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本物の科学は人を救う――似非科学ブームのなかで作家がどうしても伝えたかったこと

『賢者の石、売ります』を改題して文庫化された『科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました』ですが、おかげさまで単行本の時よりも多くの方に読んでいただいているようです。

この小説は似非科学商品を製造する企業に勤める、とある科学ファンのサラリーマンの物語です。なぜこのような物語を書くに至ったか、その経緯や思いを文春オンラインにてインタビューしていただきました。note記事のタイトルにしたのは、インタビュー記事の副タイトルです。ぜひお読みください。

「なぜ人はエセ科学的に惹かれるのだろう」トンデモ医療ブームのなかであえて作家が書いたこと

この小説を書く前に読んだノンフィクションがいくつかありますので、ご紹介しておきます。

毎日新聞科学記者によるSTAP細胞事件を書いたノンフィクションです。果たしてあの論文は捏造だったのか。Amazonのレビュー上でも論争が繰り広げられています。

アメリカの科学機関ベル研究所で起こった論文捏造事件を書いたノンフィクションです。NHKの特集番組が元になっています。STAP細胞事件との類似性に驚かされます。私はこれを電子書籍で買ったのですが、読みはじめたら最後、スクロールする手が止まりませんでした。

病気で亡くなった遺体を冷凍して未来を待つ。そんなアルコー延命財団に潜入した救命救急士のルポタージュ。最初は似非科学への義憤にかられる著者ですが、あまりにも財団の運営が杜撰なので「似非科学なら似非科学でもいいから仕事はちゃんとやりませんか?」という方に怒りが向いていくところが、仕事人間として非常に好感が持てます。が、けっこう怖い(スティーブン・キング級)ので苦手な方にはお勧めしません。

いずれも一般人からは遠い世界で起こった「偽物の科学か否か?」を問う事件ですが、組織の中で似非科学商品がどう生まれていくのか、そのメカニズムは一般企業と変わりありません。そこで働く人たちの心理も同様です。似非科学を語る上で押さえておきたい三作です。