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小説を小さく売るために

イラストを売るように小説を売りたい

小説を書いて収入を得る、といったとき、思い浮かべるのは「本を出版する」ことではないでしょうか。

商業出版であれ、同人誌であれ、小説で収入を得るためには「本を出版する」必要があり、WEBには無料で掲載しているものを書籍化してはじめて収入になる、というのが一般的なように思います。

しかし、「書籍にする」にはコストがかかります。商業出版であればまず出版社のお眼鏡にかなう必要があり、それではじめて企業が出資して流通に乗せる。同人誌であっても印刷代や、本をさばくための即売会・通販の整備が必要です。そもそも「書籍にする」ためにはある程度の文章量が必要なので「書く」段階にもかなりのコストをかけなければいけません。

ひるがえって、イラストレーターはどうでしょう。「イラストを描いて収入を得る」のは小説に比べてずいぶんハードルが低いように思います(そもそもイラストを描く技術を習得するコストはここでは考えません。小説を書く技術を習得するコストだってあるのですから)。

イラストのデジタルデータをストックサイトなどで販売することもできます。アナログイラストなら、原画を販売することもできます。グッズを作って販売するのにはコストがかかりますが、書籍ほど大規模に刷ってさばく必要はありません(1000円の小説同人誌が原価割れしてるのは珍しくないのです。少部数の同人誌で印刷代を回収するのはとても難しい)。

また、「見てもらえる機会」も、小説よりもイラストのほうがはるかに多いでしょう。イラストや絵画、ハンドメイド作品などには「展示会」や「ギャラリー出展」などの機会があり、即売会でもパッと目につきます。SNSでもすぐに目に飛び込んできて反射的にいいねを押しやすい。しかし、小説は「まず読んでみる」までにかなりハードルがあります。小説家に「個展」はありません。文字が並んだだけの画像は、パッと見では内容がわかりません。

「だからイラストレーターは楽をしている」と言いたいのではありません。
「小説書きにも、同じように見てもらえる機会・販売する方法が欲しい」というのが、この記事の趣旨です。

書籍を作る以前の販売方法

この非対称な構造は、そもそもイラストと小説の表現方法の違いによるものでもあります。パッと目に飛び込むイラスト、じっくり読む小説。しかし、「だから本が作れない小説書きは無収入で書き続けろ」というのはあまりに酷です。

「書籍を作る」より前に、もう少しハードルの低い「文章の販売方法」が欲しい。それも、読み手にとってもストレスなく読めてwin-winなものが良い。

小説をWEBに発表するとなると、各種小説投稿サイトがまず思い浮かびます。しかし、それらの多くは基本的にすべて無料で読めることを前提としています。読み手側にとっても「WEBの小説は無料で読める」ことが常識となっています。

また、小説投稿サイトに掲載される小説の傾向として、非常に長大であることが多いように思います。それだけの「書くコスト」をかけられるなら、書籍化に必要な文章の量、という部分は既にクリアしています。

「書くコスト」も「販売するコスト」ももっと低く、だれでも気軽に1ページから文章を販売できるプラットフォームが欲しいのです。さらに、読み手側の「読むコスト」「好きな文章か判断するコスト」もできるだけ低くしたい。イラストをパッと見ていいねを押し、ギャラリーで気に入った原画を買うように文章を買ってほしいのです。

「アーティストとしての小説家」が、専業作家になるより前に、趣味の文章で小さな収入を得られる仕組みが必要です。「趣味で書くならタダで読ませろ」というのは搾取です。

小説ポートフォリオ+販売サイト

既存の「小説投稿サイト」とはまったく違った、「小説書きのポートフォリオを兼ねた文章販売サイト」のようなものが作れないか、と考えています。

小説に限らず、エッセイなどもいいかもしれませんが、ここでの「文章」は「情報を伝えるための手段」ではありません。熟読玩味を許す「主役」でなくてはいけません。「お役立ち情報」や「実用的なTips」などはnoteでやってもらいます。

そこはつまり「小説家の展示会」です。読み手はギャラリーを歩き、小説を立ち読みし、気に入った小説を買うことができる。もしかしたら作者に投げ銭をすることもできるかもしれません。書き手は1ページから文章を販売でき、販売している文章を好きな部分まで読ませることもできる(無料ですべて読めるが気に入ったら買ってね、というのもアリですね)。

小説は美しく読みやすいレイアウトで読めなくてはいけません。縦書きも横書きも読み手が選べて、ストレスなく読みはじめて読み終わることができる。

そして、書き手は「自分がどんな文章を書いているか」簡単に読み手にアピールできる必要があります。印象的な一部分の引用かもしれません。もしくは、日記のような作者の人となりがわかる文章かもしれません。「新しく自分を見つけてもらう」ことが自然とできる仕組みが必要です。

仕組みさえ整えば、小説で収入を得るのはもっと簡単で、当たり前のことになるはずです。文章でめしが食えなくてもいいのです。「作品」をタダで提供するのが当たり前であってほしくないだけです。

文章作品や、文章で表現するアーティストが、かけたコストのぶんだけ尊重されるようになればいいと思います。

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