[清水量子 放送大学編] 量子論を記述するための数学

主に線形代数のことですが、知らない方、忘れた方に説明します。

複素数zの複素共役
z* と書きます(p186の例12.5)
「虚数項の符号を逆にする」では、
複素数からなる複雑な式の場合、わけが分からなくなります。
全てのiを-iに置き換えると考えれば、式でもOKです。
式f(x) が与えられたとすると
f(x)内の全てのiをパラメータaにした式を g(a,x) とすると
f(x)=g(i, x) であり、その複素共役は g(-i, x) です。

ベクトル空間という集合
中高で習った集合は、すでに元ありきで、
その数が一定(はじめから有限個とか無限個)で
固定的なものです。しかし、
ベクトル空間は、元の任意数倍と和が、また元になる
という規則で、たちまち無限個に膨張する。
これを、「空間を生成する」「空間を張る」と言いますが、
この違いが、同じ集合なのに違和感を感じるのだと思います。
例として「実数の2つの組や複素数の2つの組」も
ベクトル空間になります(R^2 や C^2 と書く)
また、「有界な関数」は
その定数倍と和が、また有界な関数になるので
ベクトル空間になります(関数空間と呼ぶ)
ということは、有界な関数は、(無限次元の)ベクトルです。

「元の任意数倍」の数が実数なら、実数上のベクトル空間R^n
数が複素数なら、複素数上のベクトル空間C^n
数が有理数なら、有理数上のベクトル空間Q^n
といいます。
ベクトル空間の元と元の関係に「内積」を定義したものは、
(複素ベクトル空間C^n なら「エルミート内積」です)
実数上の内積空間R^n なら、実ヒルベルト空間、
複素数上の内積空間C^n なら、複素ヒルベルト空間、
と言います。
有理数上の内積空間、例えばQ^2 で
(1, 1) と (1, -1)の和は、(√2, 0)であり、これはQ^2の元
ではない(完備でないといいます)のでヒルベルト空間
ではないです。完備内積空間がヒルベルト空間です。

直接の関係はありませんが参考までに:
ベクトル空間の元と元の関係に「距離」を定義したものを
距離空間といいます(例えば、ユークリッド空間)
また、ベクトル空間より定義が緩く、ノルム(ベクトルの長さ)
だけを定義したものをノルム空間、それが完備なものを
バナッハ空間といいます。

行列とその積
数を縦(列)横(行)に並べた組を行列と言うことにします。
行列の足し算は自明で、各項を足すだけです。
掛け算は、前の行列の行に、後ろの行列の列を横にして
掛け合わせていきます。
詳しくは、以下を見て下さい。

行列の積は、上の計算でわかるように、一般に非可換(AB≠BA)です。
また、演算子(例えば微分演算子)も、無限次元の行列で
表わすことができます(証明略)

ベクトルの積
ベクトルの積でも、行列の積と同じ手順で、
前にくる行列を「1行n列」後ろのを「n行1列」とすれば
ベクトルの内積: <A|B>
前にくる行列を「n行1列」後ろのを「1行n列」とすれば
ベクトルの直積: |A><B|
になります(テンソル積というのもありますが略します)
実ベクトルの自分自身との内積は、ノルムの2乗になります。
複素ベクトルの自分自身との内積も、そうなるよにするため
複素ベクトルでは、前にくるベクトルの複素共役との
ベクトルの積とします。
これを、「エルミート内積」といいます。

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