【二次創作小説】Fate/Dead Line 第二話 銀河鉄道の中で

 セイバーとライダーは言った。それは、紛れもなく藤堂 雅和が召喚したサーヴァントなのだという。
 つまるところ、藤堂 雅和は聖杯戦争という殺し合いに巻き込まれてしまったのだ。
「こっちに来てくれないか? セイバー」
 ライダーの声かけにより、後ろの車両に乗っていた誰かがひょっこり顔を出した。
 藤堂は目を見張った。
 可憐な少女だった。アンテナを模したような大きな髪飾りをつけた彼女は、不機嫌そうな顔でライダーの近くに寄ってきた。
「なんだ、不機嫌なのかい? 自分だけ除け者扱いされて」
 セイバーはライダーを睨みつけて、ぷいっとそっぽを向いてしまった。
「あっはは、嫌われてしまったかな。でも、感じるだろう? 彼女とキミは通じているんだ。キミは彼女のマスターなんだよ。その証に、キミの右手に赤い紋章がついているはずだ」
 確かに。彼女が近づくにつれて、右手がほんのり温かくなっているような気がする。
「彼女をこの世界に引き留めているのはキミなんだよ。彼女はキミを守りながら聖杯戦争に勝ち抜かなければならない」
「ちょっと待て、それならオレとライダーは敵ってことにならないか?」
 そう、ここに二騎のサーヴァントがいるのがおかしい。ライダーにも本来マスターがいて、ライダーもまた聖杯戦争に参加しているサーヴァントなら、藤堂を殺すべきなのだ。それが聖杯戦争なのだから。
「……そうだね。"本来は"そうだ。僕らは敵で殺し合わなくちゃあならない。だが、僕はキミに頼み事があってこの銀河鉄道に招いた。ここなら誰の襲撃を受けることはない。何たって、世界の裏側を走る銀河鉄道だからね。星の内海とはよく言ったものさ」
 ──やはり、作家であることが全面に押し出しているのだろうか。余計なことまで喋ってしまっていて本来の論点からズレてしまっている。
「ケンジ」
 アンデルセンの声かけによって、我を取り戻すライダー。大きく咳払いをして、眼差しを変えて口を開く。
「僕たちは、この聖杯戦争を終わらせるために派遣されたサーヴァントだ。昭和二〇年頃の帝都で行われた聖杯戦争は悲惨だった。その聖杯戦争でもとあるサーヴァントを尽力を尽くしたが、上手くいかなかった。世界を滅ぼしうる災害は確かに取り除けはしたが、聖杯が渦巻く呪いは滅ぼせていなかったんだよ」
「は……?」
 昭和二〇年。一九四五年は藤堂にとっては馴染みのある年代だった。その年は大きな戦争が終結した年だった。
 東京には今もその爪痕は残っており、日本人の胸に傷跡を残したのである。
「あれが、聖杯戦争のせい……?」
「そうだ。つまり何を言いたいのかというとね、この聖杯戦争は絶対に成就してはいけない聖杯戦争なんだ。さっきのランサーと僕のような日本人が呼ばれることもおかしいし、前回の聖杯戦争は完全成就には至らなかったからどうにかなったものの、今回ばかりはかなりまずい。なので僕たちに協力して欲しいんだ」
「ここで、決めろ。マサカズ」
 アンデルセンが追い打ちをかけるように決断を迫る。
 ライダーの目には偽りはない。ただ、信用してもいいのかはわからない。セイバーは声を出そうともしない。
「セイバー、僕の気持ちはわかるかな。キミの人間を恨む気持ちはわかるが……この世界を守るには仲間が必要なんだ。どうかわかってくれないか」
 思案する。セイバーの意思を汲み取りたいが、彼女は拒絶している。
 きっと、視認はできても、僕の声は聞こえないのだろうか。身体は近くにあっても、心と精神がどこか遠くにあるような気がして。──あるいは、この世界の英雄とは思えなくなってしまう時がある。
 ──そして。
「わかった。協力するよ。この聖杯戦争を終わらせばいいんだろう?」
 藤堂の返答を聞いたライダーは満面の笑みを込めて
「そうか、そうかそうか! それは良かった! これからもよろしく頼むよ!」
 そう言ってライダーは右手を差し出した。
「ケンジ。手を差し出すな。おまえの手を切り落とされたらどうするんだ。まったく、お人好しにもほどがあるぞ。お前もだマサカズ。令呪が刻まれた手を失うとマスターの権限がなくなる上にお前は死ぬんだぞ。今後は安易に手を差し出すな」
 アンデルセンは、そう強い口調でマサカズを戒めた。

  ***

「ねえ、わたしの愛しき聖杯グレイルちゃん。わたしにもサーヴァント、ちょうだい」
 薄暗い部屋で、叫び声のような轟音を立てながら胎動する何か。
「そうすると、わたしの胎内おなかがもっと満たされていくの。ええ、未来が見えるわ。きっといい未来になるわ」
 今晩、駅の前で占いをしていたが、正直つまらなかった。一人だけ面白い男の子はいたが、彼を機にもう面白い子は表れはしないだろう。彼女──ルナ=ヘイウッドは、自分の下腹部をさすりながら
「ねんねんころりよ おころりよ 坊やは良い子だ ねんねしな
 ねんねんころりよ おころりよ 坊やのお守りはどこへいた」
 震える声で、歓喜に満ちた声で、彼女は歌を歌う。
「ああ、あああ。ああああ!! ああああ!」
 ルナの下腹部が不気味に赤く光る。新たな誕生を祝福するように──激痛に悶えながらも、喜びの嬌声を上げる。
「これで──わたしの理想郷へと旅立てるの……ハレルヤ、ハレルヤハレルヤ!!」
 彼女の声と共に、あたりは眩い閃光に包まれていく。

 ──あたりは静まり返っていた。女の声も止まり、閃光もない。そこにあったのは一人の女と、岩のような男の巨人だった。草を身にまとい、髑髏をあしらった頭の装飾。そして、異常に露出が多く、巌となった肉体が顕になっている。
「⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎、⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎……」
「ふふ、ふふふ……わたしのバーサーカー。いや、モンちゃんと呼ぶべきかしらぁ❤︎」

 ここに、七騎目のサーヴァントが召喚され、聖杯戦争が幕を開けたのだった。

  あとがき

 どうも、カガリです。お久しぶりです。最近ちょっと忙しくて更新が遅れました。
 さて、いろんな時空がねじ曲がりましたね。正直、あまり当てにしないほうがいいです。伏線でも何でもない──と思うので。別のFate作品の宣伝とでも思ってください。
 今回、バーサーカー(?)が召喚されましたね。マスターはなんと藤堂を占っていたあの占い師──。書いててヤバいやつだなと思ってました。まあ、Fateって元はエ○ゲーなので、たまにはこういう要素を入れてもいいかなと思いまして。赤く光ったのが下腹部っていうところにも注目ですね。これからこれがどう働くのやら。
 この段階で、セイバーとバーサーカーの真名を看破できた人はかなりすごいと思います。

 この聖杯戦争、これからどうなっていくんですかねえ。筆者の僕でも良くわかっていないという大惨事です。
 次回もお楽しみに。

 かがり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?