学校再開について思うこと

学校再開派のコメントを読んだり、早期の学校再開を望む友人の話を聞くと、なるほどと考えさせられることも多いです。
それぞれ色々な立場や事情があるのだなと。
どちらが正解というものでもないのだと思います。
そして、このままどちらかに合わせれば、どちらかがリスクを負うことになりそうです。

私は、通常通りの学校再開には反対です。
そう考えるにはいくつかの理由があります。

手短に説明することが難しかったため、学校再開を望む声に対して、私が考えたことを思うままに書いてみようと思います(長文すみません…)。


オンライン学習拡充の長期的なメリット

私と子供には呼吸器系の持病があります。
新型コロナの流行を知り、自分と子供にはリスクが大きいと考え、私は教育関係の仕事を辞めました(詳しい説明は控えます)。

収入的には大変厳しいですが、幸いにもしばらくはやっていけそうなので、子供の自宅学習にも十分付き合える環境です。
そういった立場なものですから、現状では学校再開には反対の立場です。


ところで、現状のまま学校が再開されれば、ほとんどの親は行かせるのではないかと思います。

私の周囲の母たちの話ぶりから察するに
「感染は心配だけれど、学習面で遅れるのは困るので行かせるしかない」
と考えている人が多いようです。

この雰囲気の中で、自主休校するのは大変な勇気だと思います。
私の住む地域では集団登校ですから、友達みんなが並んで登校する様子を、我が子が家から寂しそうに見つめる姿に、胸が痛むかもしれません。

でもこの流れに負けて、なんとなく「不安だけれど行かせるしかない…」でいいのでしょうか?

学校内で子供が感染したとしても、「あの時学校に行かせたのは仕方ないことだった」と自信を持って子供に言えるのでしょうか?

私は選択肢は他にもあると思います。

行くか、休ませるか、それだけではないのです。

今、様々な業界において、テレワーク可能な職務は順次移行が進んでいます。それは恐らくコロナとの戦いが長期戦になることが分かっているからです。この戦いの中で、社会は何度も自粛と解除を繰り返すでしょう。
その度に業務が一旦停止するのはとても不毛なことですから、企業も長い目で見た生き残り戦略を練っている結果かと思います。

学校においてはどうでしょうか。
諸外国ではオンライン学習を積極的に取り入れている国があります。しかし日本では初動も遅く、十分に整備できている学校は皆無かもしれません。

そのため、現時点で自主休校を選ぶということは、教育が提供されなくなることを意味することになります。
この結果、不安だけど行かせるしかなくなるのです。

だからといって「教育を受けるためには、感染のリスクを冒してでも学校に行くべき」と結論づけるのはまだ早いです。

なぜなら、今すぐにできないからといってオンライン学習を諦める必要はないし、決して諦めるべきではないからです。

オンライン学習を確立しておくことは、この先、自粛と解除を繰り返す生活の中でとても重要です。

学校へ行くか行かないかの選択肢だけでは、次の流行が来た時(第2派、第3派は必ず来ると言われています)、再び休校措置が取られ、授業を諦めなくてはいけない状況になる。経済活動と同様に、休校と再開は繰り返すはずなのです。
(それでも留年はさせずに予定通り教育課程を終わらせる方針のようですが、休校日数がこれ以上増えた場合、学年が上がるほど取り戻せなくなると思います)

学校再開派の中には「休校による学力低下を甘く見るな」と仰る方もいますが、一時的な対面授業に拘ることよりも、長期的に継続できる学習環境の整備の方が、この先新型コロナと共存しつつも学力低下を回避するためにむしろ意味があると思うのです。

だとしたら、学校再開よりもオンライン学習の優先順位を高めるべきでしょう。
そのためにも学校再開は一旦棚上げし、教育界の力をオンライン学習の確立に積極的に投入すべきだと思います。
(特に再開後の感染対策について教員たちが必要以上の時間と労力を使うことはあまり意味がないと思います。学校は感染を防げない場所だと思うので。その理由は次項で説明します)

今やるべきは、オンライン学習環境を確立すること。その上で、地域の流行状況、家庭の事情によって、臨機応変に「登校するか」「オンラインにするか」を選択できる「学習環境の選択制」こそが、誰もが納得のいく答えであるように私は思っています。

学校の感染リスクは高い


学校再開は一旦棚上げする。そんなのんびりしたことは言っていられないと仰る人も多いかもしれません。「一刻も早く経済活動と学校を再開しないとと、生活ができなくなってしまう」という声も多いからです。

けれど、そもそも経済活動と学校を同列で考えるのは間違っていると私は思っています。(経済活動については十分に感染対策を取りながら再開していくしかないと私も考えています)

その理由は、大人と子供とでは、その社会的距離が圧倒的に違うため、感染拡大は止められないと思うからです。

インフルエンザ流行時、小学校ではクラス半分が感染したなんて話は本当によくあることですが、職場で半分感染したなんて私は聞いたことがありません。

想像してみてください。
あなたは職場で、床に座り込んだり、誰かに抱きついたり、手を繋いだり、耳元で内緒話をしたり、水筒を回し飲みしたりしますか?
大声で叫んだり、友達にぶつかって転んだり、ふざけて取っ組み合ったりしたことはありますか?
床に落ちたマスクを付け直したり(或いは裏返しにマスクを付けてたり)、ハンカチを忘れて友達から借りたり、(汚い話で申し訳ないですが)便器の周りに汚物が付着してることは、あなたの日常によくあることでしょうか?

それがあなたの職場でも日常的にあるというのなら、経済再開と学校再開を同列で考えても良いのかもしれませんが、それはおそらく違うでしょう。

学校生活は普段から感染症にまみれた場所なのです(日々様々な感染症に晒されて免疫をつける場所でもありますから当然のことです)。

我が子の通う学校では、インフル流行時は前向き給食、私語禁止、全員マスク着用です。それでも学級閉鎖は避けられない…。
残念ですが、社会的距離の近さから考えればごく当然のことです。

仮に「学校での感染対策を徹底するので安心して登校してください」と言われても、私個人としては全く安心できません。
日々の子供たちの生活を知っているからこそ無理だと分かりますし、現場いる教師たちも恐らく同意見でしょう。


今回の新型コロナ第1波で、学校が休校していたことは幸運だったと思います。
学校内で感染が始まれば、気がついた時には大規模に拡大しているでしょう。
そもそも新型コロナの感染力が高まるのは発症前ですし、子供は軽症だと言うのなら、なおさら感染に気がつくのは遅れるでしょう。
ワクチンもないのでインフルエンザより大規模に拡大しても何らおかしくありません。

そして子供が感染したら…。
病気の子供は隔離なんてできません。当然、大人の看病が必要です。
他の感染症と違って大人も免疫がないので、家族内感染は容易でしょう。家族全員にうつるかもしれません(実際、新型コロナの家庭内感染はよくあるようです)。

そうなると、大量の感染者が同じ地域で一気に発生します。

その時、医療機関は対応できるのでしょうか?

休校中の第1派ですらぎりぎりであったように見えたのに。

現在、医療体制整備はどこまで進みましたか?


これを受け入れる覚悟なしに学校再開をすることは非常に危険だと思います。

学校はそういう「リスクのある場所」なのです。


学校再開を望む人にとっても選択制はメリット

「学校がないと子供の預け先がないから働けないので学校再開を」「オンライン学習になってもフルタイムで仕事をしているので学習面の対応ができない」という声も多くあるようです。

私の友人にも、明日からでも子供を学校に行かせたいと言う母親がいます。彼女はフルタイムで仕事をしていますが、厳しい学童入所条件に阻まれて、子供の預け先がなく、今は長時間一人で留守番をさせるしかない状況です。「コロナは怖いけど、それ以上に子供の留守番が心配。このままではとても働き続けられない」と言います。

登校かオンラインかの選択制を採用することは、このような場合にも大きなメリットがあると思っています。
つまり学校再開を望む人にとっても、学校は再開しない方が良いという結論になりそうなのです。

理由は、オンライン学習が選択できることによって、登校する児童が減るはずだからです。
ソーシャルディスタンス、2メートル離れるなど言われていますが、教室内は残念ながら圧倒的に密です。2メートル間隔を守ったら、10人も入れないのではと思います(実際には35人程度いるのですが)。

クラス内の人数を減らすために、分散登校を進める学校が多いようですが(私の地域も学校再開当初は分散登校らしいです)、それほど無駄なことはないと思います。
半分ずつの登校となったとき、子供は週に2~3日しか授業は受けられないわけです。
すでに休校3か月の遅れがある上に授業日数を減らす、しかも留年はさせずにこの遅れをどこかで取り戻すなどと、不可能にもほどがある…
正直、家庭内でのフォローがなければ、学力低下は否めないでしょう。

オンラインを選択した児童が登校せず、教室内が密にならずに分散登校を回避できれば、登校する必要のある児童は毎日通常授業が受けられます。

つまり登校を望む人にとっても、オンライン学習を望む人にとっても、学習環境の選択制の導入は、お互いにメリットがあるはずなのです。

これを拒否する理由はないのではないでしょうか。


新型コロナウイルスは本当に危険な病気なのか


また、「インフルエンザの方が死者が多い」とか、「他にももっと致命率の高い病気はある」「子供は軽傷といわれている」という理由で、新型コロナでの休校は必要ないという声もあります。たしかにそういう考え方もあるかもしれません。

現状ですと、恐らく誰もが「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」としか答えようがないのではないでしょうか。

新型コロナウイルスって結局なんなのか、分かっている人は残念ながらいませんから。

確実に効く薬は今はなさそう
ウイルスの活動もよく分からない
抗体ができない可能性もある
再感染時に悪化するかもしれない
後遺症が報告され始めたが頻度も不明
小児では悪化しないと言われていたが死亡例も出始めた
感染経験による長期的な影響は現段階では全く不明

挙句、検査拒否の問題もあり、どうやら悪化するまで(あるいは運が悪ければ悪化後も?)自宅療養を覚悟する病気であるようです。

つまりは「学校を再開しても大丈夫かもしれないが、大丈夫ではないかもしれない」としか言えない。

それなのに、医療崩壊の覚悟もなく、他の選択肢(例えばオンライン学習)もあるのに、今すぐに学校再開を強行しなくてはならない理由は果たしてあるのでしょうか(私には思いつきません)。

オンライン学習の拡充、医療体制整備、治療法確立など、今やれることは他にもたくさんあるはずなのに、それは一旦うやむやにした状態で、現場以外の誰かが決めた「学校再開」に不安ながらもなんとなく流されていく状態…

今はそんな虚しい状態であるような気がしています。自分には我が子や家族の安全は守れないのかもしれない…と無力感でいっぱいになる時があります。

ただ分かっているのは「家にいれば安心のようだ」ということだけ。

それを分かっているのに、危険だと思う場所に送り出す勇気が私には持てません。


最後に



多くの専門家が提唱しているように、新型コロナとの戦いは長く続くものになるのだと思います。
企業も学校も継続可能なプランの採用を考えなければ、いずれどこかで破綻してしまう。

人よって身体的リスクも違えば、考え方も、働き方も違う。
抱えている事情が違うのですから、言い争いをしても意味などないでしょう。
仮に一方だけの意見が通ったとしても、それで得られるのは一時的なメリットに過ぎず、長い目で見ればお互いのためにはならないと思います。

どんな親でも子供の学力や健康を心配する気持ちは同じ。
同じ敵と戦う仲間なのに、言い争いが起きるような現状はおかしいのです。

どんな立場の子供も、同じ方向を向いて進めるように、大人たちがリードする必要があると思います。

先のことは誰にも分からない。

未来の子供たちが、「あの時は心配しすぎだったよね」と笑っていられるなら、それは幸運なことだと思います。
その逆に、不必要な犠牲者を出す未来は、絶対に避けなくてはならないと思います。

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