敬老(真ハ)

 私には祖母がふたりいる。母方の祖母はもう5年以上前に亡くなったが、間質性肺炎をやるまではマイルドセブンを日々吸っていたし、肉を好んでおしゃべり好きで、晩年になるとデイサービス施設で国士無双をアガり、満面の笑みで写真に映っていた。最期は家に帰った時で、母がすこし目を離した隙に昇天していたらしい。夏で、私が仕事で島流しに遭う直前のことだった。

 父方の祖母はよく動き回っている人で、社交ダンスに出かけてみたり友達とお茶をしに行ったりと元気なもので、しかし携帯を意地でも持ちたくないらしく、なかなかアポイントの取れない人である。今年で九十になる。死んだらこの家をやるから建て直して住め、と熱烈に勧めてくる。まだボケても弱気にもなっていないので当分先のことであろう。

 せっかくなのでたまには、という思いで電話をしたのである。祖父は写真でしか見たことがないし、優しく喧しく温和で猛烈な祖母も残すところあとひとりしかいない。子供の頃は実感なく「長生きしてね」などと宣っていたが、やはり長生きしてほしいと思うものであるなぁ。来月会いましょう、と約束した。その時までに無職を脱せているともっといいのだけれど。そういう敬老の日でした。


-----------------------------------
X:@hashie_san
pixiv:@hashierin
Twitch:hashie3
note:hashie_san