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『Kanon』名雪が傍に居てくれたらいいのに

 悲しくて落ち込んでいる時、名雪のような子が居てくれたらいいなと思う。暗い部屋に一人きりで閉じこもっていても、名雪はきっと閉じた扉を開けて「真っ暗だね」って笑って何も聞かずにただ傍に居てくれるから。

 主人公がつらい事に気が付いていても、相手が話したくないのなら余計な詮索はせず傍に居てくれる名雪の優しさが好きだ。それと同時にすごく強い子だと思う。自分の大切に思っている人の苦しみに気が付いていたら手を差し伸べたくなるのが普通だ。だけど彼女は安易に他人の心に踏み込んではいかない。あくまで相手から何か助けを求められるまで待つ。ただひたすら信じて待ち続ける強さを彼女は持っている。名雪の魅力はそんな『奥ゆかしさ』にあるのだと思う。

 そんな彼女も作中のある出来事で心が折れてしまう。けれども彼女を絶望から救い出したのは彼女を信じて待ち続けた主人公の思いだった。大切な人がいなくなってしまった過去を持つ彼女にとって、「ずっと一緒にいる」という主人公の誓いがどれだけ安心できるものであったか。一人で悩みを抱え込んでいる時に誰かが傍に居てくれること、待っていてくれることでどれだけ救われるだろうか。

 思えば名雪ルートはお互いに待って待たされての物語であった。それは物語の大筋だけでなく、例えば朝の遅刻ギリギリであっても寝坊した名雪を待って必ず二人で走って登校するような他愛無い日常からずっとそうだった。だからこの物語によって二人の関係性が大きく変わったわけではない。彼らは初めから、それこそ7年前の別れの日から何も変わっていないといえる。そしてずっと変わらない思いを持っていられたことが嬉しいと名雪は語る。二人の愛は名残雪のように冬が終わっても変わらずに降り積もるのでしょう。


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