見出し画像

綺麗は簡単、面白いは難しい…

 どなたかの記事を読んでいて、コピーライターの川崎徹の事を思い出した。「パルコ」や「キンチョー」や「フジカラー」のCMが元気だった頃、彼にインタビューした。
 当時は糸井重里も、それに今では直木賞の審査員にもなっている林真理子が、やはり数々の話題になったCMを世に送り出していた。そんなCMがブラウン管から流されていた時代には、勢いがあった。
 川崎徹へのインタビューは、原宿の明治通りと表参道がクロスする大きな交差点の角の、ビルの一室で行われた。
 出迎えてくれた彼からは、時代の最先端を走っている気概や驕りのような物は、一切感じられなかった。千利休の名前の由来と言われる「名利、既に休す」や「老古錐」「利心、休せよ」の境地にいるような人物だった。若い私を見下すわけでもなく、淡々としていて、拙い私のインタビューに当然のように答えていた彼の姿を、今でも思い出す。
 そんな彼がインタビューの中で語った言葉を、40年近く経った今でも覚えている。
「綺麗なCMは割と簡単なんです。でも、面白いCMは、難しい」
 彼の言葉は事あるごとに、私の脳裡を横切って行く。

創作活動が円滑になるように、取材費をサポートしていただければ、幸いです。