ベトナム旅行記

2017/5/23~5/25の一人ベトナム旅行時の記録がスマホに残っていたため、供養として加筆・修正して投稿。


1


フエの空港からタクシーに乗る。その道中観察していたのは行き交う車だ。エンブレムを確認して、どこの車が多いかを薄ぼんやりと眺める。

トヨタ、ホンダ、スズキ、三菱…日本車の数は少なくない。気になったのは乗用車でKIA、トラックやバス、タクシーなどの法人車でのHYUNDAIの多さだ。日本車2:韓国車2:その他1くらいの割合で見かける。特に法人車はいずれも真新しく、近年買い替えられたばかりのように見えた。

つまり日本車メーカーは乗用はもちろんのこと、法人においてはリプレイスの機会を韓国車に奪われてしまったのではないか。法人ならば全車丸ごと入れ替えるだろうから、その分の抜けは日本にとっては痛手だろう。かつてはどこの車を使っていたのかはわからないが、やはり韓国企業はこういったいやらしいマーケティングが上手いらしい。

日本人として日本車メーカーには頑張ってほしい。いやらしさ無しでまくれ。

そんなことを考えながら、車以上に行き交う数の多いバイクのほとんどがホンダとヤマハであるのを確認して、少し安堵する。


2

検索して出てきた地元人御用達の飯屋を探しに出る。GoogleMapで6分、暑いが歩ける範囲内。ナビの奴隷となりながら歩いているが周りを見渡しても街を歩いている人間がほとんどいない。

すべてバイクと車。それもそうだ、5月だが日本の猛暑並みに暑く、熱中症もあり得る。街の中で浮いている自分に「6分だからセーフ」と言い訳する。

ふとGoogleMapを確認すると残りあと15分となっていた。嵌められた。ある程度歩き始めてしまってからGoogleMapが嘘をつき始め、それに振り回される現象だ。これのたちの悪いところはある程度歩き始めてしまっているので精神的に引き下がれなくなることだ。案の定、そのまま15分歩き続ける。しかしその間何度もマップは狂い、計30分近く、延々と照りつける太陽とじめじめした空気の中を彷徨い続けて目的地に着いた。

全身から汗は吹き出て、水分を求め始めるタイミングはとっくに過ぎている。探していた飯屋はなかった。あるのはただの通り。同名の違う場所に誘導されたことを悟る。

熱で頭はもううまく働かない。すでに目的地に着いたと認識しているGoogleMapは「後は自分でどうにかしてください」とばかりに無言を貫く。

「横になりたい…」
タクシーに敗北した瞬間だった。


3

フエのシティーツアーの道中でカンフーショーを見る。頭突きで瓦を割ったり、槍で喉を突いたり、なかなか激しいパフォーマンスで見応えがあった。

それまでずっとベトナム語で解説をしていたおじさんがいたのだが、最後に彼は観客の一人を呼びつけこう持ちかけた。

「俺の首を絞めてみないか」

話を聞くとどうやら首を絞めても水を飲める、というパフォーマンスがしたいようだった。選ばれた観客はイギリス人、困惑していた。当然だ、紳士ぶってる国の普通の人間からしたら他人の首を握るなんて死んでもゴメンと思うのが普通だろう。

昔冗談か何かの拍子に妹の首を両手で掴んだことがある。もちろん力は入れなかった。だがそれでも妹の生殺与奪が自分の両手の中にあるという感覚が、とてつもなく気持ち悪かった。

首の細さと、柔らかさが軽く掴んだだけでも伝わってくる。以来人の首は掴まないと決めた。あんなことができるのは、人としておかしい。相手の性癖じゃない限り、余程脳をバグらないとできる芸当ではない。

イギリス人は場の空気から仕方無しにおじさんの首を掴む。

もっと強く!もっと強く!
おじさんは煽る。

少しずつ彼は力を強めていっているようだが足りないらしく、結局パフォーマンスは空中分解、微妙な空気が流れて終わった。

「遠慮なしにやればよかったのに!」
おじさんが言い放つ。


4

ベトナム旅行の最終日、僕は悶々としていた。一人旅行は初めてではない。大学卒業時に一人で一ヶ月のスペイン・ポルトガル旅行を敢行した。

あの頃はまだ若かった。彼女がいたし、風俗どころかキャバクラなんて行く気もなかった。しかし社会に揉まれ、様々な幅を知った僕は初めて、旅先で下なるチャレンジをしてみたいと不意に思ってしまったのだ。

残念なことにベトナムは女性が強い社会である。風俗関係は厳しく取り締まられ、どこに行っても見る影もない。適してない国で、急遽どうしようもない欲求が湧き出してきてしまったのである。

どうにも我慢ならず、いろいろ調べてみる。どうやら噂でそういう床屋があるらしい。確かに床屋を覗いてみるとえちえちな服を着たねーちゃんたちが接客をしている。彼女らからしたら僕は外人。外人が来るということは、それだけでいろいろ伝わるだろう。ここは一つ行ってみることにする。

事前知識として、セックスはベトナムでブンブンというらしい。最終手段としてそれだけを覚え、えちえちねーちゃんの床屋に入ってみる。

なんでこいつ来たんだみたいな微妙な空気が流れる。困っているようで、一旦奥の施術台みたいなところに案内される。もしかしてこの施術台の上でブンブンしちゃうの?ブンブンしちゃえるのかなええ!?しかし施術台に乗せられることはなく、普通の椅子に座らされる。

何をしたらいいかわかんないねーちゃんは、とりあえず僕の爪を磨き始める。甘皮をキレイに取り、眉を整え、髭を剃ってくれる。気持ちいいがこれじゃねえ。お前なんでそんな格好して僕の身なり整えてんの。違うやん。違うやんか。

身綺麗になった僕は幾ばくかの金を払って気が付けば床屋を出ていた。何がダメだったのか。ブンブンと言えばよかったのか?察してもらおうとするのは遠回り過ぎてキモかったか?と反省する。

少し歩くと違う床屋を見つける。別のえちえちねーちゃんがおるわおるわ。今度こそと思い改め突撃。ドアから半身を覗かせながら、右手で筒を作って上下させつつ「ブンブンOK?」と問う。

「NO」と言われた。

飛行機の時間までもうない。ブンブンチャレンジは失敗に終わった。何が正解だったのか。悶々を残したまま、快適な空の旅へ。

消化不良過ぎる余り悩んだ僕は荷物も置かないままに、日暮里の風俗で40代くらいの細身中国人おばはんに中出しをキメる。二回目はできなかった。別に好みでもなんでもないけどちゃんと抱ける見た目の相手で良かった。

事後におばはんからアイコスを一吸いもらう。初めてのアイコスはコーンみたいな味がすると思った。一連のくだりのせいでベトナム旅行の思い出がやたらとブンブンとコーンで占められてしまう。なんだよブンブンコーンって。これでよかったのかはわからない。でもまあ最低限はすっきりさせたからもうええか。ブンブンブブンブーン。

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