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自分へ

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できる限り、わたしが一瞬でもこころをゆるしたひとびとに、この手紙が読まれてほしい。わたしが何者であるか完全にわからなくなる前に、わたしの一瞬を委ねた他者がわたしが何者であったかを… もっと読む
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この春は、花が、丁寧に沈む静寂を眺めていたい

黒い海に星が光り浮かびあがる 友人の遺書を読む何度目の夜か この春は、花が、丁寧に沈む静寂を眺めていたい 自分がどこから来てどこへ行くのか、世界における自分の文脈を知らずにある一点としてこの世に産み落とされたかった。自分以外は他者であると、そう思い切りたかった。私の存在理由が愛でないのなら、私が存在しないこともありえたのに、それでも実際に存在してしまった自己の実存へ、その非必然性を最後に解き明かしたい。私が存在しなくてもよかったと、そう確かにしたい。そしたら私は私ではない「

2023.12.27

自分へ この22日間、毎日、それが朝だろうが夜だろうが昼だろうが、決まって眠りから覚めると、ここは現実か地獄かを自問自答し続けてきた。ここは現実で地獄である。そしてそれはこれからも問い続けるだろう。 父が死ぬはずだった12月。 48時間、全身全霊で体を上下に激しく動かし心臓を力ずくで叩くように呼吸をする人間の姿は、苦しく、辛く、暴力的で、生々しく、動物的で、凄まじい。余命宣告から蘇った彼は今、生と死では語ることすらできない状態にいる。 何度目の夜だろうか。 場所と時間を

2023.12.12

わたしはわたしにあまり長くない手紙を書こう 昨日、わたしのお守りのような友人らに会って、ようやく、重荷が肩から降りた。全てではなかったけれど、こうして言葉を紡ぐことができるようになった。彼らに会って、わたしはひとの前で泣けないことを知った。悲しみたい、込み上げるものを溢れさせたい。家の前で電話をかけた。声を聞いた瞬間、泣いてしまった。言葉にもならない音が自分の口から出てきた。少しずつ話すことができた。 途方もない やっと、ようやく、 自分のこと、失った友人のこと、など。