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議会ハシゴのススメ


選挙漫遊も一段落し、9月。(もう10月だけど…。)

9月と言えば、皆さんは何を思い浮かべますか。

そうです。9月定例会ですね。

9月と言えば、9月定例会なんです。


地方議会で年4回ある定例会。その第三回目の定例会が開会されるのが9月。

ということで、今まで漫遊してきた地方選挙、その選挙で当選した議員の方々が登壇する9月議会(&私が住んでいる場所から近い市町議会)をハシゴしてきました。

今回は、そんな議会傍聴をしてきて、皆さんが「ちょっと傍聴に行ってみようかな」「なんか面白そうだな」と思えるような「私的、議会傍聴マニュアル」を考えてみました。


と議会傍聴の前に、まずは準備。

備えあれば、議会傍聴はもっと楽しくなる


準備① 議会の日程をおさえる

定例会では、委員会、予算審議などいろいろなことが行われるが、私が目を付けたのは「一般質問」。議員それぞれが重要だと思っている課題、政策に関して質疑を行う。

一般質問なら、議員の方の個性が分かりやすかったり、どんなことに問題意識をもって、どんな構成で話を進めるかということにも注目出来たりするので、一般質問が行われる日程を調べた。

日程は各自治体の議会HPに掲載されているので議会HPにアクセスするか、「○○議会 日程」でググれば、何日の何時から議会が開会するのか知ることができる。

準備② 撮影したインタビューや街頭演説を見返す

傍聴することの一つの意義として、私たち市民の代表である議員が選挙期間中に話していた公約を実行しているか、しっかり働いているかを監視することがあると思う。

そのために、選挙期間中に現職議員の方たちが言っていたことを確認し、実際の議会での発言と比較するために、YouTubeに上がっている街頭演説の動画を見返してみた。(もちろん私のチャンネルで。)

私の場合、選挙漫遊中は、撮影すること、なるべく多くの立候補者に会うことに集中していて、候補者の政策、主張がしっかり頭に入っていないことが多々ある。これまでの復習も兼ねて動画を見返して「こんなことをやっていきます」という政策をノートにまとめてみると、他の議員の政策との比較や選挙結果の振り返りもできた。

準備③ 議会傍聴七つ道具

議会傍聴をする際には、特にこれといった身分証明書や、議員の紹介状などが必要になるわけではない。

基本手ぶらで気軽に傍聴できるが、議会傍聴を楽しむために、私は「議会傍聴七つ道具」を持参することにしている。

①    メモ帳

議員の質疑内容、傍聴していて気になったことをメモするために必須。

②    筆記用具

紙だけあってペンがなかったら、何も書くことは出来ない。

③    選挙期間中にもらった証紙ビラ

証紙ビラには、「議員になったら、こんなことをやります!」という公約が、わかりやすく書かれている。そのビラに書かれていることと、議員が質問していることが、合致しているか、繋がりがあるかを見るためにビラを持っていくことが大事。

④    選挙公報

選挙期間中にしか配られない証紙ビラを全議員分手に入れることは難しい。中には、証紙ビラを作らない候補者もいる。だが、選挙公報なら全候補者の情報が載っているし、選挙後にも選挙ドットコムなどからダウンロードできる。

(選挙公報は、各自治体のHPからダウンロードできるものだと思っていたのだが、どうやらHPに公報を掲載しているのは選挙期間中だけらしく、この文章を書く際に各自治体のHPで選挙公報を探してみたのだが全く見当たらない。やっと、「あった!」と思っても4年前のものだったりする。選挙期間中から継続して、選挙公報をHPに掲載することって出来ないのだろうか。)

⑤    質問通告書などを入れるファイル

議場の受付では「質問通告書」といって、各議員の質疑内容の要旨が箇条書きされた用紙が配布されている。通告書を大切に保管しておきたい方には、ファイルを持参していくことをおすすめする。

⑥    飲み物

議場での飲食は基本禁止されているが、休憩時間に議場外で水分補給をするために飲み物は必須。

⑦    チョコレート

議員の質疑内容は多種多様。集中して傍聴するために適度な糖分補給を。こちらも、議場での飲食は禁止されているので、議場外で。

(「選挙七つ道具」になぞらえようとして無理やり7つにした感があふれ出ている…とかそう思ったそこのあなた。…ご明察の通りです。よくわかったね。なんとか温かい目で見守っていただければ幸いです。)

準備が完了したところで、いざ出発!

いざ、議会ハシゴへ行かん

議会傍聴は眠くなる…?

私が初めて議会をみたのは、インターネット中継だった。

画面越しに議員の方が話しているのを聞いていると、専門的な言葉が使われていたり、私が普段接することのなかった分野の話がされていたりして、眠くなる。しかも、質問する議員の顔と、答弁者の顔が切り替わるだけの単調な画面である。眠くなる。絶対、必然的に、眠くなる。

だが、実際に傍聴に行ってみると景色が変わる。

傍聴席からは、自分以外に傍聴に来ている人、市の職員の顔ぶれ、質問をしていない議員の振舞、質問時間をカウントする時計、その他議場の設備など、様々なものが見えてくる。

そんな議会傍聴をする際に、私が注目していたポイントをこれから挙げていく。

これらのポイントに注目すれば、傍聴に全く興味がなかったあなたも、いままで欠伸をこらえて議会傍聴をしていたあなたも、以前から傍聴を楽しんでいたあなたも(より一層)、前のめりになって議会傍聴ができるはずだ(きっと!)。

注目ポイント① 傍聴に来ている人は…

傍聴しているときに、周りをチラチラ見てみたり、傍聴時間まで待合室で待機している方を観察してみたりするのも傍聴の醍醐味だ。(いや、私は決して不審者とかではなくって、傍聴の面白さとか、政治の面白さをたくさんの人に知ってもらいたいという思いがあって、周りをじろじろ、もとい、チラチラ見ていたのであって、決して不審者とかではなくって…。)

傍聴には、元議員や、現職の支持者、選挙スタッフ、議会議員選挙に立候補した方など、いろいろな人が来る。

(私は、選挙漫遊中に会ったことがある方々と再会して少しお話なんかもした。顔を覚えてくださっていたようで、なんか嬉しい。)

また、その年齢構成に注目してみると、議会傍聴の問題点も見えてくる。

私が見た感じでは、傍聴している方はどちらかというと高齢の方々が多く、若い方で傍聴している人は数人だった。仕事をしている「現役世代」には日中に行われる議会の傍聴は、かなり困難なのだと思う。

注目ポイント② 執行部から見えるガラスの天井

先ほどは年齢構成に注目したが、今度はジェンダーバランスに注目していく。

議員のジェンダーバランスから考えられることは、言わずもがな多くあると思うが、ここでは、議会傍聴を実際する際の注目ポイントということで、普段、勢ぞろいしているところをあまり見ない、答弁をする職員・執行部のジェンダーに注目してみる。

議員の質問に対して答弁するのは市長や町長といった政治家だけではない。各分野の専門的な内容には 、それぞれ、教育長や財務部長、福祉部長など、管理職に就いている市町村の職員が答える。その職員のジェンダーバランスから日本の自治体のガラスの天井が見えてくる。

私がハシゴした市町の執行部の男女比をみてみると

秦野市 21人中19人が男性 女性割合9.5%(傍聴日10月12日時点)
大磯町 22人中20人が男性 女性割合 9.1%(傍聴日9月8日時点)
厚木市 32人中30人が男性 女性割合6.3%(傍聴日9月11日時点)
沼津市 22人中21人が男性 女性割合4.5%(傍聴日9月27日時点)
長泉町 13人中13人が男性 女性割合 0%(傍聴日9月7日時点)
(※女性割合の数字は少数点第2位を四捨五入したもの)

もう、なんだか、ため息が出てくるね。

私の住む長泉町に関しては女性0人よ。0。

もう、なんだか…。


そういえば、先日妹に、第二次岸田第二次改造内閣で副大臣と政務官に女性が1人もいない写真を見せたら、「臭そう」と一言。

一瞬、その「臭そう」という言葉の意味が分からずキョトンとしたのだが

「あぁ!そうか!写真に並ぶのは中年(というか高齢…?)臭漂う男性議員たち。その平均年齢は52.7歳。(2023年10月6日時点。参考:wikipediaと国会議員要覧)「50代半ば以降から本格的に発生」すると言われる加齢臭が、確かにぷんぷんしそうだ!」

中学生の妹から発せられた「臭そう」という鋭い一言に失笑した私。

その妹が大人になる日には、議場も総理官邸の階段も加齢臭が、ぷんぷん臭わないようにしていかなければ。

今は議会をウォッチして、気づいたことをまとめていくことしかできないが、それは加齢臭をぷんぷん臭わせないために必要な1歩になると思う。

注目ポイント③ 質問をしていない議員の振舞

YouTubeで国会議員が会議中に居眠りをしていたり、読書をしていたり、通販サイトを見ていたり、ワニの動画を見ていたりする場面を見たことがある方も多いのではないか。

地方議会でも、発言をしていない議員のほうに目を向けてみるのは大切だ。

一般質問が行われている最中に傍聴席から議席をのぞいてみると、メモを取ったり、タブレットで質問通告書に目を通したり、質疑を行っている議員に耳を傾けていたりする議員をよそに、電卓を使ってなにやらレシートの整理をしている議員や、チャット画面を表示してPCを操作している議員、目を閉じている議員(いや、目が大きい方ではなかったり、目を細める癖があったりするだけかもしれない…!)もいる。

(傍聴席から遠目で見ていたので、実際に何をしていたかの詳細はわからなかった。傍聴が終わった後、議員に直接聞きに行けばよかったのだが、そこまで機転が回らなかった。これは反省。次回からは、気になったこと、気づいたことは聞きに行こうと思う。頑張る。みなさんもぜひ。)

注目ポイント④ 質問の持ち時間

一般質問をする時間は、もちろん無制限にあるわけではない。限られた会期中、質問をしたい議員が全員、平等に質問できるように一人当たりの持ち時間が決められている。

議員が、その時間をどう使って質問していくか、ギリギリまで質問時間を使う議員、短い時間で質疑を終わらせる議員など、ここも注目ポイントのひとつだ。

注目ポイント⑤ 往復or片道方式

その質問時間だが、議会によって、往復方式を使っている議会、片道方式を使っている議会と分かれてくる。

そもそも往復方式、片道方式とは何か。

往復方式とは、「答弁時間を含めた形で質疑時間を割り当てる方式」。
(引用:国会キーワード109)

例えば、大磯町議会では一議員に80分の質問時間が与えられる。その80分間、議員が質問しているときも、町の職員や町長が答弁しているときも、時計のカウントは止まらない。

国政では、衆議院の予算委員会でこの往復方式が使われるが、そこでは答弁者である大臣などが質問に的外れなことを冗長に話したり、同じことを繰り返し言ったりして、質問をする議員の質問時間を削るという「技」を披露することもある。

一方、片道方式は、「答弁時間を含めない形で質疑時間を割り当てる方式」。

長泉町の議会は一議員に45分の質問時間が与えられるが、答弁者が話している間は、時計のカウントがストップする。

国政では、参議院の予算委員会で原則使われており、前述した質問時間を削る「技」が無効化する。

注目ポイント⑥ 議場の設備

議場は、どの市町でも基本的な設計は同じで、議席があり、(答弁する職員らが着席する)執行部席があり、傍聴席がある。だが、それ以外の設備ではいろいろな違いがある。

たとえば、先ほどの注目ポイント④、⑤では質問時間のことを書いたが、その質問時間が表示される時計

長泉町では、ディスプレイに秒単位で時間経過が表示されるが、厚木市、秦野市では分単位で時間が表示され、残り一分を切ると秒単位でカウントが始まる。また、大磯町では、多くの議場に設置されているディスプレイがなく、質問をする議員の手元にキッチンタイマーが置かれている。時間が過ぎると「ピピピピッ!ピピピピッ!」という聞き馴染みある音が聞こえるのだ。(大磯町議会では、ディスプレイを設置する環境が整っておらず、議員が質問時間を把握するためにキッチンタイマーを置いているのだそう。)

時計のディスプレイでは、ちょっと出遅れている(?)大磯町だが、大磯町の議場にはプロジェクターが設置され、議員が一般質問に使う資料が大きく表示されるのだ。(例えば、特定の建造物に関する質疑であれば、その建造物の写真が、財政に関わる質疑であれば、各種費用が書かれている表が、プロジェクターに表示されていた。)

私が傍聴してきた議会でプロジェクターがあったのは、大磯町議会と、秦野市議会の2議会のみ。紙の資料の貸し出しをしている議会は他にもあったが、そういったプロジェクターで、傍聴席からも写真や表などがみられるようにしている議会は少なく、この点大磯町議会と秦野市議会は一歩リードしている。

一歩リードしているといえば、長泉町議会のAIによる音声認識システムがある。

傍聴席の両端にそれぞれ1台ずつモニターがあり、発言者の音声を文字に起こして表示する。

ジェンダーバランスでは著しく劣っている長泉町だが、今年(令和5年)6月定例会より導入されたこのシステムのおかげで、聴覚に障害を持つ方にも傍聴が開かれたものになったのだ。

このシステムは、聴覚障害を持つ方だけでなく、耳慣れない言葉、専門用語が出てきて「なんて言ったんだ?」と疑問に思うことがある私のような傍聴者が、発言を確認することもできるから、非常に便利だ。

このほかにも、議場に「車椅子を使用している方が入れるようになっているか」、議会を傍聴していて気になったことをメモしたり、資料を閲覧したりするとき便利な「机があるか」(私が傍聴に行ったことのある議会では椅子が設置されているだけのところが多かった。)などの注目点や、某議会の受付には「環境省「名水百選」に選定されている名水で入れた麦茶です。どうぞ召し上がってください」という紙が貼ってあって、麦茶が提供されている(私はタイミングを逃して飲み損ねてしまった。また12月の定例会を傍聴しに行ったときに飲みたい。)など、それぞれの地方議会の特色もたくさんあった。

長者の万灯より、ひとりひとりの議会傍聴


これらの注目ポイントは、実際に議場に足を運び、傍聴しなければわからないことが多い。

だが、ほとんどの議会は平日の日中に行われるから、仕事をしていたり、学校に通っていたりする方々には傍聴の機会が閉じられている。(一部の議会では「夜間・休日議会」の開催をしているところもあるみたい。)

私のように、いろいろな議会をハシゴするなんてことができる人は、きっとほとんどいないはずだ。

でも、自分が投票した議員の一般質問を聞きに行く、学校や仕事終わりにYouTubeでゲーム実況を見たり、テレビでバラエティー番組を見たりする代わりに、インターネット中継で議会の様子を見る、そんなふうに私たちの代表が私たちの暮らしのために発言しているところ、しっかり仕事をしているかを見るのは大切だと思う。

政治は、私たちの暮らしを豊かにするために、今苦しんでいたり、しんどさを抱えたりしている人に寄り添い、困難を解消していくためにある仕組みだと思う。

でも、そこに私たちが関わらなければ、関心を失えば、政治は特定の人のためだけに動く仕組みになってしまう。

政治とか、選挙とか、議会とか、やっぱりまだまだ、とっつきにくいし、いざその世界に耳を傾けてみても自分ごととして興味を持てなかったり、「つまんないな」と感じたりすることって結構あると思う。(私も、財政の話とか、道路建設の話とか、あまり関心がない話が出てくると睡魔が押し寄せてくる。)

でも、そんな政治を身近に感じられたり、「なんか、面白そう!」って思えたりする人が増えてくれば、私たちが暮らす世界は、もっと豊かで多様で心地よくなっていくんじゃないか。だから、そのためのきっかけ作りとか、お手伝いが私にできたらいいな、なんて思いで「議会ハシゴのススメ」を書いてみた。

冒頭にも書いたが、この文章を読んで、「傍聴に行ってみようかな」と思ったり、自分の住んでいる市町村の議会のページをググったりする人がいたら、嬉しいなぁと思う。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

次回の地方議会開催は、12月の定例会!


後記


今回は、議会の設備や仕組みの話が多く、一般質問に関する内容を書くことができなかった。
本当は、それぞれの議員の一般質問の注目ポイントとか、「面白い!」って思ったところなどをまとめたかったのだが、体力と気力がもたず断念。
(ちょっと、めんどくさくなっちゃった。)
次回の12月定例会では、一般質問を傍聴する際に使えるような「傍聴ノート」を作っていくこと、一般質問を終えた議員の方に、インタビューをすることなどを構想中。
そんなかんじで、ゆる~くやっていくつもりですので、よろしくお願いします。

おしまい。


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