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僕が初めてプレイしたエロゲ『沙耶の唄』

 仕事から帰宅して夕食とシャワーを済ませた僕は、『沙耶の唄』の小説版が半額セールをしているというツイートを見てなんとなしにゲームを起動してCG集を眺めていたのですが気が付くと一時間ほど画面の中の沙耶と見つめ合っていまして。別にただ見つめ合っているわけではなく、どうしてこんなにも沙耶がかわいいのかを考えていたら時間が経っていたのですが。でも見つめ合っているって表現おかしいですよね。実際には僕が一方的に見つめているだけなのに……。そんなことをしていたらなんだか沙耶への愛が溢れ出してきて止まらないので文章として吐き出そうと思った次第。

 僕が『沙耶の唄』を知ったのは中学生の頃。『まどマギ』をアニオタの先輩におすすめされて漫画を貸してもらい読んだ僕はとんでもないシナリオに度肝を抜かれました。ちなみにまどマギで好きなキャラは『佐倉杏子』です。魔女になったさやかに「独りぼっちは、寂しいもんな」と呟き、友達の為に命を懸ける姿に胸を打たれました。彼女の想いを考えると尊すぎて無理。話を戻します。すかさず脚本を書いたのは誰かとネットで調べてみるとどうやら『虚淵玄』という人が書いているらしい。そして色々な記事に虚淵玄の紹介と共に『沙耶の唄』が代表作として挙げられていました。今度は『沙耶の唄』を調べてみる。すると画面にはグロテスクな肉の中で佇む少女の画像が大量に表示されたのです。幸い僕はそういったものには耐性があったし、大人たちがみんな狂ったように純愛純愛言っているのでむしろ興味がわき、このゲームをやってみたい!と思いました。が、思ったのはいいものの中学生にエロゲを買う勇気などなく(というかどこに売っているのかも分からなかった)ので諦めたのです。今調べてみると、この時には既に小説版が発売していたらしい。そんな僕が大人になり初めてプレイした作品が長年やりたいと思っていた『沙耶の唄』だったのです。

 ここからは本編について語っていきます。
 主人公の『郁紀』は交通事故で両親を失い、本人も後遺症で世界のあらゆるものが肉塊に見える知覚障害になってしまいます。建物の壁は肉の壁に見えるし、医師も友人もみんな肉の塊のような生物に見える。視覚がおかしくなったことで味覚と嗅覚まで狂ってしまい食事をするのも苦痛。彼の世界には綺麗なものが何一つありません。そんな郁紀の前に現れたのが『沙耶』と名乗る少女。彼女は郁紀の狂った世界で唯一綺麗に認識できる存在だったのです。ですが沙耶の本当の姿は肉塊のような見た目をした生命体。郁紀が忌み嫌っている肉塊こそが彼女の正体であったのがなんとも皮肉。肉だけに。

「大丈夫よ。夜はわたしのものだから」ってセリフ最高すぎませんか?

 人間と同じ味覚を持たないのに郁紀にご飯を作ってあげようと努力する姿がもう健気でたまりません。でも沙耶は作った料理を一緒には食べない。沙耶は人間ではないので普通の人間の食事は食べられないからです。じゃあ何を食べるのかというと肉を食べます。犬でも猫でも人間でも。沙耶は人間の世界では人間を食べることはよくないことであると知っているから隠れて食事をしているのです。ですが郁紀に人間を食べているところを見られてしまう(この時の悪いことをしているのがバレてしまった子供のような仕草がまたかわいい)。まあ彼は狂っているので人肉をよくわからないがおいしい食べ物と認識して喜ぶわけなんですが。沙耶も今食べているものが人間であると言わないところが小悪魔的でキュートですよね。この場合「それ人間だよ」なんて言ったらむしろ悪魔か。郁紀がどんどん人間の常識から逸脱していくのを分かっていながらあえてそれを指摘せずに、これからは一緒に食事ができるねなんていって二人で喜んでいます。沙耶の魅力は人間的な常識を理解しているところにありますよね。分かっていて二人の愛を優先するところがいいです。

沙耶の食事シーン。エロシーンよりえっち。
嬉しそうでかわいい。

 沙耶は生き物の身体を組み替えたり調節する能力を持っていて、それを使えば郁紀の認識障害も以前の正常な状態に戻すことが出来ると言います。そして元の暮らしを取り戻したいかを郁紀に問います。ここでルートが分岐するのですが。〈もういらない〉を選択すると別の2ルートへ。〈取り戻したい〉を選択すると病院ENDが見れます。元の生活を取り戻すということは沙耶を今の少女の姿として認識出来なくなるということで、つまり沙耶との別れを意味します。それを分かっていて沙耶は質問してくるのです。ずっと一緒にいたいが治してもあげたい。そんな沙耶の葛藤が伺えます。病院ENDに進むと郁紀の認識障害は沙耶によって治され、視界に映る世界は以前のように正常に戻ります。ですがそこに沙耶の姿はない。郁紀は精神病棟の白い部屋に隔離され沙耶を待ち続けます。ある夜何かが這いずる音で目を覚ました郁紀はそれが沙耶であると確信し話しかけますが沙耶はなにも喋らない。代わりに扉の隙間から携帯電話が差し入れられメモ帳機能で返事をする沙耶。声が聞きたい、姿が見たいというと「あなたが憶えている姿の沙耶でいたい」といいます。本当の姿を愛する人に見られたくない沙耶の乙女心が切ないです。僕は病院ENDが好きだ。


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