致命的要改善点(抜粋)

抜粋なのは全てに言及するほどの手間も時間も取れないからです。

⚪︎ストーリーの運び方

何より致命的なのは他のレビュワーさんのおっしゃる通りの台詞の弾幕です。
さらに致命的なのは「モブに五月雨式に説明させていること」です。
何が不味いのか。
・説明台詞であること
・神の視点(第三者視点)でストーリーが説明されていること
です。

漫画はキャラを動かしてナンボです。
キャラが動かすのは動作だけではありません。
ストーリーを動かすのもキャラです。
神の視点(モブ)で説明されるストーリーとはイコール感情移入の余地のない他人事になるからです。
周囲の証言から「過去をあぶり出す」手法は主にミステリーで用いられます。
これはミステリーだからできることです。
現在進行形のストーリーには向きません。

例えば漫画なら「瑠璃の爪」(山岸凉子)、小説なら「白夜行」(東野圭吾)などです。
どちらも周囲の証言から徐々に過去をあぶり出す作品です。
どちらも主人公の中に読者がどっぷり同化して読む作品ではありません。
何が動機だったのかのベールを周囲の証言から剥がしていく手法です。
読者はそのベールの剥がされていくのを遠巻きの第三者として怖々と覗き見る立ち位置です。
そこに感情移入は(種明かしがされるまで)起きません。
読者を巻き込む手段として強力な武器である感情移入をスポイルする手法になります。
この時点で読者が着いていけるストーリーの流れにはならないことはほぼ確定です。
BLのストーリーなら本当に致命傷です。

あと漫画のストーリーを説明台詞で展開するのは初心者のよくやる間違いとして投稿作品への批評に上げられていることが多いです。
さらにモブは読者には「無視していいもの」と映るのでモブが説明役なのも致命傷です。

⚪︎キャラが外面的にしか作られてない

ストーリー運びと関連しますがキャラが自律的に動いてないです。
ありとあらゆる角度から見た若様の顔が大量にえがかれていますが、本人の内面はついてきてないです。
自分の館が賊に襲われて影武者は惨殺され肉親とも離れ離れになった割に何の感情も動いてなさそうに見えます。
例えば魅力的に書きたければ地下に転がり落ちた時にペット(名前が出てないので仮にシロと呼んでることにします)が無事か心配して必死になるとか。
肉親や臣下や影武者が無事か気にかけるとか。
そういったキャラの内面が全くわからないです。
これも他人事な書き方と言えます。
シロが男の子を連れてきた時も「シロ、無事だったか!」などと可愛がってる面とシロが飛びつくシーンなどを見せないと「懐いてる」ことを読者に納得させられません。

⚪︎アップとロングの構成、配分が不味すぎる

なので今どこで何が行われているのかわかりません。
極端な目のアップは一体どんなロングショットでの場面なのか分かりません。
複数キャラシーンでの距離感もわかりません。
状況が絵で説明されてません。
読者に伝わらない書き方です。
また先程書いたありとあらゆる角度からの若様の大量の顔ですが、この構成配分ではストーリーの理解には寄与しません。
なぜここにこの角度の若様が書かれているのかの必然性がないのにひたすら散りばめられている感じです。
なお、若様のアオリは上手いのに悪役のフカンは全く書けてません。
若様は素敵な参考画像を元に書いてると思われます。
これだとストーリーの理解のための配分ではなく「若様360度堪能ブロマイド」のような感じです。
だから読者には「ああ、ストーリーじゃなくて若様がこんなに素敵なのよ、と言いたいらしい」ということしか伝わらないです。
アップとロングの組み合わせでどんな場面かどんな距離感か何が起きてるのかなどめちゃくちゃ分かり易いのは故鳥山明先生です。

あと、足場の悪い場所でお手々繋いでランランラン、は状況的にあり得ないです。

⚪︎ストーリーを構成するエピソードの取捨選択がされてない

最初のレビューに書いた通りこのストーリーなら3話から若様の一人称視点での描写が適当かと思います。
一人称視点だと若様の内面も書きやすいので感情移入してもらえるチャンスが広がります。
若様視点では見えないエピソード(敵が影武者を惨殺し、影武者であることに気がつく)などはピンポイントの神の視点での補足で事足ります。
思いついたエピソードが全て捨てられないのは読者には優しくないです。
時系列通りすぎて無駄な描写が多すぎます。
不要なエピソードをばっさり切り捨てるというストーリーの作成法は樹なつみ先生も行っていると見たことがあります。

全体として「素敵な若様のビジュアルアピール」に特化していてストーリーはオマケに見えます。
キャラは内面ごとファンがつくものです。
内面の掘り下げが足りないです。
無駄なビジュアルアピールは男の子もそうです。
ストーリーの理解のためではなくキャラのプロモーションに見えます。
それに考証不足、世界観の不統一が相まって読者理解を得るのが至難の業になっているように思います。

以上、特に気になる点だけですが、少なくともこれらが修正されないととても読者には厳しい読み物になるということは念を押しておきます

追記

よくよく読んだらペットのお名前がハヤテさんであることが判明しました。
五月雨式弾幕台詞が苦手のため見落としていましたことをお詫び申し上げます。

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