「かがり」です。いろいろな方法で物語を表現します。

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  • 【短編集】ともしび

    これまで投稿してきた短編作品をまとめています。

最近の記事

【短編】蛇の目かえし

 「柳の下にいつも泥鰌はいない」とはよく言うが、私は雨の日に柳の木を見つけると、いつもその根方を探してしまう。あの子はもういないと分かりきっているのに。    あれは私が小学校に入学して幾ばくもない頃のことだ。その日は下校してすぐに病院に行くため、母に車で迎えに来てもらう約束をしていた。ただ、学校の駐車場では空調関係の工事が行われており、一時的に教職員以外の駐車が禁じられている。代わりに近くのスーパーで待機してもらい、私がそこへ向かうことになっていた。  私は絶えず垂れてくる

    • はじめてのnote【自己紹介】

       早いもので最初の投稿から1か月が経ちました。私のことをよく分からないまま作品を読んでいただくのもどうかと思うので、自己紹介をさせていただきますね。 はじめまして 私の名前は篝はち(かがり・はち)です。篝火の「火」の音を伸ばすと「ビー=蜂」になるので、この名前にしました。誰かが闇に迷ったとき、その視界を明るくできるような作品提供をしたい、という思いが込められています。    ここでは、文章作品を中心に投稿していきます。たまに絵も描きたいです。オリジナル楽曲もいずれアップしま

      • 【短編】不足

         ぬかるんだ草むらを這っていると、体の上半分、頭から尻尾にかけて温かさが沁みていった。数日ぶりのお天道さんとのお目見えらしい。  晴れた日が続くのも困りものだが、先程までの堰を切ったような、息をするのもやっとの雨も迷惑だ。知り合いも獲物も皆引きこもってしまうので面白くない。  いつも通る道が塞がっていないか、池はどれくらい嵩が増したか等々。周囲の被害を確認しながらしばらくぶらついていると、木の陰から声が聞こえた。樹皮の隙間に隠れられるくらいの小さい虫のようだ。 「やーっと晴

        • 【短編】足

           1か月前に消えたぼくの友達は、蜘蛛になって帰ってきた。 「よう、元気?」 「いや何してんだよ、ここぼくの家なんだけど」  部屋の天井の隅に何か黒い点が蠢いていると思ったら、彼だと分かって文字通り腰を抜かした。糸の端を天井に張り付けて、呑気にぶら下がっていたのだ。 「ここに置いてくれよ。世話してくれなんて言わないし、金もかからないしさ。この間みたいな大雨を、また命からがら生き延びるなんてごめんだね」 「……まあいいけど。きみの家族に伝えなくていいの?」  彼が失踪して多くの

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