【初心者向け】うまい手品の考え方のコツ

今回、手品を考えるときに、重要なポイントを1つ紹介したい。
それは、お客さんに「あいまいな仮説」を多く思い浮かべさせることでだ。

手品を披露すると、お客さんは必ず種を見破ろうとする。
その時に、一連の仮定のどこが怪しいのかを探ろうとするのだ。

例えば、よくあるトランプ当てマジックの場合、
「今、手を少し動かしたところが怪しい。そこに仕掛けがあるんじゃないか」と、具体的な方法までは分からなくとも、怪しいポイントを特定するだろう。
勘のいい人なら、仕掛けを当ててしまうかもしれない。

そこで、動作をなるべく自然になるように練習したり、お客さんの視線を逸らせるような工夫をするのも1つの手だが、ここで伝えたいのは逆に怪しいポイントをわざとたくさん用意することである。
つまり、仕掛けなど隠れていない、ダミーを用意するのだ。

そうすることで、お客さんに「どの部分に種があったのか」という仮説を多く考えさせることができる。
しかし、どの仮説も「なんとなく怪しい」という程度なので確証が持てない上に、怪しい部分が多いので混乱して、「結局種が分からない」ということになり、手品は成功するのだ。

ここで一つ例を紹介しよう。電卓を使ったマジックである。

①スマホの電卓に6666666・・・・・と入力していく。
②スマホを逆さまにすると、電卓には「6666666・・・・・・・・」と表示される。
(つまり、逆さまにしたのに「999999・・・・」にならないからビックリするという手品である。)

種明かしをすると、あらかじめ[333333・・・・・・+」を入力しておき、スマホを逆さまにする際にこっそり「=」を押して、
電卓上で33333... + 66666.... = 99999....
の計算がなされるというあきれるほどシンプルなものである。

さて、この手品には、今回紹介したようなダミーの仕掛けがあったのにお気づきだろうか。

この手品は、理屈を考えるに、
例えば、あらかじめ「1+」を入力しておき、お客さんの前で「2」を押して、逆さまにしたら「3」になる、という内容でも別に構わないわけである。

しかし、もちろんこれではお客さんの反応もイマイチだろうし、
すぐに種を見破られてしまうかもしれない。

そこで、このシンプルな仕掛けに、一捻り工夫を加えている。

そもそも、「逆さまにしても6のままである」という部分が、お客さんに一瞬考えさせる。
一瞬何がおかしいのか分からなくなるのである。
「2」が「3」になった場合は、数字が変わっているので「おかしい!」とすぐ気づくが、「6」が「6」のままの場合は、一瞬異変に気付くのに遅れるのである。それよって、より大きなインパクトとなる。そしてそれは、お客さんの思考を「感動」→「種探し」へと移行するまでのタイムラグとなる。

そして、種を探ろうにも、複数の仮説を考えてしまう。

そもそも逆さまにしても「6」が維持されるような機能があるのではないか?
何か特殊な設定やアプリがあるのか? 
逆さまにしたように見せて、実は逆さまにしていなかったのではないか?

など、様々な憶測を呼ぶ。

これにより、「こっそり3を足していたから9になったのではないか」という仮説にたどり着きにくくしているのである。

もし、「2」が「3」に代わるという内容であれば、こう上手くはいかないだろう。

さらに、単純に「6」ではなく、「66666・・・・」と入力したことも重要である。
少しでも複雑な入力をすることで、そこに何か仕掛けがあるように思えてしまう。種には直接関係ないのにである。
もちろん、1桁であれば「逆さまにするときに、どこか押したんじゃないの」と疑われてしまうのを防ぐ目的もある。

このように、ダミーの怪しい部分を用意しておくことで、
お客さんに確証の無い「あいまいな仮説」を多く思考させて混乱させ、
種が見破られにくくなるのだ。

シンプルで、すぐに見破られてしまいそうな手品でも、
このテクニックを使うことで、高度な手品に変貌させることができる。

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