足袋でスカイツリーに登る田舎もの。
田舎で育った。
テレビ東京は、映らないし、近所に東京インテリアとか、東京靴流通センターとか、謎に東京を推してくる店がある環境で育った。
東京へ出たいとも思わなかったし、そんなに行きたいとも思わない。
ネットでなんでも手に入る時代に、お金をかけて人の多いところへ行く必要はない。
とはいえ、東京にしかないものがあるのも、事実だ。
テレビに映る華やかな情報には、ここからはなかなか手が届かない。
私は手が届かなくてもいいけれど、子どもたちには、少し足を伸ばせば、手が届くことを知っておいてほしいと思った。
テレビで見たり、友達から聞いた行きたかったあの場所は、そんなに遠くはないこと。
ちゃんと分かって大人になってほしいな、と思った。
ので、近々東京へいく。家族での旅行だ。
計画を立てたのは、もう数ヶ月前のことだ。
旅行って不思議なもので、計画している時が1番楽しくて、決定して、後は待つだけの状態の時は、なんかもうちょっと飽きていた。
散々盛り上がって、色々調べて、最低限の予約をして、まだ細かい部分は決まっていないのに、もうちょっと憂鬱になってくる。
そして、いざ日程が近づくと、天候とか、コロナとか、子どもの体調とか、心配なことがありすぎて、行く前から疲れてしまう。
え、旅行めんどくさい。行く前から、帰りたい気持ち。
行ってしまえば楽しいのだ。
出発して、30分もたてば、すっかりウキウキなのだけれど、それまでは、憂鬱になってしまう。
今、まさにそうで、コロナも減らない、台風もきているしで、すっかり憂鬱になっている。
持ち物や服も、異様な盛り上がりの時に、先立って買ったので、何があって、何がないのか、改めて確認しなきゃいけない。めんどくさい。
そんなすっかり憂鬱な時、ふと、東京に履いていく靴がないぞ、と思った。
いや、別に特別な靴を履かないと、東京に行けない訳ではないことは、分かっている。
東京靴流通センターの靴じゃなくても、東京へは行ける。
着ていこうと思っているワンピースに合わせるスニーカーが欲しかった。少しスッキリした印象のやつ。
いつも履いているコンバースは、ソールがすっかり削れているし、ちょっとサイズが小さいからたくさん歩くと、足が痛くなってしまう。
ワンサイズ大きいものを買おうかなぁ、と通販サイトを見ているうちに、足袋のような形のスニーカーが目に入った。
前々から、そういう形のパンプスやスニーカーやショートブーツがあるのは、知ってたけれど、どこがいいのか、分からなかった。
けれど、なんだかとても可愛く見えた。
眠れない夜のテンションなのか、とても欲しくなった。
その靴を合わせたコーディネートをサイトで漁り、私が合わせたい服とのバランスを想像した。これは、ばっちりだ!!
それも、私のサイズだけ残っている!!
私のためにある靴だ!!と思った。
そして、購入した。
翌朝、目が覚めると、ふと、なんであんな靴を買ったんだろうと、思いだしてきた。
だって、靴が足袋みたいなっていたら、靴下だって、指が分かれていなければいけないだろう。
そんなの持っていない。
今は届いてみたら、予想以上に可愛かったね!のパターンを願って、足袋みたいなスニーカーが届くことを待っている。
きっと、足袋みたいなスニーカーを訳の分からないテンションで買ってしまうくらいに、田舎者の私は、東京が楽しみなのだろう。
憂鬱なふりをして買った、足袋を履いて、子どもたちとスカイツリーに登る日を、今はちょっとだけ楽しみにしている。
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