ポルターガイストは出ない

 寒くなってきていよいよ受験生は自覚をもって勉強をうんぬん。生徒たちもプレッシャーでストレスが増してこれまで起きなかったことが起きてくるかもしれません。
 と、担任が言った。担任はイケボである。PTAでの担任の先生のお話である。
 ポルターガイストのことだ!
 とKは瞬時に察した。受験生のプレッシャーでこれまでに起きなかったことが起きる!と言えば、ラップ音が鳴り、本やノートが宙を舞い、カッターやらコンパスの尖ってる方が飛んできてギャー!のやつじゃないか。
 出るのか?それ、うちにも出るのか?Kは俄然ワクワクしてきた。
 そんなことがあったら遠慮なく担任までご相談ください。とイケボが言った。ポルターガイストの退治までできるの?マジで?
 脳内にゴーストバスターズ的なものがよぎる。ポルターガイストならゴーストバスターズというよりはエクソシストか。どっちでもいいです!
 妄想がすぎる。
 しかしイケボ先生は言った。急に小さい頃のおもちゃで遊びだしたり、歩き回ったりするのは退行です。逃避はテスト前にいつもはやらないこと、急に掃除を始めたりマンガを読み出したりすることを言います。
 なんだ、ポルターガイストじゃないのか。
 Kがっかりしたが、Lは近頃、昔買ったドラえもんを読んでいるので、あれが退行かとよぎったが眺める作品が一周回ってドラえもんなだけかもしれない。ならば逃避か。「ねじの回転」を一気に読むとか逃避による奇行と言える。
 小説などロクに読まないLだが、読み出したら止まらなくなったらしくMが借りてきた流行りの5分で読めるやつを読んでいる。
 あまり奇行感がない。
 奇行ではないのかもしれない。
 あの個人面談以来、朝パニックを起こし遅刻寸前でクルマで乗り付ける明らかな奇行はなくなったから、既に退行は起きて解消されたとも言える。勉強せずに本を読んでいる分にはKは困らないので問題はない。
 従ってゴーストバスターズもエクソシストも召喚不要だなあと残念に思うのであった。