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トキアンナイト イミテーション・ラバーズ

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52枚の人間スケッチ。男女の葛藤は、果てしなく続く旅路。 簡単に、どっちが悪くて、どっちが可哀想なんて、言えそうにない。 あなたは、幸せになれそうですか。
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2021年6月の記事一覧

七夕の日、操縦桿をかくす

 来月は、もう七夕である。和歌の世界で七月七日は、秋になる。  仕事帰りの電車の中で、古今和歌集を読んでいた。「秋の段」で、こんな和歌を見つけた。 「いつしかと またく心を 脛(ハギ)にあげて 天の河原を今日や渡らむ                              藤原兼輔」  この歌の前書きに「七月六日に牽牛の気持ちを詠んだ」とある。七夕の前日である。  意味は、「一日早いけど、着物を脛のところまで持ち上げて、天の川の流れを渡ってしまおう」というもの。男と女の、

ダメ男、三番目の〝B〟

《トキアンナイト 第38話》 「私、最近、全然、だめでしょ」 「そうだね。そういう日もあるよ」 「どうしたら、この状態から抜け出せるんだろ?」 「そうだね。どうしたら、いいんだろうねえ」 「あいつ、あいつ! 全部あいつが悪いのよ!」 「ホント ホント!」 「あいつに、“飲みに行こう?” って、メール送ったの」 「うんうん」 「そしたら、帰ってきたメールが意味不明。“今日は誕生日だから、前田も来るし、10時過ぎには行くよ!”。これって、意味不明!」 「ホント

男と女、どっちが生物として強い?

 20歳代なかばのカップルが、夜半過ぎ、タクシーに乗り込んで来た。走り出してしばらくすると二人は、遅めの晩御飯の相談を始めた。 「ねえ、何にしようか」  と、女が男に話しかける。男は、少し疲れた様子で、気のない返事を繰り返す。 「うん。そうだな……」  二人の会話は、いつしか関西弁になっていた。 「オリンピックで、ええやろ」 「うん…」  男は、相変わらず気のない返事。それに比べ女は、元気がありあまっている様子。 「この間の話しなあ……。どないしたらええ?」 「そうやなあ、う