なぜエロゲーの作中期間は短いのか?

――という素敵な質問をいただきました。
https://peing.net/ja/q/6fb1c86d-c4bb-4d0d-8ddf-e602f741499a

そのご返事です。

物語の技術で、「時間を飛ばす」というのがあります。たとえば新学期が始まって、自己紹介から物語がスタートするとします。クラス30人や40人分、全員やりますか? 書き手としてやりたくないでしょ? 全部やっているやつ、読み手としてかったるくて読みたくないでしょ? だから、飛ばすんです。つまり、時間飛ばしです。

さて、自己紹介が終わって、次にどうしますか? 1時間目? その次は? 2時間目? 次は3時間目?

小説だともう投げ出したくなります。いつになったら授業が終わって放課後になるんだ!

小説では時間は比較的飛ばすんです。印象的なシーン、見せたいシーン、見せる必要なシーンを、適切に時間を飛ばして適切につないでいくんです。シーンの編集能力が要求されるということですね。

でも、エロゲーは「日めくりカレンダー方式」と言われています。小説なら時間を飛ばすところが、全然飛ばない! 1時間目⇒休み時間⇒2時間目⇒休み時間⇒3時間目⇒休み時間⇒4時間目⇒昼休み⇒5時間目⇒休み時間⇒6時間目⇒放課後⇒夜の自宅

日めくりカレンダーをめくるように時間が進行していきます。そして、やっと1日終了です! 本当にやっと!

そしてフェードの後に翌日になります。でも、翌日も――

1時間目⇒休み時間⇒2時間目⇒休み時間⇒3時間目⇒休み時間⇒4時間目⇒昼休み⇒5時間目⇒休み時間⇒6時間目⇒放課後⇒夜の自宅

全部が日めくりカレンダーのように進行するんです。時間飛ばしの技術が使われていないんです。そして、時間飛ばしの技術を持っているシナリオライターは、超少数なのです! ぼく個人的なイメージだと、業界に数人ぐらいしかいない感じ。数人どころじゃなくて、2、3人だったりして(笑)。時間飛ばしは、それくらい難易度の高い、ハイレベルな技術なんです――小説家は普通に使ってるけど。でも、素人が小説を書き出した時、この時間飛ばしで結構苦しむんです。時間を飛ばせなくて、物語が進まない!

ほとんどのエロゲーは、恐らく時間飛ばしがありません。ないので、なかなか物語が進まない。日めくりカレンダーでリアルにもっと長い期間の恋愛をやろうとすると、テキスト量がぁぁぁぁぁ、それを書くための時間がぁぁぁぁぁぁぁ。

リアルにやるのは無理です。元々物語はリアルを描くものではなく、リアルさを感じさせるためのものですが、リアルさを感じさせるのでも、相当期間が必要です。そしてそれを日めくりカレンダーでやろうとすると、冗長すぎて死にます。いつまで経ってもゴールに辿り着けなくて死にます。なので、期間を圧縮します。作中の期間を、日めくりカレンダー方式で処理しうるものにします。つまり、短くします。当然、無理矢理感が出ます。それを違和感として覚えていらっしゃるのだと思います。

ちなみに『巨乳ファンタジー』では、ちょくちょく時間が飛んでいます。つまり、時間飛ばしの技術が使われています。『巨乳ファンタジー』シリーズは、日めくりカレンダー方式では叙述されていません。

ぼくが本格的にエロゲーで時間を飛ばしたのは2003年発売(シナリオを書き上げたのは2002年)の『Love Split』です。出会って付き合うまでが2カ月。付き合ってからが10カ月。のべ12カ月。『ときめきメモリアル』の場合は、システムが時間をつくります。でも、ノベルゲームでは、書き手自身が書き手自身の技術によって時間を飛ばさなければならない。1年は相当難しいのです。それにチャレンジしてうまくいったのが、『Love Split』でした。あまり売れませんでしたが(笑)。

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作家。ゲームシナリオを書いて24年。中世国際政治が舞台となるゲームをつくっています。高校生が城主になって活躍するラノベも書いてます。ゲームシナリオのハウツー本も書いています。拙著『非実在青少年論』の中で、東浩紀のデータベース消費を乗り越えるウロボロス消費を提唱しています。
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