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【読書感想】物語 ウクライナの歴史 ヨーロッパ最後の大国

グーテンターク!皆さまこんにちは。フランクフルトのYokoです。
今日は先週から少しずつ読んでいたこの本を読み終わりました。
すごく良い本でした。ウクライナの土地をめぐる様々な物語。そしてなぜウクライナの人々にとって、自由そして民族としての独立が大事なのかまさに「物語」として知ることができました。今のウクライナのあれこれが理解できるようになりました。20年前の本ですが内容は全く古びていません。むしろ今慌ててウクライナを知りたい日本人(私)が今読むのにぴったりです。

元々小泉悠さんがツイッターで勧めておられたのが読んだきっかけです。

コンパクトながらウクライナの土地にまつわる複雑な歴史、そこに生きる人々の独立にかける思いの深さを歴史から知ることができました。20年前の発行ですが、今ウクライナを知るのはやはり歴史を知ることが大切と痛感させられます。ウクライナの蘊蓄ではなく、またコサックよりもずっと前のスキタイ族の時代から説き起こしてあるのがよかったです。歴代の偉人紹介がウクライナ紙幣で「お札の人」になっている人々にフォーカスしてあるのは勘所を押さえてうまいなと思いました。そしてロシア側からみたとき、なぜ彼らがウクライナを不可分(内部に取り込む形で)にしたがるのかよくわかりましたし、同時にウクライナがなぜそれを受け入れられないのかウクライナの民族主義の萌芽はどこからきているのか体系的に理解できたのもよかったです。プーチン大統領がウクライナ東部の人々を極東に強制移住させているのは、帝国主義時代の政策をなぞっていることに戦慄しますし、クリミアへのこだわりはその帝国主義時代の執着、そしてソ連崩壊のきっかけを与えてしまった「負の遺産」をロシアが「取り返す」設定なのだとわかります。今ロシアがそれを行うのは完全に国際法違反でろしは侵略国家ですが、プーチンの意思決定があるロシア側の歴史観によって動かされていることは明らか。

また18世紀末のポーランド分割、トルコの黒海北岸からの撤退以降第一次世界大戦までの約120年の間ウクライナはその土地の約8割がロシア帝国に、残りの約2割がオーストリア帝国に支配されるのですが、後者の地域でもロシアへのシンパシーないことと相関があるようでした。そして意図的な大飢饉とロシアからの入植者、その影響はもちろんロシアへのシンパシーにも繋がっています。ウクライナは穀倉地帯で工業地帯で、資源も豊富。そして地政学的に重要で温暖なクリミア。常に大国の思惑に振り回されてきた苦難の歴史がありました。。。

今ウクライナを支援している国のうち、英国、フランス、トルコ、ポーランド、リトアニア、皆ウクライナを支配したか戦争で対峙したかという国。またカナダがなぜ積極的に支援するのかはウクライナからのカナダへの移民の歴史があるからで、ウクライナからユダヤ系移民が多くアメリカに逃れた歴史もあるというのは、先日のゼレンスキー大統領による議会演説を聴くために招待されたユダヤ人コミュニティ代表者に壇上からわざわざ呼びかけて挨拶していたのも納得です。みな繋がっている。

さらに本書は日本の外交官、軍人による諜報活動を含めたエピソードが織り交ぜられていることで日本との関わりを感じながら読めたこともよかったです。

蘊蓄の羅列でない、「物語」してのウクライナの歴史がコンパクトにまとめられていてとてもよい本でした。お勧めです。

本書で取り上げられている英雄はお札になった人物であることに気づいたと書きましたが国際通貨研究所のメルマガで 『通貨「フリヴニャ」にみるウクライナ史の光と影』というタイトルのコラムを見つけて面白かったのでリンクをご紹介しますね。↓

https://www.iima.or.jp/docs/merumaga/2022/20220401fujisue.pdf

今日はポーランドがウクライナにレオパルト2戦車を供与すると発表した件にからんで、製造国ドイツの移転承認をどうするのか論戦というテーマがヘッドラインでした。副首相は今日他国の進む道にドイツが立ちはだかることはできないという表現で承認に前向きなシグナルを出しましたが首相の判断はまだです。来週20日には米軍基地のある独ラムシュタインでNATO国の会議が開かれるのでそこが判断のリミットではと考えられています。承認するように英国やポーランドがかなりのプレッシャーをドイツにかけており決断に注目です。

一方でランブレヒト国防大臣はウクライナに送ると決まったマルダーを視察。かなり大きい。
ニックネームがEisenschweinアイゼンシュヴァインで鉄のブタ。

さて、今日はあまりよい献立が思い浮かばず…困ったときのバウワートプフ、農家風煮込みをつくりました。昨日とあまり色が変わりませんが、美味しくいただきました♪

それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!
Bis dann! Tschüss! ビスダン、チュース!(ではまた〜)😊

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