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新聞読み比べ -解散風吹く中、公明党・山口代表「受けて立つ」


 解散風がささやかれる中、公明党の山口那津男代表の発言に注目が集まっている。

 山口代表は6月5日、国会内で講演を行い、そこで衆議院解散について「(首相が解散を)決断すれば受けて立つ」という旨の発言をした。今回はその発言に注目して、産経新聞、朝日新聞、日経新聞、毎日新聞、読売新聞、計5紙の衆院解散に関する報道を読み比べていく。

朝刊5紙、読み比べ

 1紙目は産経新聞朝刊。
 産経新聞は2023年6月6日、5面で「終盤国会攻防ヤマ場 野党、不信任案も視野」という見出しを載せた。その記事の中の小見出しに「山口・公明代表 衆院選備え強調「受けて立つ」」と書き「(首相が)いざやるぞと決断すれば、受けて立てるような備えをしていく」という講演での山口代表の発言を報じた。

 2紙目は朝日新聞朝刊。
 朝日新聞は6日、4面で「選挙協力解消「見直さず」 公明・山口代表 東京以外では連携」という見出し。東京での自公の選挙協力解消について触れたうえで講演のことを取り上げ、解散については(選挙をすれば)「政治空白が1カ月以上できる」「「国民に信を問わなければならない課題が出れば、(岸田文雄首相は)決断しなければならない」とも主張した。」と解散に慎重と受け取れる発言と、解散に前向きと受け取れる発言の二つを併記した。

 3紙目は日経新聞朝刊。
 日経新聞は6日、同じく4面で「与党、早期解散観測相次ぐ 首相「終盤国会は緊迫」選挙区調整急ぐ」という見出しで岸田首相や自民党内の解散に備える動きを報じた後、山口代表の講演について触れた。「一方、与党内には早期解散に慎重な意見もある」と始め、「選挙になると政治空白が1カ月以上できる」「任期満了でいいという声が出るのは自然」と山口代表が話したことを挙げ、解散に後ろ向きである様子を書いた。そこから、東京の選挙区で自公が協力解消したこと、自公連立について「頭冷やして」という山口代表の言葉を並べてから「「やるぞと決断すれば受けて立てるような備えをする必要がある」と述べた。」と締めた。

 4紙目は毎日新聞朝刊。
 毎日新聞は6日、5面で「「自公は頭を冷やして考えるべきだ」 山口代表都内で講演」という見出し。「10増10減に伴う候補者調整」などを挙げて自公の関係修復は見直せていないとし、解散についての山口代表の発言は「コメントは控えるようにしている」「抜き打ちでやることはないと信じている」というものを取り上げて、公明党は解散に後ろ向きだという報じ方をしていた。「受けて立つ」という発言は取り上げていなかった。

 最後に読売新聞朝刊。
 読売新聞は6日、4面で「大田区都議補選 滑り込み当選自民焦り 協力解消「公明票乗らず」」という見出しから、4日に執行された大田区都議会議員補欠選挙について触れた後「早期解散けん制 公明・山口代表」という小見出しで公明党の動きに触れる。山口代表が5日、国会内での講演と党会合に出席したことを取り上げ「公明は早期の衆院解散総選挙に反対して」いると報じた。
 さらに7日の4面では「早期解散巡り 高まる緊迫 公明一貫して反対」という見出しで、もう一度5日の山口代表の講演を取り上げ「「抜き打ちでやることはないと信じている」と首相をけん制した」と言及。6日に行われた記者会見での「解散による政治的空白は避けるべきだと訴えた」という山口代表の発言、また、公明党支援者の選挙疲れがあることも併せて報じた。

 同じ人物、講演会を取材したのに5紙で山口代表および公明党の「早期解散」に対する見解のとらえ方は異なっている。
 産経は、山口代表が早期解散に前向きであるという報じ方。朝日新聞は前向き・後ろ向きと捉えられる両方の発言を報じ中立的。日経は「受けて立つ」という発言を載せたが、公明党は解散に慎重で自民党との関係も危ぶまれるというような内容に多く文字を割いていた。毎日は、公明党は解散に後ろ向きという報じ方。読売は直截簡明に、公明党は早期解散に「反対」とまで言っている。

講演の動画を見てみると…

 どの紙が一枚上手に公明党、および山口代表の思惑を捉えているのか。
 山口代表の講演記者会見の様子は公明党の公式YouTubeチャンネルで全編視聴することができる。

 講演の動画を見てみると、「解散総選挙は世論調査とかを見ると、任期満了までしっかりやってから選挙やるべきって声が強いと思うが、あるべき解散総選挙の時期というのがどのへんか教えていただきたい」というテレビ朝日の記者の質問に対して、「ごくごく一般論ですけど」との前置きをして「世論調査で解散はいつか聞くとよほどのことがなければ、ちゃんと任期は全うしなさい、そう(世論は)なりやすい」「政治空白が丸1カ月以上できます」と山口代表は答えていた。
 そうして一般論を述べた後、「しかし」と強調し「やはり国民に信を問わなければならない課題が出れば、解散権を持っている人は決断をしなければならない」「自民党の総理総裁の方々と話しているときに感じたのは「勝てるときに選挙やんなきゃなんない、勝てるときをつくっていく」絶えずそういうことを念頭に置き政権運営をされている。その良い意味での責任感、緊張感を感じてきました」と山口代表は話し、自民党内にくすぶる早期解散論を支持しているようにとれる。

 つまり、「任期は全うしなさい」や「政治的空白ができる」というのは「山口代表の見解」というよりは「世論の見解」で、その発言を根拠に「公明党は解散に後ろ向き」と報じたのはいささか的外れな感じがするのだ。
 私が受けた印象では、山口代表は早期解散にかなり前向きな感じがするのだが、どうだろう。

 時間があれば動画を視聴し「山口代表の解散への考え方」を自分なりにそれぞれ考察してみるのもよいかもしれない。また引き続き各紙の「衆議院解散」についての報じ方も、野次馬気分で注目していきたい。

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