実話怪談・祟「厄拾い」
地下鉄のロッカーをしばらくタンスがわりにしていた伊藤は、日雇いバイトから帰り、ロッカーから荷物を出そうとした。
ロッカーの奥に何かが見えた。
今までは気づかなかったがお札のようなものがロッカーにぺたりと貼られている。
爪で引っ掻いて剥がしてみると、そこには「はずれ」と書かれている。
ロッカーに当たりも外れもないだろうと笑っていると、暴漢に襲われ稼いだ金をすべて奪われてしまった。
財布の中にしまったあのはずれの紙も財布ごと盗まれてしまった。
しばらく親のいる実家に厄介になろうと田舎に帰ると、いち早く東京にいった同級生の鈴本というやつの通夜と告別式だった。
鈴本は都内で階段から落ちて亡くなったというが、持ち物に財布があり、それは紛れもなく自分の財布で中を見せてもらうとやはり財布には数千円とあのはずれの札が入っていた。
伊藤曰く、「あいつ人生からはずれちまったのかもな。昔から運だけは良いやつだったのに……」
そう言って、死んだ鈴本の三回忌に伊藤は今年も行くのだと香典を手に田舎にこの年の夏帰省するのだという。
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