TRPGで参考になった記述 その18

人間と人間とをつなぎとめる曲な関係の綱がずたずたに切断され、まるで抽象的で孤立した単位のようなものとして個人が放り出されてしまったと言われる現代において、おそらく、私たちが真に驚くべきは、人間同士の心の伝達の困難さについてではない。私たちの日々の経験によれば、事態は全く逆なのである。どんなに過大な自己幻想を抱いた生存も、いやおうく他者との関係に入り込んでしまうのであり、そこでは意図すると否とにかかわらず、負い目を負ったり負わせられたりしているのである。だから、言葉が通じない、と言うべきではない。それでも言葉は通じてしまうとこそ言うべきなのだ

井口 時男, 『伝達という出来事--村上春樹論』1983.10


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