2020年5月28日(木)

諸般の事情で賃貸情報を検索したところ、所有しているあらゆる液晶の余白の部分に、賃貸情報の広告が貼り付けられるようになっている。あまりにも迅速に、所狭しと。ヴィンテージマンション、というのは極めて広告的な言葉で、無条件に嫌悪してしまう。お前は単なる中古のマンションだろう? 由緒ある年代に作られたもの(明鏡国語辞典)。というのは自己の過大評価だろう? でも、どうして広告的な言葉を嫌悪しなければならないのだろうか? すごーい、ヴィンテージだってー。と無邪気に言えるほうが幸せだろうに。

「おまえは、おまえのことを有用な存在にしようとする同胞市民に、自分には生を快く過ごすために必要なものが欠けている、と信じ込ませようとしている。しかし、本当にこの本質的なものは欠けているのだろうか? いや、そんなことはない、もちろんおまえは持っている。それを尊重していないだけで、煩わしいものと見なそうとしているのだ。これまでの人生で、おまえはずっと所有を無視し続けてきたのだ。」
【盗賊(ローベルト・ヴァルザー)】

怠惰さについての表現力において、ローベルト・ヴァルザーは最高の作家だと思う。


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