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写真批評 サシイロ

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様々な写真家の写真を批評した評論。 変わりばえしないモノトーンな日常に色が射すように、あなたの気付きになればという思いを込めて。
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2018年2月の記事一覧

写真批評  〜サシイロ  10  アニミズムを撮る

写真批評 〜サシイロ 10 アニミズムを撮る

鈴木理策の写真展「Water Mirror」が渋谷で開催されていた。
鈴木理策の写真については、私は「熊野、雪、桜」で知ったのだが、Water Mirrorの写真も期待を裏切らない写真の数々だったのではないだろうか。

鈴木理策の写真の特徴は、写真から静謐な空気が伝わってくるところである。凛とした静けさは、幽玄な世界を私たちに見せてくれる。
鈴木理策はこのような写真をどうやって撮るのか。これについ

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写真批評  〜サシイロ  9  ディストーションの世界

写真批評 〜サシイロ 9 ディストーションの世界

アンドレ・ケルテスは、スナップ写真の先駆者である。彼はいつでも持ち歩けるカメラの登場を活かし、偶然にも特別な一瞬に巡り会った時に、その一瞬を必ずカメラに収めた。冒頭の写真もその一つである。このような構図は、現代の写真家の作品の中にも見られるものだ。

スナップ写真もいいが、アンドレ・ケルテスの真骨頂は、やはりディストーションシリーズだと私は考える。
ディストーションとは、歪みやねじれのことを指す単

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写真批評  サシイロ  8  〜写真の肌理(キメ)を見る

写真批評 サシイロ 8 〜写真の肌理(キメ)を見る

石内都の展覧会「肌理と写真」が横浜美術館で開催中である。
石内都といえば、染織の知識を生かした肌理の粗い白黒写真である。彼女の現像手法は独特だ。
代表作の写真集は木村伊兵衛賞を受賞したapartmentだが、それ以外にも建物を写したものが多く、取り壊し前の壁等を陰影の強い写真で切り取っている。
冒頭の写真も、その1つだ。

石内都の写真のその粗い肌理に、見る者は何を見るのか。写真の肌理は、見る者に

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写真批評  サシイロ  7  〜パフォーマンスアートの世界

写真批評 サシイロ 7 〜パフォーマンスアートの世界

皆さんはパフォーマンスアートというものを知っているだろうか。私は恥ずかしながら知らなかった。
冒頭の写真は、パフォーマンスアートの分野で活動している森村泰昌の写真である。一瞬アインシュタインと間違えた人もいるのではないだろうか。

森村泰昌が展開するパフォーマンスアートというのはこのように有名人や名画の登場人物になりきったセルフポートレートを発表する形である。
セルフポートレートは文字通り自分で自

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