📚️影絵草子の怪異大辞林🌳

怪談師、怪談作家です。 語り名:マシンガンジョー 恐い話を趣味と実益で日本各地で…

📚️影絵草子の怪異大辞林🌳

怪談師、怪談作家です。 語り名:マシンガンジョー 恐い話を趣味と実益で日本各地で聞いて集めて書いて話してます/稲川淳二の怪談グランプリ2021/怪談最恐戦2021東京予選/怪談王2022、23関東予選大会/島田秀平のお怪談巡り/単著 茨城怪談、屋敷怪談

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最近の記事

「産地不明の肉のような怪異体験の魅力」

怪異現象っていうのはある種のとあるシチュエーションの提供というか、明確な何かをこうですよ、と提示するものではなく、書き手、あるいは取材者さえもその話の中身、あるいは本質をわからない状態でおそらくこれは何かの恐怖的体験ではあるが、名も知れぬ得たいの知れない某かであるくらいの理解で、はいどうぞ好きに食べてくださいと提供することがもしかしたらほとんどかもしれない。 でもそれは明確に聞いた話であり、明確に恐かったり不思議だったりするのに、中身が一切わからない封の切られていない合成肉

    • 「サンセット・マーチ」

      遠ざかる影の色は 橙と混ざり 消えた 今はもう失われた若さは  遠い日に落としたハンカチーフ さよなら また明日 いつもの帰り道 歩道橋 君は片方のちがう道 遠ざかる背中の影 夕日の眩しさが溶かした 今はもう 見えない背中は 消し忘れた 恋ごころを  いまだ この胸に抱きしめる 短くなった鉛筆がまだ 筆箱に 転がるようにね。

      • 「種を蒔く日々」

        ここまで歩いてきたよ 自分のこの二本の足で 悲しみも喜びにも 嫌(や)というほど巡り会い 季節をまたひとつ越えて またひとつ歳をとる ファインダー越しのあなたは まるで夢か幻のよう 見つめるほど遠ざかる 輪郭さえぼやけた蜃気楼 重ねた傷と罪を花束にして 世界中に売り歩いて 旅をしようか  地図にはない場所まで 行けるならば今すぐに そこに住む人の営みや町並みの色彩にふと立ち止まり、振り返る そのひとときの刹那的感傷よ どうか このまま貧しき僕

        • 「アコーディオンカーテンの朝」

          言葉では伝わらない 気持ちはどうしたら 伝えることがかなうだろう 糸電話みたいに 細い糸をここまで手繰り寄せて 世界中にいる誰かと お話できる便利な世界 かわりに心の距離を 近づけることが できなくなってしまったり していやしないかい? 目を閉じた瞳にも 強烈に突き刺さる眩しい光 スクリーンの向こう側に 海を描いて 波しぶきが つま先を濡らしたら その冷たさで目を覚ますよ 優しい日曜日の朝 揺れるカーテンはアコーディオン 寝息さえも音楽に

        「産地不明の肉のような怪異体験の魅力」

          「面白い諺の続きを考えてみた」

          ①両手に花持つ花屋さん。 ②七転び八起きで筋トレを。 ③井の中の蛙大海を知らず、地区大会も全国大会も知らず。

          「面白い諺の続きを考えてみた」

          「ベリーショートショート」

          猫と人間の立場が逆転した映画を観ながら、犬と人間の立場が逆転した世界で、「こんな世界なら僕は絶望するね」とため息を吐く。   「犬理論」 山で熊に出会い慌てて死んだふりをしたら 熊も自分の隣に寝そべり同じように死んだふりをした。 「逆効果」 美術館でなんの絵かわからない真っ白な絵があり、タイトルを見て「絵空事」と書いてある。 批評家曰く、絵描きが想像で書いた絵で想像で見るのが正しいこの絵の見方だと「美しい」と恍惚の表情が浮かべる。 「壁の絵」 #ショートショート

          「ベリーショートショート」

          「開くものと閉めるもの相反する行為についてのショートショート」

          よくうちの夫はあらゆる家の扉や机の引き出しを開けっ放しにしている。 ある日、全部開けたままにしてみた。 すると、夫は開ける楽しみを見失い、仕事をついこの前クビになった夫が部屋に来るなり、 「ねえ、なんて言ったらわからないけどごめんよ……君にばかり働かせて……悪いと思ってる……」 今にも泣き出しそうな顔で言うので、「大丈夫だよ。お金だったら心配しないで貯金があるもの……」 夫が次に開いてくれたのは心の扉だった。 その一言が嬉しくて今度の休みに夫の好きな海のある場所に

          「開くものと閉めるもの相反する行為についてのショートショート」

          「物語がとっちらかることによるショートショート」

          「かぐや姫とシンデレラが 猿かに合戦をやっておりました……」 主婦の未央は子供の絵本読み聞かせで 同時に三冊の絵本を読み聞かせているとつい話がとっちらかる。 それはそれで面白いなあと 読み聞かせていると、 子供がこれも読んでと 大学ノートをどこからか取り出してくる。 「えーと、車検が○万円に……ガソリン代○万円……それから……美顔器が……いくらで……」 気づく。 読んでいたのは家計簿だった。 結婚8年目の夫がその光景を見ながら、大笑いをしている。 今月も節約しな

          「物語がとっちらかることによるショートショート」

          「自宅に内線を引く未来の家庭環境についてのショートショート」

          電話の会話 母「お父さんいまどこ?」 父「いや、家に決まってるだろ」 母「ああそうかめったに顔を家で合わせないから……」 父「まあな、もうかれこれ三年は顔をあわせてない……」 母「私たちって夫婦よね」 父「当たり前なこと聞くな、夫婦だよ、三年に1度くらいしか顔を合わせないけど」 母「ところで、お父さん本当にいまどこにいるの?」 父「だから……家だよ」 母「ああ、そうだったわね……でも本当かしら……」 父「じゃあ確かめればいいだろ、来いよ部屋に」 母「いい

          「自宅に内線を引く未来の家庭環境についてのショートショート」

          「夏の坂道」

          通り雨に傘を開いた 昨日の夕暮れの赤が まだこの胸をほのかに染めている ピアノを弾くように 丁寧に確かめながら 命の音を鳴らしたい 夏の空が青い理由はない けれど 雨上がりに向かって ペダルを漕いでいる 気持ちは逸る  汗ぬれで駆け上がる 坂道の頂上で 手を振る あなたが夏の日射しのなかで 眩しく見えたから笑ったんだよと 伝えたくて。

          「ラブソング」

          ただいまを 今日も誰かが言えば おかえりを 今日もかわりに受け取る そんなやりとりがいつまでも 続きますようにと祈る 家族だって 恋人だって 友達だっていい だけど違う血の通う 人にだって優しくしたい 同じだけのぬくもりを分けてあげたい 傷つけられるのも人 助けられるのもまた人 そうやって勝手でわがままなさじ加減で好きになったり嫌いになったりして 同じ人であるが故 僕らは小さなことで争い お互いを批難しあうけど お互いの良さを見つけられるのもまた人の特技だから 僕は

          「夏化粧」

          急なにわか雨に  降られてしまった 僕らは屋根の下に 逃げ込んだ どんな話をしたのか 思い出せないくらい 楽しい時間は 夢の中の出来事のようだね 少し髪の伸びた君の後ろ姿に大人を 見た気がして少し寂しくなったよ 五月雨に濡れた 影のある横顔には もう微塵の幼さもなかった 花火の音に振り返る 大輪が夜空に花咲いて 君は笑ってた 幸せだよと 浴衣姿の 君は眩しくて 見つめるたびに 僕は自分の弱さが 恥ずかしくなったものだよ 日々、夏の色に着替え

          「5月、夕暮れにて」

          このアパートのベランダからは大好きなあの場所が見えるんだ ささやかな幸せに一喜一憂しながら 通りすぎていく日々も またいいもんですねそうは思いませんか? なくしたものは取り戻せない ここにあるものだけで 満足しているような無欲のライトハンド 無い物ねだりは しないでおこう 手にしたものだけで充分だ 夕暮れに 染まっていく町並みは そんな気持ちにさせてくれます ああ この町に 生まれ育って そして、今もこの町に守られている 変わってしまった風景や 今はな

          「車窓から」

          代わり映えしない毎日は まるで電車の車窓から 眺める景色のようだ 世界の果てを目指すつもりが 路線図の一番端っこの  小さな名も知れぬ駅に たどり着くのが精一杯だった あなたは元気だろうか 最近、連絡がないけど 同じ夜を過ごしていても 気持ちはどこか遠くを見てる さよならは僕から決めたんだよ 何かを変えたくて歩きだした はずがあの日から少しも 前には進んではいないことに 気がついて 命からがら たどり着いた 夕暮れに 恥ずかしいほど泣いたっけ 明日は今日より素晴らしいはず

          「満月の夜」

          呼吸が 重なり夜の 帳が降りてきて さざ波のような ささやき声が 町中から聞こえる ベランダに ようやく這い出て 気づくと一日が 終わっていた 月の光で嘘はつまびらかになる 傷ついているのは あなただけじゃない 泣くのはやめてくれないか みっともないから 何かあるたびにこれでは 身が持たないよ たまには休めよ ダージリンの紅茶を淹れよう 茶葉に溶けた一日の疲れ 団地の影に日が落ちて こどもたちの姿が町から消えると 町から誰もいなくなっ

          「パントマイム」

          愛はいつから 言葉にしなきゃ いけないほどちっぽけでわかりづらくなったんだろう 夢はいつから 声に出すだけで 恥ずかしい言葉になったんだろう 時代も世代も 関係はなくてさ 愛を叫ぼう 夢を語らおう 若くても老いさらばえても 男でも女の人でもいい パントマイムするように 何かを伝えてよ 身振り手振りで 不器用に 体と心で象る いろ かたち ほんの少しのしぐさに 愛に気付き 頑張る背中に 夢を見る 世界であれ。