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お茶室でデジャブー=既視感

 世の中に、あっても不思議じゃない事の一つに、思わぬ場所で同じ社中の人に出会う事。当然、ありうる。ただ、そうなる事を一切、想定していなかった。そのため思いもかけない場所で、突然、
「ごきげんよう」
 と挨拶されて、その時はまさか俺に言ってる? と惑って挨拶を返せなかった。だだ、声のした方へ視線を向けて訝しげな表情を浮かべた私に、彼女は微笑んでいた。そこにいた女性は、最近配置転換で移動してきた女性だった。しかし、私に「ごきげんよう」と声をかけてきたからには、同じ茶道教室に通う兄弟弟子としか思えない。
 その日の夜、もしかしてとnoteを見返していたら、ありました。二年前の記事で彼女を紹介していました。その時は彼女の濃茶のお点前で、私は客を務めていた。しかも問答の時、お菓子の銘に、
「それはちょっと」
 と、姉弟子の彼女にダメ出しをしていた。
 さらに、一年前の一月に行われた教室の初釜のお茶会でのこと。彼女は主客、私はお末。ただ距離が近かったので炉の炉縁について、どこの塗りかと尋ねた。
「高台寺塗りです」
 と彼女は教えてくれた。
 その後は、最近、一月ほど前のお茶室てすれ違った。言葉を交わしたわけでもなかったが、鮮明に覚えていた。
 彼女は教室の先生からは、横文字っぽい名前で呼ばれていたので、余計に記憶に残っていた。しかも、いつも着物だった。
 ひるがえって職場での遠慮がちに聞こえた、
「ごきげんよう」
 のスーツ姿の声。二つの映像がゆっくりと近づいてピタリと重なった。
 さて次回、職場で彼女に出会ったら、なんと言って声をかけようか、今から戸惑っている。楽しみである反面、怖いのも事実。はてさて……。

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