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通販サイトの魔の手

おかしいやろ。ホンマおかしいやろ。
なんでこんなに期間限定セールを毎日毎日詰め込むのか。夏の暑さと謎の感染症のダブルパンチでついに頭がイカれたんか!?と、とある通販サイトについて考えながら、日々過ごしている。

ことの発端は、メールマガジンに登録したら1000円割引券あげますよ〜という企画だった。
私は締め切り1時間前に応募をした。
そして無事応募を終え、スマートフォンのバーチャルな画面には、使用期限まで30分を切った1000円割引券が表示された。

え!?まさかの応募締め切りと使用期限が同じ!?
そんな納豆一年分が当たって届いたら、全部同じ賞味期限の納豆が365個届いちゃった的なやつですかね。
私の頭は、もうどうしようもならないくらい混乱した。

仕方がないのでバーチャルな買い物カゴにバーチャルな商品を詰め込んだ。
そして届いて気がついた。
半分は要らないものだった。

あーあ、久しぶりにやっちまったなぁと思う。

私の利用する通販サイトはほぼ1社で、有名な密林などは利用しない。
恐ろしい魔の手から逃れるため、取引するのは1社と決めている。色々な意味で密林と化したあの場所には近づかないつもりだ。
それに、夫は密林となんらかの繋がりがあるようなので、いざとなれば
「ドラえもん〜どこでもドア〜」的なノリで、密林にダイブすれば、密林産の物資は手に入れることができる。

そんなわけで今後も密林とか、楽天的になれちゃう何かとか、社長がゾゾっとするような女と付き合って別れて、挙げ句の果てに宇宙に行くようなサイトには、今後もお付き合いはしないつもりだ。
全てはその、巧妙な魔の手から逃れるために。

実は、やっちまった後には続きがある。
商品が届いた後、値段と品質を確認して気がついいてしまった。コレ、地元の訳あり品を扱う衣料品で買った方が確実に安いなと。

私は迷った。が、それは実質5秒足らずだったと思う。例の、地元訳あり品商店と比較し、残念ながら負けてしまった商品の返品するかしないかについてだ。
結局、返品する事に決めた。
1000円クーポンは無きものになるが、明らかに高いモノを買うよりマシだ。更に送料も払わなければならないが、マシだ。マジだ。マシだった。

スマートフォンを立ち上げ(今はなんで言うの?セットアップ?違うよね)通販サイトへアクセスし、返品手続きを開始しようとした。
するとだ。
薄緑の爽やかな画面が立ち上がり、2日間限定ポイントプレゼントの文字が浮かび上がった。

え、なにこれ。
またキャンペーン?いくらなんでもずっとキャンペーンしすぎやん。
私はそう思った。
そして、キャンペーンの詳細を見て思い出す。
以前からとんでもないことになっている、洗面所の物入れを早急に替えねばならない事をだ。

確かにこれは得だ。おそらくこの2日間に注文を済ませるべきだとかんじた。
急いで夫と採寸し、あーだこーだと言いながらその物入れを注文した。
対象となる800ポイントは約ひと月後に手に入るらしい。

やった!!これはよい買い物をしたと思った。
そして大口の買い物をしたその日は、別の買い物をしても送料がタダになるので、いい加減死にかけている自分のパジャマを買い換える事にした。
そして通販サイトの便利なシステム、返品交換制度を利用し、返品する物たちを自分のパジャマへ変えたのだった。
(新しく注文したパジャマを届けにきた人が、返品の品を持っていってくれるシステム)
そして送料はタダになり、金額が変更された請求書が、可及的速やかに送られてくるはずだ。
私は全ての複雑な入力作業を終え、その日はぐっすりと眠りについたのだった。

その後、通販サイトに目をやると、今度は真っ赤な文字が飛び込んできた。
タイムセール70%オフ。
えー!!またか!!本当に正気かと、わたしは瞬きしながら思った。
そして12000円以上かうと1200円引きなのだと言う。
嘘だ、ついこの前買ったやつ13000円だよ…。

わたしは泣いた。
もう訳がわからなかった。
途中オペレーターさんに電話をかけてまでやった手続きが全部無駄になった気がした。そんなバカな…。

今回は、どうしようもなく自分の落ち度でやってしまった返品の品があったため、再度ゴタゴタとする事はやめた。
本当にどうなってるの通販サイト。
こわいよ、もう闇だよ。カオスだよ。助けてセーラームーン…。

ッジャジャジャーン、ッジャジャジャーン
どこからともなく硬質的なピアノの音が流れてくる。複雑な和音の、切なさの入り混じった調べ。
ジャミロクワイのヴァーチャルインサニティーだ。

私たちは踊らされている。
誰かの掌のヴァーチャルで。でもその掌の主も、きっと誰かに踊らされている。
そしてそれは輪になっていたりして。そうやってみなグルグルと回って幸せなら良いのだけど、きっとそうじゃないんだろうなと示唆するこの曲を、ずっと前から好きだった。

物欲と焦燥感、それはよく似ているのだろうか。
よく分からないけれど、お買い物がやめられない病気があるのだから、きっと渇く何かを潤したくてそれをする人がいるのだろう。
私だって、おそらく想像を絶するくらい容易く、そちら側に落ちることができる。

そうこうしているうちに、それなりの金額の記された、現実的な紙の請求書が届くだろう。
今はなにもないヴァーチャルな世界が、もうすぐ我が家にやってくる。
とどのつまり、そのきちんとした現実に、誰もが向き合うしかないのだ。


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