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アメリカの高校の不思議

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アメリカの高校に1年勤務した経験から、日本と違うこと、驚いたこと、初めて知ったことのまとめ。
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黒船ペリーから見た日本

アメリカの高校で教えていた時に、珍しい経験をしました。日本に開国に迫った黒船ペリーのご子息が講演会に来校され、お会いする機会があったのです。 英語でペリーさんのことはCommodore Perryと言います。名前からして軍人風な威圧感のある方がくるのかと思っていましたが、実際に現れたのはジーンズにシャツ姿の白髪の普通のおじいさんでした。(当たり前?) ご子孫のペリーさんが行った講演会はもちろんアメリカの高校生向けのもの。私たちが歴史の教科書で「日本にやって来た」対象として

「日本人が親切な理由」はアメリカでは教えられない?

アメリカで日本語教師の研修会に出席した時に、これを答えとしてアメリカの生徒に教えるのはNGだと言われました。 以下は「なぜ日本人は親切なのか」という知恵袋のベストアンサーだそうです。 --- 日本人は困っている外国人を見ると助けます。日本人はとても親切なのです。これは日本の国民性です。日本人は小さな島に住んでおりお互いが平和に過ごさないといけないので、でお互いに親切にしています。その結果、日本人は他人に優しいだけでなく争い事を避けようとします。他の先進国に比べてて日本では

ソクラテスメソッド

アメリカの学校で勤務していたときに、社会科の先生がよく使っていた教授法はソクラテスメソッド(ソクラテス式問答法)というもの。ソクラテスセミナー(Socratic Seminar)とも言います。結構、一時期流行ったらしいと聞きました。 ソクラテスメソッドは、様々な意見を聞いて自分の考えを整理するための手法で、あるトピックに対して良い悪いの判断ではなくその背景にある事情を理解したり、自分だけの意見を主張するのに終始せず多様な意見に耳を傾け議論するための練習です。クリティカルシン

日本のブラック校則に腹が立たなくなるまで

渡米前は生徒指導が苦痛で仕方ありませんでした。私自身がその価値を全く認められなかったからです。「生徒指導をしたくない教員」なんて組織で働く人間として失格でしょうが、これからの子どもたちに必要なのは、細かいルールに疑問を持たすに従わせることでも、教師の指示に従わない事を頭ごなしに叱る事でもない。そのような指導は無意味だと思っていたからです。もちろん、その考えは今も変わっていません。 髪が黒でないと学力が下がることはないし、白い靴下を履いてないからと言って授業態度が悪くなる訳で

爆発する学ぶ楽しさ

アメリカの高校で日本語を教えていた時、初めて日本語を勉強する14歳の男子生徒がいた。超明るいポリネシア系の生徒で、日本にいたらすぐにクラスの人気者になっていそうなほど面白くて、自分の感情を素直に表現する生徒。自分の感情をみんなの前で溢れんばかり表現する生徒だった。 耳で聞いて学習するのがとても優れている明らかなAuditory Learner(聴覚タイプ)で聞いたように話し、それを自分が使いながらも急速に学習して行った。 特に、ひらがなやカタカナの練習をし始めたときの彼の

先生に感謝する日

アメリカには教師の日(Teacher Day)と先生に感謝する週間(Teacher Appreciation Week)というのがありました。5月の最初の火曜日がその日に当たります。 娘の通っていた小学校では、保護者の代表が寄付を集めて先生へまとめてプレゼントをしたり、個人で贈り物をしたりします。学校にもよるのでしょうが、結構高価な贈り物をしている保護者もいて、すごいな〜と思ったり。娘は先生が好きな柄のポーチを選んで手紙と一緒にプレゼントしました。とても喜んでくれたようで、

アメリカ版21世紀スキル P21

実は、アメリカにはACT21Sとは別の21世紀スキルフレームワークが存在しています。 21世紀型スキルパートナーシップ(Partnership for 21st Century Learning (P21))と呼ばれているもので、2002年に国内の教育やビジネス、政治関係者らによって作られました。ACT 21Sが2009年に始動したことを思うと、2002年に21世紀スキルの概念が出来上がっていたアメリカはさすがです。 P21には大きく分けて3つのスキルが提示されています。

アメリカの高校とラマダン

イスラム教徒の断食月であるラマダンが始まりました。 2020年のラマダン期間 4月23日(木)〜5月23日(土) アメリカで勤務していた高校でもイスラム教徒の生徒がかなりいたので、ラマダン期間になると特別な配慮がなされていたのを思い出しました。 ラマダン期間、日中は食事をすることができません。ラマダン中にたまたま校外学習の引率をしたことがありましたが、イスラムの生徒は一緒にお昼を取ることができずに外で待っていたのが気の毒でした。 育ち盛りの高校生なのに、学校にいる間に

ご褒美でモチベーションアップ、アメリカの高校

アメリカの高校に勤務していて、ご褒美(prize)をあることがモチベーション作りとして使われているのを何度も目にしました。日本ではALTがお菓子を授業中にあげることですら、賛否両論となることも。「何かがもらえるからやるわけではなく、自分のためにやる」と言った考えが暗黙のうちに共有されている日本人的には、笑えることも多かったので、いくか記録しておきます。 ① テスト PSATという日本のセンター模試に当たるようなものを校内受験した際、生徒一人一人にクッキーが配られました。試験

グロースマインドセット

アメリカの高校で勤務していた時、先生がたは生徒のグロースマインドセット(Growth Mind-Set) を育成することの重要性をよく口にしていました。growthとは成長していくこと、mindsetとは思考傾向のことです。グロースマインドセットとはどんどん成長していく、いわゆる向上心のことで、スタンフォード大学のキャロルドゥエック教授が書いた「Mindeset」で有名になりました。 この本によると人にはグロースマインドセット(Growth Mind-Set)とフィックスト

DI=学びの個別化

アメリカの教育を語る上で、DIがなんども出てくるので分けてページを作ることにしました。 Differentiated Instruction(個別化教授法) DIとは生徒一人一人の学びのペースに合わせたタスクを与えることで、生徒が自分のペースで学習が進められるような考えです。 個別化された(Differentiated) クラスでは、どの学びのレベルの生徒でも取り組むことができる内容が用意されています。もちろん一緒に取り組むこともありますが、能力の低い生徒がタスクAをし

高校の芸術科目

私が高校生の時は、1年生の時は音楽、2、3年生は書道か芸術から選択しました。もう20年以上前ん話ですが、高校の現状は今もそんなに変わっていません。 日本の高校生が芸術科目に触れる機会が限られていることが残念だなとは以前から思っていましたが、アメリカの生徒と比べてみるとつくづく芸術を学ぶ時間や機会が少ないように思うのです。 アメリカ高校では様々な芸術科目を選択としてとることができました。 写真、演劇、吹奏楽、ダンス、オーケストラ、コーラス、ビジュアルアート、アートなどなど

アメリカの大学入試制度

言わずと知れた日本のセンター試験制度。新制度への移行も注目されています。(というか、このままどうすんねん) アメリカはどうかというと、もちろん統一試験はありません。アメリカで大学に進学するときに必要なものは主にこの三点セット。 ①推薦状 ②志望動機(エッセイ) ③SAT(またはACT)のスコア SAT(Scholastic Aptitude Test)かACT(American College Testing)かはどちらでも大差は無いようですが、州によって採用しているの

出来る生徒を伸ばすアメリカvs底上げ力の日本

アメリカの学校で勤務して気づいた最も大きなことは、日本の教育には底上げ力が半端なくあると言うこと。そして、逆にいえば出来る生徒には特別な事は何もしていない、ということ。 それに最初に気づいたのはアメリカの先生からの質問でした。 「日本では、出来る生徒を更に伸ばすためにどんなことをしていますか?」 「・・・。」 「うーん。なんてこった、特に何も思いつかない・・・(涙)。」 教室で40人を見ていると、気になるのは「できない子」の方。教師が気になるのは欠点を取らせないように