息子と鯛がくれたもの
2023年8月31日にオランダに来てから3ヶ月半が経過。
初めは英語で会話をする勇気がでずに、買い物も話す必要のないスーパーのみ、毎週金曜日に開催されるマーケットでは夫がいる時しか買い物はできず、もちろんカフェにも行けない、息子がアイスクリーム屋に行きたがっても買ってあげられない、そんな日々が続いた。
毎日毎日、2歳の息子と近所を散歩したり公園に行くのみの日々。
私の住んでいるAmstelveen(アムステルフェーン)はアムステルダムまでトラム(電車)で30分くらいのところにある住宅地で、とても自然豊かな場所。
日本とは規模感の違う大自然(新宿御苑がそこらじゅうにあるイメージ)の中での散歩は、とても気持ちがよかったし私も息子も毎日新しいことの発見で、充実していたことは確か。
ただ、公園で会ったママたちや、近所の人たちがせっかく話しかけてくれているのに、Yes・No・Thank youしか言えない自分にストレスは募るばかり。
(冷静になれば単純な英語なのに、なんであんなに出てこないのか…)
‘今日こそは’と何度も思いながら、なかなか踏み出せない状況から打開できたのは、
オランダに来てようやく1ヶ月が経とうとしていた頃。
無性にカルパッチョが食べたくて、‘今日はマーケットの日だし、鯛を買いに行こう!’と事前に鯛を英語で何というのか調べ、息子と2人マーケットに向かった。
いざ、魚屋の前に来ると緊張が押し寄せてきて、息子の手を握りしめながら、5分ほど行ったり来たりを繰り返し、‘あぁ、やっぱり無理’と家に帰ろうとしたところ、息子が「ママ、どうしたの?」と。
「ママ、まだ勇気がでないんだ」と伝えると、「ママ、がんばれ!」と予想をしていなかった息子からの激励をもらい、もう一度魚屋に引き返し、
「Can I have sea bream?」とドキドキしながら店員さんに声をかけた。
無事に鯛を購入できると、「ママ、買えたね!」と嬉しそうな息子。
2人でハイタッチをして喜びを噛み締めながら帰路についた。
ママの背中を押してくれてありがとう。
その日食べたカルパッチョは言わずもがなとびきり美味しかった。
息子のおかげで一歩踏み出せた私は、それからどんどん行動範囲が広がり、今では日本にいる時と変わらず買い物したり、カフェに行ったり、たくさんのことができるようになった。
オランダに来て毎日充実しているのに、少しづつ溜まっていっていた心の中のモヤモヤは、すっかり晴れて今は心の底から毎日が楽しい。
息子と鯛がくれたこの晴れやかな毎日にありがとう。
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