「開くものと閉めるもの相反する行為についてのショートショート」
よくうちの夫はあらゆる家の扉や机の引き出しを開けっ放しにしている。
ある日、全部開けたままにしてみた。
すると、夫は開ける楽しみを見失い、仕事をついこの前クビになった夫が部屋に来るなり、
「ねえ、なんて言ったらわからないけどごめんよ……君にばかり働かせて……悪いと思ってる……」
今にも泣き出しそうな顔で言うので、「大丈夫だよ。お金だったら心配しないで貯金があるもの……」
夫が次に開いてくれたのは心の扉だった。
その一言が嬉しくて今度の休みに夫の好きな海のある場所に旅行に行こうよと誘った。
もうどんな扉も閉める必要はないんだ。
ふたりはいつの間にかずっと忘れていた感情に涙を流し笑った。
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