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赤ちゃんとのお買い物〜あの時のお姉さん、お元気ですか〜

我々は今日も元気に生きてますよ!!

皆さん、育児中に他人から嫌なこと言われた経験ありますか。
育児中の方、もしくはいま絶賛妊娠中の方なら戦々恐々とするかもしれない。
今日はそんなお話である。

私の話で恐縮だが、育児中の嫌味発言を言われたことはほぼない。2つしかない。
しかもそのうち1つは今の今まで忘れていて、私の話で恐縮…と文字を打ちながら思い出したほどだ。
何かといえば産後太りの話で、実家のお隣さんが親娘揃って、ジャムちゃん太って誰か分かんなかった。とか言ってきただけのこと。
158センチ55キロなんて、デブどころかド標準だ。たしかに妊娠中以外では1番重かったし、体重測ったら減りもせず増加傾向だったんで、コリャヤベーってなって、授乳にためのスタミナ夜食といって食ってたココナッツサブレ5枚をやめた。
したらスルリと2キロ痩せたよ。

まあこの親娘、特に娘が問題で、愚かなのだ。
実家には認知症難聴老人がいるのだが、加齢性の難聴故、声がバカでかい。
そして認知症なので、些細なことで人を呼ぶ。
と言っても今は1日5回くらいか。色々MAXで呼びつける。

例の娘いわく、それがうるさいそうな。
うちの母の名前をよびまくっているのだという。
よしこー(仮名)よしこー(仮名)よしこー(仮名)
ってうるさいんだって。

ヘェ〜、そうなんだ。私あまりあのうちに居ないなら知らないよ。と言っておいた。
例の娘も鈴木さん(仮名)から佐藤さん(仮名)になり、お隣には住んでいない。だから、勝手にしやがれ的な対応をしておけばよいのだ。もうあなたの家じゃないし、嫌なら帰るのやめたら?

なんにせよ加齢をバカにするのは愚かだし、あの娘、若年性認知症にでもなったらどうする気だろう。
キミの年齢でも若年性認知症には、ちゃんとなるんだよ。もっとも歳をとれば、いつかは他人にめちゃくちゃ迷惑掛けなければ、生きてはいけないんだけど。

迷惑、という意味では老人も子どもも同じように、面倒をかけまくる存在である。
あの世側に近ければ近いほどそんな感じだろう。
産まれたての赤ん坊は、最低でも3時間毎に乳を欲するし、様々な理由からもうすぐ消えてしまいそうな命も、突発的、あるいは事故的な亡くなり方をしない限り、今の日本では手厚い看護にオムツもついたりする。ありがたい。

というわけで、3時間毎に乳を欲しがり、オムツをつけた人間を連れて買い物に行った話だ。
乳飲みオムツでさらに首のすわりもイマイチだったが、連れて行くしかないので連れて行った。
買わねば飢え死にするからだ。
徒歩3分の距離にスーパーはあったが、足りないものもあるし値段が高すぎた。
よってブーブーを走らせ10分、野菜のみを買うために、いつも混み合う産直に行っていた。
活きのいい野菜が山盛り売られ、午後にはすっかりなくなる伝説の産直は、今日も地元のハイなエイジの方々で盛り上がっている。

レジは混んでいた。
買う物を10分で選びそこに並ぶと、いつもは2人しかいないレジ担当が3人もいた。

嫌な予感がする。
1人増員されている割に人だかりの減りは悪い。
たしかにスーパーハイエイジともなると、色々動作は緩慢になってくるしトーキングフラワーもたくさん咲き乱れる。それは日常の彩りだし一向に構わないんだがそんな様子もない。
明らかに捌ききれずに塊になった集団がそこにあった。

人々は苛立ちを募らせていた。
いつもなら、目を細めて我が子を見つめてくれるご夫人たちも今日はいなかった。
しまった。今時貴重な、マイバックに商品入れサービスのあるレジに並んだことに後悔していた。

ようやく私の順番が周り、すっかり重くなったカゴをレジに出すと、袋詰め担当である推定70代のオバサン2人が目に入った。

やる気ないな、このオバサン達。

私は瞬時にそう思った。
ずっと喋ってるし、仕事が遅い。
いつも優しいレジ打ちお姉さんが、
「はよ仕事しろ」
という空気をバンバンに醸してる。
でもそんなことには全く気がつく訳もなく、その小さいオバサン達はダラダラ働いていた。

そしてオバサン達は私たちに気がつくと、突如、私と、私の赤子をガン見した。
そして言い放った。

「わー、こんな小さい子連れてかわいそうに」
「今の若い人はいかんね、こんな子つれて買い物なんて。私達の頃はね、こんな子どもは家から外に出さなかったよ」
「そうそう、本当に」

言うだけ言ったあとは、彼女らは私の方を見なかった。そして我が子を一瞥し、またダラダラと仕事に取り掛かった。

とりあえず、オバサン2人が、私の行動、つまり赤子を連れての買い物に対し、かなり批判的である事が分かった。そしてそれを躊躇なく話す。さもそれが、正義かのように。

え、なんかクソみたいなこと言われたけど、若いって言われたんですけどー!!
てか、こんなネットみたいなこと本当にあるんだ。世の中ってすごい、っつーか私の若いんだ。
いや、クソだな。と頭の中で考えた。
それは暴走して、カオスだった。

どうしよっかなーと考えながらレジを見ると、レジ打ちお姉さんの顔が死んでいた。
いやもう、全力で暗く死んでいた。
コリャー大変だ。私も全力でお姉ちゃんを救わねば。

「そうなんですよね…」
私は出来るだけさりげないしおらしさで言った。
その後目線を我が子にうつし、さらに、憂いを持たせたしおらしさを見せ、例のオバサンどもを怯ませる作戦に出た。

自分達の勝手な一言が、若いお母さんの胸に響いた。しかもどちらかと言うと相手は弱っている感じがする。オバサン2人はそう考えたはずだ。

私の経験上、若者をむやみやたらに傷つけて論破するのが大好きな、やばいメンタリストみたいな老人は少ない。だいたいの老人はよかれと思い声をかけてくる。よって明らかに傷つけたと分かると、彼らは動揺する。
つまり、この一瞬の隙と怯みが肝心なのだ。

あくまで私は弱ったしおらしい女になるよう集中した。そしてその演技に息子も一役かってくれた。

「色々試したんですよ。生協とかネットスーパーも。でも高くて大変で…」
ババア達は手を止めた。ガチで話を聞く気になったらしい。もうここまでこれば成功間違いなしだった。
「でも誰もみてくれる人もいないし、預ける場所も無いんで、こうするしかないんですよね。」

ずっとしおらしく言い続け、最後だけ口角をすこしあげ、からりとした表情になるように言った。
多分、目はまったく笑っていなかっただろう。
最後の一言は痛烈な嫌味に他ない。
だれも替わりのいない育児、アナタ達にできる?

「1528円です」
レジのお姉さんがそう言った。
私はお金を払い、お釣りをしまい、買い物袋を持って、颯爽とそこを去った。
うしろは振り返らなかった。

なぜ私が赤ん坊をつれて買い物するか。
そうしなければ生きてゆけないから他ない。
生協もあるけど、我が家の経済事情には合わなかった。
そして、ちょっとそこまで出かけてくるねと、頼れる人はどこにもいないのだった。

あの瞬間、鳩が豆鉄砲食らったような顔をしたババア達を、その後産直で見かけることはなかった。

でもね、私もあのオバサンの気持ちも分からんでもないんですよ。お化けみたいに真っ白な顔をしたお母さんが、ものすごく小さな赤ちゃんを抱えて買い物をしてる時、私も同じことを思うから。
となりの夫に全部やらせて寝てなよと。
あと、預けられる他人、考えられるに舅姑実の両親等は親切で優しいとは限らない。

孫は見てやるから、お前はちょっと出かけていろ、と、あのオバサン達も自宅から追い出されてしまったことがあるかも知れない。
あの時のおしんのように、我が子を取り上げられる感覚。頼れる人がたくさんいるという生活が、快適とは限らないからだ。

育児は戦争だ。
思えばすっかり忘れていた。
それなりの腕力と、それなりの身のこなし、癇癪の受け流しを覚えてしまった今、そんな事をすっかり忘れていたのだった。
2人の子どもにもイヤイヤ期なんてものはあったはずだが、自我が出たぜイエーとおもっていたら忘れてしまった。私は運の良い方だと思う。

なんにせよ。
私は悲しかった。
あのオバサン2人は、可愛い息子を、こんなにも可愛い息子を、かわいいとは言わなかったから。
彼女たち2人の目には、この可愛い息子は少しも目に入っていないのだ。

というわけで、noteにした。
漫画も描いて載せようと思ったけど、あまりに汚すぎて、とりあえず表紙にした。
今はただ、あの時のお姉さんに笑顔が戻っていれば良いと思う。

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