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『銀色』二章から見る日常の美しさ

  今回は生贄少女日本代表である『狭霧』について書きます。
 二章のヒロインである狭霧は明るく元気だけれどポンコツな一面もあってとてもかわいい。銀色の中ではダントツで好きです。銀色のヒロインは時代設定のせいか、『清貧』という言葉が似合うような子が多い。貧しく、学もないけど懸命に生きているような健気さが良い。

 二章は『当たり前にある日常』を全面に押し出していて、朝の掃除の音や朝食を作る包丁の音で目を覚まし、狭霧と談笑しながらご飯を食べる。前半ではそういった繰り返しの日常が描かれています。ポンコツ狭霧との生活が穏やかで心地よい。

 しかし狭霧は数日後に里の生贄として捧げられることが決まっていました。自分は死ぬと分かっていながら、今まで通り家事をこなし笑顔で生活を送る狭霧の健気さに胸が痛い。今まで当たり前にあった生活が永遠には続かないものだと実感します。
 そして最期の夜、二人は身体を重ねます。お互いの体温を知り、『生』を確かめ合う二人が切ない。明日には死んでしまうからこそ『生』が儚く光り輝いて描かれます。

 自分が死ぬ最期の日まで掃除を欠かさなかった狭霧。たとえそれが無意味で空しいことであっても、それが生きていく上で大事なことなんだと感じさせます。
 狭霧は毎晩、里の皆の幸せを願って琴を弾きます。もはや精神性が女神。時折、指を組む仕草をするのがより聖母マリアを彷彿とさせます。少女の自己犠牲と祈りって美しいですよね。

これは狭霧との出会いのシーン。今思うと散りゆく桜と自分自身を重ね合わせていたのかもしれない。

 銀色のBGM『夕化粧』がとても悲しい音色で好き。忘れないようメモ。

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