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【連載小説】雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう

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毎日、自分に関する周囲の記憶がリセットされる男の話。自分の記憶だけは変わらない。
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2021年5月の記事一覧

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【22】

葉子は身体を震わせた。 僕は立ち上がってストーブをつけた。置きっぱなしのストーブ。 「す…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【21】

リリー・マルレーンは2回目だった。 真由美という名前の子猫は、街角にはいなかった。 だか…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【20】

「ここのコーヒーは美味しいですな」 本庄氏はコーヒーを飲むと、椅子に深く腰掛けた。 「そ…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【19】

記憶というのは、想像のひとつだと聞いたことがある。 断片を繋ぎ合わせて、事実を作る創造だ…

蓮
3年前

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【18】

国道沿いに南に歩いて行った。 この道路は一車線しかない。狭いのに主要道路となっていて、ひ…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【17】

雲を掴むような話だろう。 誰だってそうだ。 自分のことを誰も彼もが、一日だけしか覚えてく…

蓮
3年前
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雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【16】

単線の線路。 山と海の間を走る列車。 ゴトンゴトンとリズミカルに刻んでいく。 車窓から見える景色は、何十年も変わっていないのだろう。 途中に一箇所だけある駅は、無人駅になっていた。 何人かが降りていった。 列車は再び走り出す。 降りるのは、次の駅だった。 僕はボストンバッグを開けて、中を見た。 服と本が一冊、他は洗面道具など身の回りのものだけだった。 列車が徐々に速度を落としていった。 駅に近づいてきたのだろう。 車内にアナウンスが流れて、そろそろ停車

雨の日の水溜りで遊んだのはいつの頃だろう【15】

ふるさとは 遠きにありて思ふもの そして 悲しくうたふもの 室生犀星の小景異情詩を、何故…

蓮
3年前
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