2022年4月30日 読書など記録
21世紀の道徳
信じられないくらい読み易くて、なおかつ地に足付いた説明で、しかも亜tらしい知識や視点をもたらしてくれるすごい本。あまりにも読み易すぎるせいで、無根拠な違和感をかなり感じた。
人文学の専門家が生活をかけて取り組んできた思索はこんなにシンプルに説明できて、こんなにシンプルに反論や批判がされてしまうものなのか? 自分の感覚にそぐわない。
とても失礼な話ではあるけれど、この本の著者がよほどいい加減なことをしているか、さもなくば人文学の専門家は驚くほど無能なのか、そのどちらかなんじゃないか……そんな風に猜疑心が湧いてしまった。
それにしてもこの本は読みやすくてしかも面白いので、まさに大学生向けと称して申し分ないと思う。高校生向けと称するには難しすぎるけど、"大学生向け"を探して読もうとする大学生にはまさにうってつけな――素晴らしい本だった。
輪るピングドラム
(劇場版を見てきたけど、実質的にテレビ版への感想の範疇)
食事が粗末にされるシーンがめちゃくちゃ多い!(気づき)
鍋が出てくれば必ずぶちまけられるし、スイーツが出てくれば大抵薬物を盛られる。そんなこんなで2時間の上映時間中で10回くらいは食事が粗末な扱いを受けていたと思う。
後半パートでは飢餓(企鵝)がテーマになるから、それに関連して意図的にやってることなんだろうか……でなければ、わざわざ劇場版で食事台無しシーンを全部盛り込むなんてことはしないはず。
ドミニオン
ドイツなんとか賞をいくつも受賞したボードゲームの金字塔!
ドミニオンはわからないけどTCGはわかる人向けに説明すると、Slay the Spireのように自身のデッキを強化しながら勝利点を集める対戦ボードゲーム。
とても面白いしゲームとしてもよく出来ているんだけど、説明するとあまりにもわかる人向けになりすぎるからまたの機会にしようかな……。対戦相手を妨害するカードはすべて「全ての対戦相手は~」なので、特定のプレイヤーを狙い撃ちにする必要がなかったり、対戦相手の手番に行動を求められることが少なかったり、わかる人にはわかる部分で遊びやすい作りになっている。
中でも特にわかる人向けなGoodポイントは、山札がなくなると墓地をシャッフルして山札に再利用するシステムで、山札と墓地の枚数は確認可能だけど墓地の中身は確認不可能。つまりどのカードが墓地にいて、どのカードが山札に眠っているかは暗算しないといけないところだ。カードゲーマーに墓地確認を許すとテンポが悪くなる。よくぞ気づいた! それはそう!!
ALI PROJECT
ローゼンメイデンのOPを歌ってた人!
あらためて聞きなおしてみたら歌詞がとても良いことに気づいた。歌詞のメロディーやテンポや韻に注目して聞いてみると、もちろんユニークな上にとても気持ちいい。"極色の楽園 独裁者の庭園 時は一千一夜 魔の都"の気持ちよさ、病みつきになっちまうよ……。
(ピアノアレンジのcoverの方が公式より歌詞に注目しやすいので)
一方で歌詞の意味はと訊かれたら、これは「僕にはよくわからない」と開き直るのがいちばん誠実かもしれない。日本語の文章としてストーリーや暗喩があるというよりも、雰囲気バツグンな単語が綺麗に並んでいるという強くて――ゴシック・ホラーやゴシック・ロリータの文脈を知らない自分が理解できるというのは烏滸がましいんじゃないかと思う。
自分のような「グランギニョルってなんだよ。アリプロの歌詞でしか聞いたことねえぞ(wikipediaは読んだけど)」って人間が語っていいものではない。よくわからない歌詞はよくわからないと言ってしまっていいのだ。
烙印(遊戯王OCG)
連載中の遊戯王OCGのオリジナルストーリー(武藤遊戯とかが関係ないやつ。モンスターカード同士の物語)の命名がとてつもなく面白かったので紹介。
ファンタジーに登場する『帝国』と『教団』はだいたい腐敗している――その両方の性質を備え持つ、この教導国家ドラグマもまた例外ではなく、案の定、表では啓蒙のフリをしながら裏では闇の力で人々を洗脳していた。《教導の〇〇》と名の付いたカードを擁するこの集団の真の姿は、悲喜劇がモチーフの闇の集団デスピアだ。
時空の穴から落ちてきた記憶喪失の主人公アルバスは、仲間と共鳴してドラゴンに変身する能力を持っていて、ヒロインや他部族の仲間たちと冒険しながらデスピアと対峙する。
……といった風に、いかにもファンタジー作品にありがちなストーリーを踏襲しているから、固有名詞が多くても理解しやすいあらすじとなっている。
この物語の、ドラグマ陣営のネーミングセンスが凄い!
ドラグマという名前は、当初はドグマ+ドラゴンだと考察されていたけれど、蓋を開けてみればドラマ(劇)もきっとかかっている。物語にたびたび登場する時空の穴は、わざわざ"ホール"という固有名詞?の用語を与えられていてこれが劇場のホールとかかっていると指摘した人もいる。
中でも一番驚いたのはこのカード、《教導枢機テトラドラグマ》だ。
非公式ながら公式以上の情報量を誇るwikiにもこんなふうに記述されていて、実際、これまでに登場したカードからキリスト教が元ネタで"テトラ"とくればテトラグラマトンが連想されることはデュエリストの脳内に刷り込まれている。
その上で、このカードのテトラはテトラグラマトンだけでなく、シアター(theater)もかかっているんだから本当に驚かされる。
君がファンタジー一次創作を書いていたとして、テトラグラマトンまでは解読されることを前提にダブルミーニングで命名できるか……!? デュエリストへの信頼が厚すぎやしないか……!?
最近の遊戯王カードは厨二っぽさもさることながら、モチーフや元ネタのマニアックさもどんどん深みを増しているので、ただ単にカッコいいドラゴンやデーモンの時代とはまた違った魅力がある。
生態学用語がモチーフのやつとかいるし……。
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