見出し画像

フェルメールと17世紀オランダ絵画展

ポプラの綿毛が舞い飛ぶ中、絵画展を観に北海道立近代美術館へ。
『フェルメールと17世紀オランダ絵画展』目玉はもちろんフェルメールの作品なのだけど、その他の作品も見どころ満載。風景画、風俗画、肖像画、歴史画、静物画さまざまな種類の絵がそろっていた。
中でも当時の人々の様子が描かれたものは、人物の表情がとても豊かで…

みなさん強烈

いきいき、というか生々しいというか、様々な表情で描かれていた。
17世紀の人々だけど、中には現代にもありそうな光景もみられる。タバコの煙をいやがる人の図なんて、そう。こんな風に思いっきり煙を吹きかけられたりしたら、それはそうなるよねぇ… 。

人物のほかに、一緒に描かれている小物や動物に注目するのもまた面白い。
それらにこめられた暗喩、暗示的表現がわかると、ただ『おかしな表情の人が描かれた絵』として見ていたものが、一変してまったく違うものに化けてしまうのだから。

レモンひとつにも意味はさまざま

たとえば熟れた果物が加齢や衰退、鏡が虚栄心、人生のはかなさという具合に、なんらかの意味が隠されていたりする。
今回展示された作品の中でちらほら目についたレモンはワインと組み合わせて描かれたものが多く、その場合だと節制、自己耽溺などを表すそう。ときには一緒に描かれた人物の仕草と合わせて、恋の甘さ、酸っぱさを連想させるものとして用いられることもある。

上記のものならなんとなく意味を連想できるけど、現代の感覚では『?』なものもあった。室内に猫がいる絵など、ペットとして飼っているとしか思わないだろうけど、解説には『家庭内に猫がいることは不名誉なこととされていた』とある。
猫がいるのは不名誉??? なぜかと思ったらこの動物、官能や誘惑の象徴とされていたそうな。説明を読んでようやく、なるほど、となるものも多々。
ちなみに鳥やうさぎにも似たような意味が隠されているもよう。

これらの小道具だったり、描かれた人物の仕草などを組み合わせて絵を読み解くのはまるでパズルを解くかのよう。解ければスッキリ、最初の印象とはまったく違うものが姿を現している。

他にはピアノのようなヴァージナルなども

楽器もけっこう描かれている。この時代はリュートの絵、多し。
弦の本数が多いものはどう弾けばいいのやら。 指板の幅もあり、弦を押さえるのが大変そう… 弾きこなすのに指10本で足りる?

描かれた当時の色も復元され印象が変わった『窓辺で手紙を読む女』

この絵画展の目玉、フェルメールの『窓辺で手紙を読む女』
なんといっても、塗りつぶされていたキューピッドが修復によりふたたび姿を現したという点が今回の見どころ。

修復を終えるまでにかかった年月が想像以上だった。
1968年 顔料の調査に始まり、1972年にX線調査でキューピッドの絵が発見される。発見当時は画家本人が上塗りをしたと考えられていたけれど、作品保存のための修復計画が進むうちに、上塗りの部分は絵の完成から数十年たってからのものだと判明する。それだと画家本人が亡くなった後のことになるので、別人が手を加えたというのが明らか。
2017年に試験的に一部の上塗りを取り除き、2018年にすべての上塗りを取り除くことを決定。修復が終わったのが2021年と、結構な時間がかかっていた。

間近で目にした作品は変色したニスなども除去され、描かれた当時の色が復元されて、本で知る絵とはことなる印象のものになっていた。
修復前は沈んだような表情に見えていた女性が微笑んでいるかのようだし、部屋ももっと居心地良さそうな雰囲気。
隠されていたキューピッドが出てきたことでこの絵もまた、今までとは違う解釈でみられることになるのだろうな。

#絵ざっ記
#エッセイ
#フェルメールと17世紀オランダ絵画展

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?