望まれて産まれたのか?
私が生まれた日について書きたい。
我が家は床屋である。
母方の祖母が女一代で始めた床屋。
ちなみに祖父は会社員、いわゆる髪結いの亭主というものだったらしい。
私の母は一人っ子でこの家の跡を継げ!!と祖父から言われていたので
もう自分は婿養子をとって跡を継ぐ運命が決定していたようなものだった。と後に聞かされた。
だからあなたには自由に生きてほしい。とよく言われたものだ。
後に、母は婿養子をとって家を継いだ。
自由にしなさい。と言った祖母の言葉を聞いた上で
祖母の為に家を継ぐ事を決断した。
母は23歳で結婚して、即、私を身ごもった。
若い体は出産ギリギリまで働けた。
産休制度などない当時の自営業は働くしかなかったらしい。
予定日より早く陣痛がきた。
家族達はお客さんの髪を切っている
母の出産への孤独な闘いが始まった。
なかなか産まれない我が子。
結局、陣痛促進剤を打って、私は即産まれた。
母の第一声は
よく泣くな、不安だ。
だったそう。
その後、父も祖母も仕事で結局祖母の姉のお姉さんが来てくれた。
退院して、自宅に帰ってみると
殺伐とした部屋に組み立てが済んでないベビーベッドがあった。
母は畳に一人で座り込んで
泣いたらしい。
誰もこの子の誕生を望んでないんじゃないか?
祝福されてないのか?
そう
思い私を眺めると余計に泣きだす。
ごめんね、ごめんね。と謝りながら
ベッドを組み立てたらしい。
この話を母から聞かされるたびに
私はこの世に生まれてきて良かったのか。と
自分に問いてきた。
ここから何となく悲しみと罪悪感を
背負いながら生きてきたのかもしれない。
7月9日 楓 誕生。
楓