「まず、世界観を変えよ」 田坂広志
「まず、世界観を変えよ」 田坂広志 英治出版(10/02)
本書は、「複雑系」の様相がますます濃厚になってきた現代の経営において、「複雑系」の本質をいかに活かしていくかについて述べられたものです。
従来の、機械論的世界観からの脱却は、言葉で言うほど、易しいものではないと思いますが、新たな世界観を見出すための海図のような役割を持っているように思います。
価値観、考え方を変えて、それを、実際の経営に活かしていくには、数々の試行錯誤が必要だと思いますが、使命を感じて、取り組んでいます。
■目次■
第一部 「「複雑系の知」から経営者への七つのメッセージ」
1.「分析」はできない、全体を「洞察」せよ
2.「設計・管理」をするな、「自己組織化」を促せ
3.「情報共有」ではない、「情報共鳴」を生み出せ
4.「組織の総合力」ではない、「個人の共鳴力」である
5.「トップダウン」でもなく、「ボトムアップ」でもない
6.「法則」は「変わる」、そして「変えられる」
7.「未来」を「予測」するな、「創造」せよ
第二部 「生命論パラダイム」
1.「グローバル・プロブレム」
2.「フロンティア・プロブレム」
3.「求められる「知のパラダイム」の転換」
4.「「機械論パラダイム」の限界」
5.「生命論パラダイムにおける視点の転換」
■ポイント■
◆「複雑なものには「生命」が宿る」
・生きた魚を「解剖」すると「生命」が失われるように、複雑なものを「分割」して「分析」すると、新たに獲得された「生命的な性質」が、消えてしまう
◆「複雑系の知」(complexity knowledge)
・「複雑系」は「新しい理論」ではなく「新しい知のパラダイム」
◆「全体性の知(wholeness knowing)」:「分析」→「全体を洞察」
・「複雑化」すると「新しい性質」を獲得する
◇「デカルト的パラダイム(機械的世界観+要素還元主義)」の限界
・「分析」という手法の限界
「対象を分割するたびに、大切な何かが失われる」
◇「身体性の知(somatic knowing)」(体験知)により「ありのままの全体」を「洞察」する
・「現場との対話・質問力」(Management By Wandering Around)
◇「非言語の知」を伝える三つの方法
・「生きた言葉」「メタファー(物語)」「体験」
◆「創発性の知(emergence knowing)」:「設計・管理」→「自己組織化」
・「個の自発性」が「全体の秩序」を生み出す
◇「創発性」:「個」が一定の規則に基づいて「自発的」に活動するだけで、「全体」が自然に秩序や構造を形成すること
・「自己組織化」というプロセス(「未来は開放系である」)
◇「企業文化」「情報システム」「業務プロセス」で「共進化」
・「ルールと指標」を変えると、「自己組織化」が促進される
◇「個人のゆらぎ」が「全体」を変える「共鳴力」
・「企業の望ましいプロセス」の促進
・「インキュベーション」:
新しいプロセスに基づく、ボトムアップの「自己組織化」を育む
◆「共鳴場の知(coherence field knowing)」:「情報共有」→「情報共鳴」
・「共鳴」が「自己組織化」を促す
◇「自己組織化」の三つの条件
・「外部との開放性」「非平衡な状態」「ポジティブフィードバック」
(内→外) (ゆらぎ) (自律・自己触媒)
◇「情報の共有と共鳴を活用した市場戦略」
・「デファクトスタンダード戦略」「ベストセラー現象」
◆「共鳴力の知(resonance knowing)」:「組織の総合力」→「個人の共鳴力」
・「ミクロ」のゆらぎが「マクロ」の大勢を支配する
◇「バタフライ効果」:システムの「進化」と「崩壊」は表裏一体
・「進化の多様性」「共進化の生態系」「価値のコスモロジー」
◇「アントレトレナーシップ」
・「専門性(強み)」と「他との提携能力(協働・共生)」
◇「イントラプレナー(社内起業家)」
・「哲学」「思想」に基づく「ゆらぎ」を起こし(とりあえずやってみる)
・「個人」同士の戦略提携により「共鳴」を起こす
◆「共進化の知(co-evolution knowing)」:not "Top Down" nor "Bottom Up"
・「部分と全体」は「共進化」する
◇「創発」:「トップダウン」と「ボトムアップ」の「双方向的プロセス」
・「瞬時」かつ「双方向的」に繰り返しながら「洞察」に基づく状況判断
◇「ダイナミックな進化プロセス」:「構造」ではなく「プロセス」
・「時間」と「進化」の視点を備えた「生命論的アプローチ」
◆「超進化の知(meta-evolution knowing)」:「法則」は「変わる」「変えられる」
・「進化のプロセス」も「進化」する
◇「メタ戦略」:「ゲームのルールそのものを書き換える」
・「法則」を超えていく智恵
◇「共生の戦略」:「インターオペラビリティ」(相互運用性)
・「価値の多様性」を受容する
◆「一回性の知(oneness knowing)」:「予測」→「創造」
・「進化の未来」は「予測」できない
・「教科書」はない。「探求心」と「行動力」だ。
◇「鏡進化(mirror evolution)」:「未来の自己」を現在に映し出し「進化」
・「認知フィードバック」:未来を予測し、現在の行動にフィードバック
◇「経営は、一回限りのアート(芸術)である」
・画家が「絵の具の調合方法」や「絵筆の使用方法」という「テクネー」を、教科書やマニュアルによって学ぶことができても、絵画という「アート」の本質を教科書やマニュアルによって学ぶことはできない。
・「戦略」における最も高度な判断は、過去に参考になる事例もなく、頼るべき法則もない、まさに「一回性」を前提とした、極めてアーティスティックな判断なのである。
◇「未来を「予測」する最良の方法は、それを「発明」することである」
・「市場調査」「市場予測」等の客観的手法→「Vision」等の主観的手法
・「意志」「希望」「夢」として語られた「生命力溢れる言葉」こそが、力強く未来を「創造」していく(「言葉」が世界を「創造」する)
◆「経営の知行合一」
・「知」(戦略)+「行」(実践)の両立
◆「生命論パラダイムにおける視点の変換」
◇「機械的世界観」→「生命的世界観」
・「科学技術」と「東洋思想」との融合
◇「静的構造」→「動的プロセス」
・「日々変化」が前提:「プロセス」と「ダイナミックス」
・「動的安定性」:「ホメオスタシス」(恒常性維持機能)
◇「設計・制御」→「自己組織化」
・「想像力」と「創造力」で「未来Vision」構築
・「洞察力」と「直観力」による「ゆらぎ」創出
◇「連続的進歩」→「不連続進化」
・「進化の未来」は「予測」できない:「積極的行動」
・「未来」は「可能性の未来」「開放系の未来」として横たわっている
◇「要素還元主義(reductionism)」→「全包括主義(wholism)」
・「コスモロジー原理」:「世界に対立はなく、総ての認識は真理」
「二元論」→「多元・多層の受容包摂」
・「フィールドワーク原理」:「直接的体験」に立脚
・「メタファー原理」:「世界は真理のメタファーである」
◇「フォーカスの視点」→「エコロジカル(生態学的)な視点」
・「部分の詳細」→「関係性のネットワーク」:深い意味レベル
◇「他者としての世界」→「自己を含んだ世界」(主体的関わり)
・「客観的認識」→「主客一体の前提」:「相互作用」
◇「制約条件としての世界」→「世界との共進化」
・「制約条件」→「相互作用のプロセス」
◇「性能・効率による評価」→「意味・価値による評価」
・「企業理念」という「価値」、「社会的存在」という「意味」
・「企業で働く人々の「こころ」の充足」を図る
◇「言語による知の伝達」→「非言語による知の伝達」
・「不立文字」「身体性の知」「深層意識の知」「集合意識の知」
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