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太郎にはもう少し頑張ってもらおう

「この子の状態が分かりました」

太郎のことを「この子」と言われた瞬間、この人は信頼できるな、と思った。

言葉の主は家電メーカーのエンジニアの人で、太郎というのはわが家の食洗機のことだ。以前から調子が悪かったのだが、いよいよ洗えなくなってきたので修理を呼んだのだ。
簡単なヒアリングと実際の様子を見て、ものの数分で冒頭の「この子の状態が分かりました」に至った。

「この子」という表現に、この食洗機がわが家にとって大事な存在であることへの理解と、このエンジニア氏の家電に向ける眼差しが感じられてすごくいいなあと思ったのだ。
(太郎という愛称をつけて可愛がっていることはもちろん伝えていない)


故障の原因は典型的なものだったようで、壊れた部品の交換だけで修理は終わり、太郎は復活した。
もう10年近く使っているが今回が初めての不具合であることをエンジニア氏に告げると、丁寧かつ適正に使っていることを褒められた。

これはいい機種で自身も同じシリーズのものを使っていることや、個人的には現行品よりこの機種の方が好きだということ、それらの理由を、素人の私にも分かるように教えてくれた。
本当に機械が好きで、それを仕事にした人なんだろうなと思った。
「大事に使ってくださいね」と言われ、心から「はい!」と答えた。


話の流れで、やはり調子が悪いドラム式洗濯機のことも聞いてみた。
同じメーカーのものだが、型が古すぎてサイトからは修理が申し込めなかったのだ。
購入時期や不具合の症状について伝えると、

「あ~それはもうダメですね!!」

先ほどの太郎への慈しみとは打って変わって、潔くダメ出しされた。
いわく、年数的にも症状的にも、完全に寿命が近づいてきているそうだ。
修理してくれる業者はいるだろうけど、下手にお金をかけて情がわいてズルズル使うより、性能がよくなっている新機種をスパッと買った方が断然いいとのことだった。
この人が言うからにはそうなんだろうな……と納得した。


メーカーが違うのでエンジニア氏には相談しなかったけど、ルンバも壊れてきているし、年数的にはテレビもそろそろ。
いっぺんに壊れないよう祈るばかりだ。

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