中国のスパイ気球を巡る各国の諸事情

アメリカの北西の方にあるモンタナ州で謎の飛行物体が発見され、大騒ぎとなった。
これが中国が放ったスパイ気球であるとして大騒ぎになっている。

アメリカ政府は2023年2月1日時点で、同スパイ気球の存在を把握しており、戦闘機で打ち落とすべきか否かについての議論がなされたということである。
2月2日の時点で高度が地表約6キロメートルまで下がってきていたことから、地上から肉眼でも確認されるようになったために大騒ぎとなる事態となった。
なお、一般的な旅客用の飛行機は高度10キロくらい、戦闘機は高度20キロくらいを航行することを考えれば、地表6キロというのは、かなり低い高度であったことがわかるだろう。

地上から当スパイ気球を見上げた写真

なお、このスパイ気球の大きさは横幅36メートル、機材も含めた高さも36メートルであったという。
横幅36メートルというのは、大型バス3台が連なった長さであり、高さは36メートルと言えば、十数階建てのビルに相当する。
そんなものをむやみに打ち落とせば、巨大な謎の物体が地上に落下し、大変危険であることから、当初、どうすべきか議論が分かれたという。

スパイ気球の概要:大きさ36m×36mで太陽光パネルやカメラ、センサー、レーダーを有する

アメリカは発見当初より、同気球は「中国のスパイ気球である」と断定した。
それに対して、中国政府は珍しく「中国のものであるのは確かだ」と認めた。
中国政府は通常、あらゆることに関して自身の関与を否定するものなのだが、何故か今回の気球に関しては関与を認めた。
しかし、中国政府は「確かに中国のものだが、中国の民間企業による気象調査のためのものだ」と発表した。
これに対し、米バイデン大統領は「同気球は気象調査のためのものなので、問題ないですよ~」と公言した。

にも関わらず、米国は2月4日にも同気球を戦闘機によって撃墜したと発表し、中国政府は2月5日に「許せない!強く抗議する!」との声明を中国外交部を通じて発表した。
すると何故か、「気象調査目的だから何も気にしなくていいよ」と言っていた米バイデン大統領は「米軍は撃墜計画に成功した。撃墜を成功させたパイロットたちを称えたい。」として、発言内容を180度転換させた。


今回の各国の動き、さらには米国内においても様々な動きに違いがあったことは非常に面白い。
日本の保守派を中心にバイデンが中国を擁護して「気球を打ち落とさなくても大丈夫」とした理由はバイデンが中国に対して弱腰だからだと分析しているようだが、それ以上にバイデンには同気球を打ち落として気球の分析をされては困る理由があったものと思われる。
同スパイ気球は日本またはロシアの上空を通り、カナダを通って米国の北部から米国に侵入したものとみられているが、日本、ロシア、カナダのそれぞれ特段の反応を示していないが、これらの国がどのような反応をするかによって、様々な事実が浮かび上がってくるだろう。



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