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【冬ピリカグランプリに参加します】~『天使のおつかい』~

こんにちは。
よくばりすです。
今年もどうぞよろしくお願いします。

今日はこちらの企画に
参加させていただきたいと思います。
はじめて参加させていただきます。
よろしくお願いいたします。

応募作品↓

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『天使のおつかい』

ここは雲の上の世界です。
ここには天使たちが住んでいます。

天使の世界では
六歳になるとおつかいに行くという
決まりごとがあります。

今日はもえちゃんの六歳のお誕生日。
朝、天女様に呼ばれました。
「もえさん、六歳のお誕生日おめでとうございます。今日、おつかいに行ってもらいます」

天女様はもえちゃんの羽衣を脱がせ、
白いブラウスに紺色のワンピースを着せました。
そして、赤いカバンを背負わせてくれました。

天女様はもえちゃんを膝にのせ、
一緒にガラスの玉をのぞきました。
そこには赤い屋根のお家がうつっています。
「もえさんのおつかいは、ここのお家にこの桜の木を植えてくることです」

そう言うと、もえちゃんの背中のカバンの中に
桜の苗とスコップを入れました。

「植える場所は、明かりが教えてくれますよ。では、もえさん行ってらっしゃい」

天女様がもえちゃんにやさしく息を吹きかけると、
ふわっと体が浮き赤い屋根のお家の庭に着きました。

「あれ、この香り」
なんだか、懐かしい香りがしました。
「桜の木を植えるところはどこだろう」
と、庭の中を歩きました。
「このブランコ、前に乗ったような気がする。いつ乗ったのだろう?」

ブランコに乗ってみると、
目の前の花壇に丸い明かりがありました。
「あっ、明かりだ。ここに植えたらいいのね」
赤いカバンからスコップと苗を出して植えました。

木を植えた時です。
お父さんとお母さんと手をつないで歩く女の子が
庭の前を通りました。
もえちゃんと同じ赤いカバンを背負っています。
もえちゃんはじっと見ていました。

その時、お家の駐車場に一台の車がとまり、
中から尺の入ったバケツを持った男の人と
女の人が降りてきました。

二人も、外を歩いている親子連れを見ています。
しばらくすると、
男の人が庭にいるもえちゃんに気付きました。
女の人も驚いた様子でもえちゃんを見ています。

もえちゃんは、
どうしたらいいのかわからなくて固まっていると、
頭の中にあたたかい思い出が浮かんできました。
「あれ、この人たち前に会った気がする」
そう思った瞬間でした。
女の人の目から一筋の涙がこぼれ、
もえちゃんをぎゅっと抱きしめました。
男の人ももえちゃんを抱きしめて、
「さあみんなでブランコに乗ろう」
と言いました。

ゆっくり揺れていたブランコは次第に強く揺れ、
風が心地好く
まるで自分があたたかい風になった気分でした。
その風にのって女の人の口から、
「もえちゃん」という言葉が
聞こえた気がしました。
心地好く耳に響き、
もえちゃんの口からも
ふわりと言葉が出てきました。
「パパ、ママ、どうもありがとう」
その瞬間、
もえちゃんの体は風に乗って、
ふわっとお空の世界に帰って行きました。

これは天女様が準備した、
赤ちゃんのときに天使になったもえちゃんが
天国で大きく育ったことを知らせる
おつかいだったのです。

もえちゃんの植えた桜は
今も大きく成長しています。
おひさまの光が一番当たる明るい場所で。


以上
タイトル除き、本文の文字数
(1197 文字)

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