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人生初の整体に行ったら岩石の巨兵が現れた話

無職期間を挟むとは言え、社会人としてのカウントは3年目を迎えている。この3年間ずっとデスクワーク。前の職場ではごくたまにマンホールの蓋を開けたり閉めたりをしていたが、基本1日をPCの前で終える。


今の職場でもそれは変わらないのだが、机の高さ・椅子の高さ・PCの画面の全てがミスマッチしており、毎日30°くらいの猫背で仕事をしている。


当然、人間は猫背が許容される設計をしていないので日を増すごとに身体の負担が蓄積される。俺の場合は肩に集中した。首筋から肩。もうひどい。肩たたき券をAmazonの欲しいものリストの1番上に入れている。2番目がタブレット。


そんなこんなでちょっと金があるタイミングで予約しました。整体。


「宇都宮 整体」で検索し、ズラリと並んだ店舗の中から金額やコースなど条件が揃った店を探した。


とりあえず最初なのでそこまで時間が長く無くて、オプションとかよくわからんからシンプルで、なるべく安くて、距離的に行けそうなやつで、知らないおっさんに体を触られたくないからできればお姉さんの店で…


整体女性


検索すること半日、遂に見つけました。ホットペッパービューティーで高評価!相場よりは安い7000円90分!施術者指名制!全身もみほぐし!


肩だけなら全身いらなくね?という話だがどうせならこれまでの人生で培ってきた体の負債を取り除きたいし、一極集中より全身の方が安いから全身コースにした。


そして、この全身コース、どうやら足圧も含まれているらしい。


※足圧とは…踏んで施術するやつ。足圧師のお姉さんの漫画を読んで以来筆者はそこそこ足圧に興味があった。


お姉さんに踏まれるうえに気持ちよくなれるとか一石二鳥じゃんと思った愚かな俺は、ウキウキで予約を取り、当日を迎えた。


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午後14時。予約の時間だ。駅付近の小さなビルにその店はあった。ビフォーアフターのビフォーみたいな狭い玄関をくぐり、受付へ。


「予約していた〇〇なんですけど…」

「あ、ハイ。そちらへドゾ」


案内された先は受付の真横、カーテン一枚越しの向こうだった。カーテンを捲ると体操服のようなものがベットの真ん中にあった。

よくわからず椅子に座っていたが誰も来る気配が無い。一度受付の人に聞いてみようと外に出たら


「何で着替えてないのwww」と笑われた。そんな笑う?なんでタメ口?


仕方ないのでサイズが合っていないぴちぴちの体操服に着替え、また外へ。

そして指名したお姉さんがやってきた。








岩石の巨兵2

岩石の巨兵だった。



このご時世、あまり女性に対してこのような発言は避けるべきなのは分かる。分かってはいるが最大限のオブラート表現が岩石の巨兵なのだ。


HPの説明だと、施術4年目・絵が好き・その可愛らしい絵がアイコンだった。いやまあ下心8割くらいだした俺が悪いけどさ、流石にさあ、その、手心というか…

HPの写真の綺麗なお姉さんはどこに行ったんだ。ていうか俺この人に踏まれたりするのか。え?大丈夫なの?


なんて走馬灯のように過去を後悔していたら巨兵が「横になて」と言った。



…お気づきの方もいるだろう。なんとこの店日本人が経営していない。



受付横のおそらくセラピーの証明書だろうか、賞状の類が全て中国語。いろいろ評判を探っているうちに見つけた「施術者は中華の方」という一文。それら全ての情報から目の前の岩石の巨兵は中国産まれという事実が浮かび上がる。


言われるがまま横になる。初めての整体なので何もわからない。穴が開いている枕に顔を突っ込まないといけないらしいのだが、勝手がわからず、また現状の情報量に心が追いつかずおろおろしていたらやはり爆笑されながら「頭ここ」と言われ、枕に顔をうずめた。そんなに笑える?


というか施術前にセラピーとかないの?どこを重点的にやってほしいとかどこが辛いとかそういうこと言わなくていいの?そんなことを思いながらうつ伏せになっていたらベットが軋む音がした。始まるのだ。



整体


普通に重い。踏まれる度に呼吸が止まる。時勢的にマスクをしながらの施術なのだが、マスクと過度な重力により本気で過呼吸になる。マスクの中は唾液でまみれ、顔は色んな体液でぐしょぐしょになっていた。


そして最初にセラピーをしなかったからか、腰をひたすら重点的に押される。腰、腰、背中、腰。腰を中心に全体に圧が広がっていく。完全に腰が起点となっている。ちなみにこの時点で腰の疲労はそこまでじゃない。


整体


「強さダイジョブですか」

巨兵が俺を踏みながら尋ねてくる。声どころか息すらできないが、何とか圧の波を搔い潜り絞り出すように「少し強いです」と答える。

これで少しはマシになる…そう安堵した時、


「ハアッ…ハアッ…ハアッ…ハアッ…」


急に巨兵がヘラりだした。マジで怖い。声色は泣き出すんじゃないかと思うくらい高くなり、俺以上に過呼吸になる。怖かった。本当に怖かった。


ヘラったあとは特に圧の強さは変わらず施術は続いた。途中肩甲骨と背中に足を置き俺をサーフィンのように圧をかけられたが、マジで死ぬかと思った。痛さに加えてそこそこの時間息ができなかったからだ。


そして巨兵はベッドから降りて、手による施術が始まった。さすがにさっきよりかは楽になるだろうと思っていたがそんなことはなく、巨兵の全体重が体の各所に突き刺さる。


「大地をゆるがす」と言わしめた腕による施術だ。当然呼吸はできない。そしてやはり腰が起点である。さっきのサーフィンで痛めた腰をひたすら押す巨兵。もはや、早くこの時間が終われと思うことしかできない。


間で巨兵が強弱について聞いてくる。ヘラられたくないので大丈夫ですとか細い声で答える。


押す箇所は一応ツボなのだろうが、フルパワーすぎて激痛なのかちゃんと気持ちいいのか分からない。整体が初めてだからマッサージの類の経験が無いのでこの痛みが快感なのか?と思ったが流石に呼吸困難になるのはおかしいと思う。


タイマーが鳴った。終わりの合図だ。マスクはぐちゃぐちゃになって、体はタオルのあとがくっきり移っていた。着替えを済ませ、お茶のサービスを断り、7000払って、異常に低い玄関を出た。



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こうして人生初の整体を終えた。肩こりは治らず、新たに腰を痛めて帰路についた。



人間下心を行動基準に組み込むとロクなことにならない。



ただ、もしかしたら岩石の巨兵の圧の強さが標準の可能性がある。なので我こそはという足圧師の皆さん連絡待っています。



いや~~肩と腰が痛いんですよ~~


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