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童貞について―三島由紀夫の場合

今では彼が自尊心から拒んでいたものすべてが、逆に彼の自尊心を傷つけていた。南国の健康な王子たちの、浅黒い肌、鋭く突き刺すような官能の刃をひらめかすその瞳、それでいて、少年ながらいかにも愛撫に長けたようなその長い繊細な琥珀いろの指、それらのものが、こぞって清顕に、こう言っているように思われた。
『へえ?    君はその年で、一人も恋人がいないのかい?』

―『春の雪』(三島由紀夫)

(覚書・GunCrazyLarry)

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