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大豆に含まれる、「ミネラルと結合する物質」とは

以前、「豆乳は危険だ!!」の記事に対する科学的反論として書いたブログで、大豆がタンパク質の吸収を阻害するという説を否定した。

さらにもう一つ追加で書いておきたいのが、ミネラルと結合する物質である「フィチン酸」の影響についてだ。フィチン酸の含有量は豆腐の製造にも影響してくる。

フィチン酸について

フィチン酸は、大豆中に含まれるリンの存在形態の一つで、大豆中に含まれるリンの約80%はフィチン酸として存在することが分かっている。フィチン自体は大豆中に2~3%含まれている。

フィチンの大きな特徴の一つとして、金属類と強く結合する性質が挙げられる。例えばフィチン酸と鉄や亜鉛を一緒に摂取すると、フィチン酸は金属類と結合するため、一緒に摂取した金属類(この場合、鉄や亜鉛)は体内への吸収が阻害されることになる。
大豆にもフィチン酸は含まれており、金属類もミネラルとして存在するので、大豆を原材料とする豆乳や豆腐ではミネラルの消化吸収はフィチン酸によって若干阻害されることが報告されている(Hambidge et al., 2004)。

フィチン酸は害悪なのか?

フィチン酸はミネラル成分の吸収を阻害してしまうことは事実だが、本当にフィチン酸は害悪かというと、そういうわけではない。むしろ生体にとってプラスに働く効果も多く報告されている。

例えば、金属類を補足する働きを持つことから、体にとって不必要な重金属類を補足して、体に吸収されるのを防ぐ効果がある(Vucenik et al., 2003)。
また、フィチン酸自体は胃や小腸上部から素早く吸収されることが最近わかっている。フィチン酸は吸収されて脳や腎臓・肝臓、骨に運ばれ、脳を中心とした情報伝達だったり細胞の分裂・分化に重要な役割を果たす。
さらに、乳がん・大腸がん・肝臓がん・白血病・前立腺がん・皮膚がんなどの各種がんに対しても抗腫瘍活性を持つことが示されている。

フィチン酸によってミネラル成分の吸収が阻害されるとはいっても、大量に摂取しなければ特段問題はないので、総合的に見たら人体にとってプラスの面が圧倒的に多いように思う。

フィチン酸が豆腐製造に与える影響

さて、フィチン酸は豆腐を製造するときにも影響を与える。それはなぜか?
ヒントは、「ミネラル成分と接合する」という性質。

豆腐を固める際に添加する凝固剤は、主にカルシウム(Ca)だったりマグネシウム(Mg)というミネラル成分となっており、これらのミネラルが水に溶けてイオンになることによってタンパク質と反応して凝固反応が起こる。
※タンパク質との反応までの流れはこんな感じ。↓

CaやMgが水に溶ける

CaやMgが水中でイオンになる(二価の陽イオン)

イオンになったミネラルがタンパク質と反応

タンパク質同士の反発力がなくなり、結合しやすくなる

で、ここにフィチン酸が存在すると、CaやMgがタンパク質と反応する前にフィチン酸に補足されて、タンパク質に関与できるイオンの数が減って足りなくなってしまう(Ishiguro et al., 2006)。

最後に

フィチン酸の多い大豆を使って豆腐を作るときは、凝固剤の量を多めにしないと凝固が弱くなってしまうということになる。
こんなところにも豆腐の品質を決める要素があったとは、豆腐は改めて奥が深いなあと思う。
(43週目終わり)

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