夏休みに

観客の居ない螺旋劇場で男と女は演じる。

男はボロを纏い、女は大げさな程の白装束。

巨大な胃の底に沈殿して停滞する泥。

空は見えない。

まだ見つからない。何が? 海と溶けて消える空の縁。

最近はアルコールの匂いが蔓延している。

舞台は終わらない。居ない観客のために。いつまでも。

培った夢は、夏の倦怠の肥やしになる。


 コンビニの前でシケモクからこぼれた葉っぱを運んでる蟻を眺めてたらね、空がビカビカ光やがるんだな。そういえば昨夜は雨だったし、道路も空気も湿っぽくてすっきりしない日だと思ってたんだがね。どうやら台風だったらしいじゃないか。すっかり忘れちまってたよ。一日中部屋に籠りっぱなし、ヘッドホン着けっぱなしってのもよくねぇもんだ。そのうち北の方の実家からラインがきたのね。台風で大変だってことと、そっちは大丈夫だったかってさ。なんにも気にしちゃいなかったよ。

 そういや世間はオリンピックで盛り上がってんだね。テレビなんてものは俺の部屋にゃねぇからさ、いまいちそれもわからんね。誰がどの種目でメダル取ったとか、そういう話題ね。最近プロ野球も無いとおもってたらそういうことだったらしい。オリンピック種目に野球の復活、万歳。そういや初戦はサヨナラ勝ちだったらしい。じゃんね。万歳。

 夏休みになれば自然と人とも話さなくなる訳だが、世間の状況のこともなんも知らんなんてな。なんか急に焦ってきたよね。なんだか寂しいよね。んでもって悲しいよね。夏が来ちまったからさ、そんな不似合いなこと言ってらんねぇのにね。

 noteって高校の頃に実はやってたんだけど、誰も読まんよね俺の文章なんかさ。なんでまぁまた始めたのかっていうと完全に気まぐれよ。もう夏だよ。意外と夏ってないもんよ。なんたってまだ20回も体験してねぇ訳だしさ。無意なのは悲しいじゃない。

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