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自分へ

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できる限り、わたしが一瞬でもこころをゆるしたひとびとに、この手紙が読まれてほしい。わたしが何者であるか完全にわからなくなる前に、わたしの一瞬を委ねた他者がわたしが何者であったかを…
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2024/7/1

堕ちるところまで堕ち切れて、失うものも全て失ってしまった。友人も家族もその概念、そのものがもう手元に残されていない。これが一時的なものではなくてもう長いこと続いていて、終わりがあるのかわからない。誰か何か私を救ってくれるのかと思ったけれどそれを待っていたら、目の前を走る車に飛び込みたくなり電車のホームに落ちたくなった。他者を救うことでしか自己は救えないのだと思ってバイトとか就職先もひとに直接関われるものにしたけれど、それまで自分の生命維持を信じることができない。泣けなかったの

2024/6/24

この生き方がいつまで続くのだろうか もう半年以上が経った。一度もよくなったときはなく、1日1日着実に悪化していく。たすけてほしい、と打って消した友人へのライン、カウンセラーへの電話代、自分を騙しながら1日を生き延びる。この精神状態でなぜ生活が送れているのか不思議だ。精神病棟にいる友人が、ここにはキリストの本が無いと嘆く。信じるものはあるのにそこに救いがない。もうだめだ、無理だ、ここで終わるのか。あと37日で授業が終わる。今日という日も、明日も、明後日も、生きているか不確かにも

2024/6/19

結局、1日1日が過ぎ去るのが遅く、このつらさは着実に1日1日と重くなってゆく。誰も救えなかったし救ってくれなかった。救えるものではなかった。死ねなかった日を何度も思い出して、その時よりつらい今なら死ねるのだろうかと思うが死ぬのにもエネルギーが必要で、確信が必要だった。 食べても吐いてしまう、体重が減り華奢な背中と薄い胴体で、この夏は超えられるのだろうか。未来の予定を立てることが難しく、かろうじて学歴は残さなくてはと大学に通っている。今日、明日、明後日、いつ終わりにしてもいい

5/26

家のドアが開かなかった。 鍵は持っていたけれど内側からロックがかかっていた。 ドアの前でしゃがみ込む。 携帯は早朝5時の終わりくらいだったかと思う。 今日は死ねる。 もう私には何も残されていないと何度も思った。 私は家の鍵と携帯をドアの前に落とした。 家族が眠っているドアの前で跪いた。 感謝だったのか謝罪だったのかわからなかった。 その足で河川敷へ向かった。 早朝はまだ人が少なかった。 誰も私のことを気にしないと思った。 川の音も犬を散歩している人の足音も聞こえなかった。 た

5/25

午前5時に目が覚めた。 隣に眠る妹の頬を片手で包んでみた。 妹がわたしの手に気づいて少しニヤついた。 今日は死ねると思った。 今日は大切な友人らに久しぶりに会う日で、 今夜は朝まで日本に会いにきてくれた友人とクラブで盛り上がる予定で、 今日は死ねると思った。 自信があった。 妹の唇が上がって私は幸せになって 死ねると思った。 7時間ぐっすり寝られて、 家族より早く5時に起きられて、 大切なひとびとに会える今日は 私に自信を与えてくれて 今日は死ねると思った。 朝起きて今日は

この春は、花が、丁寧に沈む静寂を眺めていたい

黒い海に星が光り浮かびあがる 友人の遺書を読む何度目の夜か この春は、花が、丁寧に沈む静寂を眺めていたい 自分がどこから来てどこへ行くのか、世界における自分の文脈を知らずにある一点としてこの世に産み落とされたかった。自分以外は他者であると、そう思い切りたかった。私の存在理由が愛でないのなら、私が存在しないこともありえたのに、それでも実際に存在してしまった自己の実存へ、その非必然性を最後に解き明かしたい。私が存在しなくてもよかったと、そう確かにしたい。そしたら私は私ではない「

2023.12.27

自分へ この22日間、毎日、それが朝だろうが夜だろうが昼だろうが、決まって眠りから覚めると、ここは現実か地獄かを自問自答し続けてきた。ここは現実で地獄である。そしてそれはこれからも問い続けるだろう。 父が死ぬはずだった12月。 48時間、全身全霊で体を上下に激しく動かし心臓を力ずくで叩くように呼吸をする人間の姿は、苦しく、辛く、暴力的で、生々しく、動物的で、凄まじい。余命宣告から蘇った彼は今、生と死では語ることすらできない状態にいる。 何度目の夜だろうか。 場所と時間を

2023.12.12

わたしはわたしにあまり長くない手紙を書こう 昨日、わたしのお守りのような友人らに会って、ようやく、重荷が肩から降りた。全てではなかったけれど、こうして言葉を紡ぐことができるようになった。彼らに会って、わたしはひとの前で泣けないことを知った。悲しみたい、込み上げるものを溢れさせたい。家の前で電話をかけた。声を聞いた瞬間、泣いてしまった。言葉にもならない音が自分の口から出てきた。少しずつ話すことができた。 途方もない やっと、ようやく、 自分のこと、失った友人のこと、など。