🎩BLワールド備忘録🌹コミック編

『カリフォルニア物語』
吉田秋生
1978年別冊少女コミック

「いいなぁ、カリフォルニア！
青い空と海！絵はがきで見たんだ。ヨットとカモメと…🎶」
イーヴは羨望の眼差しでヒースを見た。無邪気な表情に無性に腹が立った。

「カリフォルニアだって、いいことばかりじゃない」

父との確執、兄へのコンプレックス、ランナーとしてのプレッシャーと限界。悪友たち、ドラッグと言う地獄。すべてからぬけだすためにヒース・スワンソンはニューヨークへと旅立った。

テキサツで出くわしたスリの少年イーヴ・ルチアーノはヒースがカリフォルニアから来たと聞いてひどく羨ましがった。巻き毛でちょっとオツムの弱いイーブはヒースの後をくっついて回った。
いつの間にか一緒にニューヨークで暮らすことに…。

ニューヨークで市民マラソン大会が行われると聞いて、イーブが一緒に走りたいと言い出した。

走り方を教えるうちにかつて投げたしたランナーの本当の楽しさに気づくヒース。
気づけばカリフォルニアでの自分の過去までもイーブに話すまでになっていた。

貧しさで男娼をしていたとヘラヘラ笑いながら話すイーヴ。
最初はその無邪気さにイライラしたヒースだったが、いつの間にか字の読めないイーヴに読み書きを教えることに。

「おまえさん、柔らかくなったな。初めて会った頃は野生の猫みたいにピリピリしてた」
大家のインディアンに言われて自分の変化に戸惑うヒースだった。

ごろつきのブッチの片棒を担がされたイーヴが銃弾を受けて倒れた。ヒースは稼ぐためにゲイの相手込みのウエイターの職を見つけるが、そこでリロイと言うバイセクシャルの男と出会う。

身分証にストレートかゲイかを書き込まなければいけないニューヨークの街。男娼目当ての客相手の店など珍しくもない。

金のためにと割りきったつもりが、尻を撫でられただけで逆切れし、客を怒らせてしまう。  
こんなことをイーヴは幼い頃からやっていたなんて…。
やりきれなさに途方にくれるヒース。

イーヴが姿を消した。
「あたしが悪いのよ、あんたはヒースが好きなんでしょって言っちゃったの」 恋人のスウェナが唇を噛んだ。

✨✨✨✨
溝口彰子氏のBL進化論において
創世記にあたる1978年から別冊少女コミックに掲載された名作。
まだ、BL（ボーイズラブ）という言葉さえなかった時代。

日本人には特別な意味をもつゲイの存在を社会の一端と捉えているニューヨークを舞台に「特別」ではなく「そこにある事実」として淡々と描く。
これが1978年に少女漫画誌に掲載されていたことが、すでにコミック界におけるレボリューションと言える。

「男娼はおれの趣味みたいなもんさ」と言えるアレックスや「それも商売だ」と割りきるリロイ。彼らがゲイになったキッカケはそれぞれに辛いものだ。
アメリカでも田舎にいけばゲイの息子を更正させるために軍隊に放り込む父親がいる。
果たして軍隊には、ストレートの者でもその道に引きずり込まれる罠がある。

そんな社会の歪みをきちんと描く。映画化にして、もっと多くの大人たちにも観せるべき内容の作品。

さて、イーヴの気持ちを知ってしまったヒースは何を思うのか？
彼の選んだ道とは…⁉️

クライマックスは切なすぎる。
号泣必至。
吉田秋生先生にリスペクト💘

後に発表された『BANANA  FISH』の原型とも捉えられる作品。

カリフォルニア物語 文庫版 コミック 全4巻完結セット (小学館文庫)