ラジオドラマ脚本:戦場と兵士たちの追想曲(カノン)

登場人物
ナレーション

マケドニア共和国民
ソリッド・ウィッカーマン 男
マケドニア国民兵団の隊長。仲間想いで、ステラを妹に持つ。

ステラ・ウィッカーマン 女
ソリッドの妹でマケドニア国民兵団の副隊長。兄であるソリッドを慕っている。

シバ・ランドスタッド 男
アルカディア共和国に派遣されているスパイ。変装するのが得意。頭脳派

ソウシ・ファーガス 男
元・暗殺者。ソリッドと出会ったことで心を入れ替え、兵士となった。静かな性格。

ジーク・ソルムンド 男
ステラに憧れる若き新米兵士。気弱な一面あり。


アルカディア共和国民
ソラ・アルカディア 男
アルカディア共和国の王子。優しさと正義感に溢れている。

アヴリル・ガーレン 女
ソラの許婚。ソラのことをいつも気にかけている。大人しめの性格。

リューク・シュトーレン 男
女好きな弓兵。

レヴィーナ・クリストヴァ 女
アルカディア国民兵団の女兵士。強気な性格で、周りの兵士たちを奮い立たせている。

アンドレイ・サーガ 男
戦場で最も恐れられている男。片言口調。レヴィーナの下についている。

本編
ナレ:昔、世界の片隅に争いに歴史を繰り返す2つの国があった。東の海を統治するマケドニア共和国と西の山を支配するアルカディア共和国である。お互いは国の領地拡大、国民、国の未来のため戦い続けてきた。これは、2つの国の未来のために選ばれた兵士たちの物語である・・・。

ナレ:(海の波の音)マケドニア共和国。隊長の間。

ソリッド:んーっと、次の戦の作戦は、と・・・
ステラ:ソリッド隊長。何を難しい顔をしているんです?
ソリッド:あぁ、ステラか。2人のときは隊長は付けなくてもいいって前にも言ったろう?
ステラ:あ、そうだったわね・・・。で、兄さん、一体どうしたの?
ソリッド:次の戦いに向けて、作戦を考えているんだよ。明日、会議をすることになったから、それまでに練っておこうと思って。
ステラ:そう・・・じゃあ今日は徹夜になりそうね・・・。そういえばアルカディア共和国に派遣されたシバは戻ってくるかしら?
ソリッド:シバか。戻ってくるのは今日だっけか?
(扉のノック音)
シバ:ソリッド隊長!ステラ副隊長!シバ・ランドスタッド、ただいま帰国しました!
ステラ:(嬉しそうに)シバ!お帰りなさい
ソリッド:シバ、待ってたぞ!ちょうど作戦を立てようとしてたところだったんだ
シバ:それでしたら、早速報告させていただきますぜ。・・・どうやら隣の奴らは500万近い兵士をこちらに寄越してくるつもりです。あいつら、こっちの兵士の数が少ないのを狙って、数で押そうとしているようです。
ソリッド:そうか・・・こちらは兵士の数が300万が限界だからなぁ・・・
ステラ:数で押そうなんて、典型的な考えよねぇ。城壁を固める必要があるわね
シバ:あいつらもあいつらで、武器の確保にも力を入れてるようです。投石器やらなんやらも開発して取り入れるって言ってましたよ
ステラ:隊長・・・どうします?
ソウシ:だったら、僕たちにお任せください
シバ:うおっ!?
ソリッド:ソウシ・・・君だったか・・・
ステラ:もう、ソウシったら。部屋に入るときは必ずノックを―――
ソウシ:申し訳ありません。しかし、僕はきちんとしましたよ?
シバ:お前、俺の後ろに出てくるなよ・・・びっくりするだろうが・・・
ソリッド:任せる、とはどういうことだ?
ソウシ:彼の言う投石器を取り入れる兵士が居るのなら、僕が彼らを消してみせます
ステラ:それって・・・どういうこと?
ソリッド:・・・アルカディアに忍び込むつもりか?
ソウシ:もちろん、戦いの最中に、です
シバ:どうやって?
ソウシ:そのために、貴方の力が必要なのです
シバ:俺の?
ソリッド:あぁ・・・つまりは、そういうこと、か・・・
シバ:副隊長・・・2人の考えが俺には分かりません・・・
ステラ:私にもさっぱりだわ。残念だけど
ソリッド:すまない。明日の会議まで待っていてくれ、な?
シバ:は、はぁ・・・
ナレ:此処はマケドニア国の兵士養成所。1人の若い兵士が剣の素振りをしていた・・・
ジーク:はっ!はっ!(剣を振る音)
ステラ:遅くまでご苦労様
ジーク:ス・・・ステラ副隊長!
ステラ:ジーク君・・・少し休んだら?昨日も遅くまで練習していたでしょ?
ジーク:はい・・・でも、僕、もっと強くなりたいんです。お父さんみたいに
ステラ:お父さん?
ジーク:僕の父もこの国のために戦った兵士の1人なんです。敵に怯えることなく勇敢に戦い、命を散らしたと母がよく僕に言っていたんです。・・・でも
ステラ:でも?
ジーク:僕、怖いんです。このマケドニア国民兵団に入って、実際に剣を握って・・・相手と勝負する時に負けそうになるあの瞬間が。その時父はどんな思いをしたんだろうって。死ぬ瞬間てあんな風なのかなって。
ステラ:ジークくん・・・
ジーク:だから、今出来ることはこれをやるしか手段がないんです!そして、父が叶えられなかったこの国に平和を手に入れて必ず母の元へ帰る夢を・・・僕は叶えたいんです
ステラ:ジーク君は家族想いなんだね・・・
ジーク:そ、そこまでじゃあないですけど・・・
ステラ:確かに死ぬのは怖いことよ。私も最初はそうだった。でもね、この国には言い伝えがあるのよ。
ジーク:なんですか?それ
ステラ:勇敢に戦った兵士たちは死後、このマケドニアの星々となって私たちマケドニア国民を見守ってくれるの。小さい頃に兄―――ソリッド隊長と一緒に聞かされたお話よ。私たちの両親もこの国のために戦って死んでいったから、ジーク君の気持ちはよく分かるわ
ジーク:・・・・・・・・・
(ソリッド、シバ、ソウシ、遠くから2人のやり取りを見ている)
ソリッド:マケドニアの星々か・・・この戦に出始めてからというもの、すっかりこの話を忘れていたな・・・
シバ:でも、なんだか懐かしいっすね。俺もあの話、聞いたことあります。俺も小さい頃に爺さんからよく話を聞かされ一緒に星を見上げてましたから
ソリッド:シバ、ソウシ・・・俺はこの国のために勇敢に戦うことは出来るだろうか・・・?
ソウシ:愚問ですよ、隊長
ソリッド:・・・そうだったな・・・すまん
シバ:ステラ副隊長や俺たちがついているんです。大丈夫ですよ
ソリッド:あぁ。・・・明日の会議が終わったら、正式の作戦の内容を伝える。他の兵士たちに伝えておいてくれ
シバ、ソウシ:はっ!

ナレ:一方で、西の山を支配するアルカディア共和国では・・・
ソラ:・・・という訳だ。次の戦に向けて投石器の完成を急ぐように
レヴィーナ:かしこまりました、ソラ王子。他の兵士どもにそう伝えてきます。
ソラ:君が居てくれて本当に助かっているよ、レヴィーナ。ただ、あまり酷使しすぎるなよ?
レヴィーナ:そこは承知しているつもりです。以前のようなヘマ、もう2度としないですよ、王子
リューク:アルカディア1の美人兵士のレヴィーナ様がヘマねぇ・・・一体何をやらかしたんだい?
レヴィーナ:貴様には関係のないことだ、リューク
リューク:まぁまぁそんなに怒らないでくれよ。せっかくの美貌が台無しだぜ?
ソラ:(咳払い)まぁ、これ以上は深入りしないことだ、リューク。では、これで会議は一旦終了する
レヴィーナ、リューク:はっ
レヴィーナ:そういえば1つ忘れていました・・・このアルカディアに内通者が紛れ込んでいるようですね・・・見つけ次第消しておきましょうか?
リューク:女だったら俺に任せてくれよな、レヴィーナ
レヴィーナ:それなら心配ないぞ?アンドレイの話によれば、男らしいからな
リュート:何だよ・・・じゃあそっちに任せた
ソラ:内通者か・・・油断ならないな・・・
レヴィーナ:ご安心を、王子。見つけ次第、こちらで処分しておきますので
ソラ:あぁ・・・後は任せた

ソラ:・・・・・・・・・(ため息)
アヴリル:随分お疲れのようですね・・・大丈夫ですか?
ソラ:(気づいたように)アヴリル・・・連日の会議でちょっとばかり集中力を使ってしまっただけさ
アヴリル:そう・・・何か飲み物でもお持ちしましょうか?
ソラ:いや・・・少し休もうかな・・・。次の戦いで勝利を収めるまで、僕は死ねないからね
アヴリル:ソラ・・・
ソラ:申し訳ないが、もうしばらく耐えてくれ、アヴリル。これは自分自身との戦いでもあるんだ
アヴリル:えぇ、分かったわ。・・・あなたにアルカディアの山々の精霊たちの加護があらんことを
ソラ:(微笑みながら)ありがとう、アヴリル
ナレ:ここはアルカディア国投石器開発現場
(人のざわめき声)
レヴィーナ:さぁ!次の戦まで日は迫っているぞ!急いでこれを完成させるのだ!アルカディア国勝利は我々の手にかかっている!
リューク:順調に進んでるみたいだねぇ、レヴィーナ
レヴィーナ:貴様か、リューク
リューク:俺も手伝おうか?
レヴィーナ:そっちには弓兵の部隊が居るんだろう?こちらはもう事足りている
リューク:ヘイヘイ、分かりました・・・ん?
リューク:あいつが居るぜ、レヴィーナ
(リューク、退場)
レヴィーナ:アンドレイか・・・一体どうした?
アンドレイ:あいつら・・・やってくる・・・武器が足りない・・・
レヴィーナ:心配するな。お前にはありったけの道具をくれてやる
アンドレイ:精霊たち・・・集まってきている・・・
レヴィーナ:勝利は我らの手にあり、か・・・心強い
レヴィーナ:アルカディアの精霊たちが我らを見てくださっている!名誉にかけて恥じぬ戦いをするぞ!

ソラ:我がアルカディアと隣国マケドニア・・・おじいさまの代からどうやらこの因縁は簡単には断ち切れないみたいだな・・・ソリッド・ウィッカーマン・・・君と僕の戦いはこれからのようだ・・・この勝負、我らアルカディアが貰い受ける!

ナレ:それぞれの国の兵士たちの戦いはやがて3日後に幕を開ける。マケドニアの星々とアルカディアの精霊はただ2つの国を静かに見下ろしていた。勝利の女神はどちらに微笑むのか・・・それは、神のみぞ知る・・・








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