのに、海賊版Officeでは確実に実行できない作業も存在する。
この作業が指示に含まれていない場合も、同様に不正行為を行っている証拠と見ることができる。
正規の工程では、Officeアプリのインストールに際して、必ず以下のサイトにアクセスし、必要な各種作業を実行することになっている。

https://setup.office.com/
https://setup.office.com/

Office製品を購入したはずなのに、このウェブサイトへのアクセスを指示されていない場合、あなたがつかまされているのは確実に海賊版Officeだ。

ただ、買い切りタイプのOffice製品については、パソコンを新品で購入した際に一緒に購入し、初回セットアップ作業をパソコンショップ側が代行しているケースもある。
この場合、このウェブサイトへのアクセスを含む一連の作業は、パソコンショップ側が実行していて、購入者は一切手を触れていないため、指示もないのは当然。
その場合は、スクラッチ方式でプロダクトキーが書かれた厚紙をきちんとパソコンショップ側から渡されているかどうか確認して欲しい。

海賊版Officeと判明したら即アンインストールを

ここまでで開設した確認方法によって、自分が現在使っているOffice製品が海賊版Officeであることが判明したら、速やかにアンインストールしていただきたい
前述した通り、海賊版は利用するのも提供するのも違法行為であり、海賊版とは知らずに使っていたとしても、海賊版と判明した段階で速やかに使用をやめなければ、犯罪者を応援していることになりかねない。

海賊版ライセンスは、不正なプログラムによって自動的に生成されているケースも多く、素人では適切にアンインストールができない可能性が高いうえ、セキュリティー上の問題から、既に何らかのサイバー犯罪の被害を受けている可能性もある。
一般人は基本的には、コンピューターウィルスに感染したパソコンと同様に取り扱い、パソコンの使用そのもののを即中止したうえで、パソコンショップなどが開設している、ウィルス感染・マルウェア被害の専用相談窓口に相談するのが無難だ。

Microsoftは、以下のウェブサイトで海賊版Officeの情報提供を呼び掛けている。

わざわざ手間を掛けて報告するかどうかは、この記事を読んでいるあなた自身のボランティア精神にかかっている。
まあ、報告があっても根本解決は難しく、告発された業者だけ裁かれるのがせいぜいだが…

コンピューターウィルス

安いものには必ず罠がある, ストップ海賊版!

安物買いの銭失い」ということわざが示す通り、何でも標準価格よりも安いものには必ず罠がある。
確かにライトユーザーからすれば、月数回簡単なビジネス文書を作ったり、メールを単に送受信したりするくらいしか使わないのに、3万円以上のコストは痛いと考えるのは理解できる。
正直、例えば映像作品を作るための動画編集アプリの方が、アプリ設計の難易度は高いのに、安いものでは1万円前後で利用できることを考えれば、「Microsoft Office」というブランド名を鼻に掛けてぼったくってる感は否めない。
そもそも、Microsoft Officeを似せて作ったパチモンOfficeスイートが他社から続々出ており、価格もものによっては1/3以下という破格なので、素人が使うならそれで充分説すらある。

とにかく、何を振りかざしても違法行為をやって良い理由にはなり得ない
パソコンの安全のためにも、IT界の健全な発展のためにも、皆さんには海賊版の利用はやめて欲しい。

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