【訳詩】ライフ ヴィセンテ・アレイクサンドレ 改訳

  ライフ ヴィセンテ・アレイクサンドレ

紙でできた鳥が 胸の中で
告げる くちづけのときは まだ訪れていないと
生きる 生きる 太陽がキーキーと立てる見えない音
くちづけか鳥か 遅いのか間もなくなのか決してないか
死ぬには騒音だけで充分
すると他の心臓は黙るだろう
でなければ地上のそのヒトの膝は
金髪のための黄金の船なのだ
金色の頭 金色のこめかみ そんな太陽
ここには川と一緒に夢の影があり
緑のイグサは今まさに生まれた血だ
君の中にある熱かライフが 夢を支える

*原題はVidaだが、人生、生命、命……と様々な意味を内包しており、合致する日本語が見つからないため英語のLifeを用いた。
フェデリーコ・ガルシーア・ロルカが引用したことで著名だが、全文訳は日本初訳である。
一冊前の詩集ではそれぞれに章を設けてアロンソ、ガルシーア・ロルカ、アルトラギーレ、セルヌーダに詩を捧げているが、今作では献辞がないため、誰に向けて書かれたかは現時点で不明である。
若かりし恋のスピード感、いつ想いを伝えたらよいかと戸惑う焦燥感を想い起こさせる一編。

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